研究課題/領域番号 |
21K11723
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59040:栄養学および健康科学関連
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研究機関 | 京都光華女子大学 |
研究代表者 |
森本 恵子 京都光華女子大学, 健康科学部, 教授 (30220081)
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研究分担者 |
鷹股 亮 奈良女子大学, 生活環境科学系, 教授 (00264755)
中木 直子 京都光華女子大学, 健康科学部, 講師 (40804183)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 脂肪摂食調節 / “舌―脳―腸軸” / 脂肪酸受容体 / 消化管ペプチド / 口腔内脂肪酸感受性 / 脂肪嗜好性 / 性差 / 性ホルモン / 消化管ぺプチド / 舌ー脳ー腸軸 |
研究開始時の研究の概要 |
近年の舌味蕾の味細胞における脂肪酸受容体の発見をきっかけとして、食事由来の中性脂肪から舌リパーゼによって産生された脂肪酸がリガンドとなり、視覚・嗅覚を排除しても味として認知できると報告され、脂肪味は第6の味覚の候補となった。これまでの研究にてヒトの舌への脂肪刺激により口腔内脂肪酸感受性が低下することを見出した。本研究では、食事経過に伴う脂肪酸感受性の変化に着目し、その変化が脂肪摂取の調節因子として作用する可能性とそのメカニズムについて、ヒトと動物を対象にした実験にて世界に先駆けて解明する。
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研究実績の概要 |
近年、舌の味細胞における脂肪酸受容体が発見され、舌の脂肪酸受容体の反応性は口腔内脂肪酸感受性に影響を与え、脂質摂取量を調節する可能性があるが、その調節機構には未解明な点が多い。 (1) ヒトを対象とした研究では若年男女大学生を対象に、食事を想定した舌への脂肪あるいは甘味刺激を行い、刺激前後の口腔内オレイン酸感受性の変化を測定し、性差や月経周期依存性変化を調べるとともに脂質摂取量との関連について検討した。これまで得られたデータ(男性34名、女性32名)の解析結果より、基礎レベルの口腔内オレイン酸感受性には性差はなかったが、オリーブオイルあるいは甘味料の舌刺激後の脂肪酸感受性は男性では低下したのに対して、女性でははっきりした変化がなく、感受性の変化に性差が見られた。また、口腔粘膜細胞のCD36mRNAレベルは男性と比較して、女性(月経期)で低値を示す傾向が見られた。なお、2023年度より栄養調整食品負荷実験を開始した。被験者数は充分ではないが、空腹時と比較して栄養調整食品摂取後に血漿グルカゴン様ペプチド-1濃度は増加し、血漿アシルグレリン濃度は低下することを確認した。 (2) 雌性ラットを用いた研究では、両側卵巣摘出によるエストロゲン欠乏ラットを高脂肪食にて飼育して高脂肪食誘発性肥満モデルを作成し、さらにプラセボ群とエストロゲン補充群に分けた。絶食下にて脂肪乳剤の口腔内、胃内投与前と投与後30分目に採血を行い、血漿グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、コレシストキニン(CCK)およびレプチンの濃度を測定した。エストロゲン補充群では、脂肪乳剤の口腔内および胃内投与後30分目に血漿CCK、GLP-1濃度の上昇が見られたが、プラセボ群では口腔内投与でCCKの軽度上昇が見られたのみであり、口腔内投与後のCCKおよび胃内投与後のGLP-1濃度はエストロゲン補充群の方が高値を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) 2023年度は、ヒトを対象とした研究において被験者数を増やすことができたため、コロナ禍での実験の遅延を当初の予定に近づけることができた。実際には、舌脂肪刺激前後のオレイン酸感受性・脂肪嗜好性の変化を測定し、これら指標と自由選択摂食実験および食事摂取頻度調査から求めた脂質摂取量の関連について検討を加えた。また、口腔粘膜細胞の脂肪酸受容体mRNAレベルの測定により、口腔内脂肪酸感受性に関する分子レベルのデータが得られた。加えて、若年男女大学生を対象として栄養調整食品負荷実験を開始し、栄養調整食品摂取前後の血漿グルカゴン様ペプチド-1やアシルグレリン濃度を測定し、性差や月経周期依存性変化、エネルギー摂取量・脂質摂取量との関連について検討した。 さらに3年間のデータを総合し、食事中を想定した脂肪刺激による口腔内脂肪酸感受性・脂肪嗜好性の変化、口腔内脂肪酸感受性の脂質摂取調節における役割とそのメカニズムについて解明を進めた。加えて各指標の性差や月経周期依存性変化から性ホルモンの影響についてまとめ、論文投稿の準備を進めている。 (2)雌性ラットを用いた研究では、これまでの実験で得られた血漿サンプルの中で未測定だったサンプルについても消化管ペプチドのグルカゴン様ペプチド-1やコレシストキニンおよび摂食関連ホルモンであるレプチンの血漿濃度を測定した。これらの結果から口腔・胃への脂質刺激による消化管ペプチド分泌の変化と脂肪摂食調節における役割について研究結果を得ることができた。また、エストロゲンの脂肪摂食調節に関して、その作用部位および脂肪酸受容体を介した消化管ペプチドの関与について検討を加えた。以上より、「(2)おおむね順調に進展している。」を選択した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)2024度は、ヒトを対象とした研究において、より実際の食生活に近づけた実験計画を設定し、市販の食品を用いた新たな脂肪嗜好性評価方法を実施する。その方法とは、通常の食品に加えて低脂肪食品が市販されている食品から3種の食品(牛乳、ヨーグルト、マヨネーズ)を選び、通常(中脂肪)と低脂肪の食品ペアを用いて、味の好みをVisual Analog Scale法により測定し、これより算出した脂肪嗜好性スコアによって脂肪嗜好性を評価する方法である。この新規評価法により、若年女子大学生を対象に、栄養調整食品の摂取前と摂取30分後に脂肪嗜好性を評価する。さらに、食事摂取頻度調査によるエネルギー摂取量・脂質摂取量との関連について検討を加える。 加えて、研究期間に得られたデータの分析と解析を行い、食事を想定した脂肪刺激による口腔内脂肪酸感受性・脂肪嗜好性の変化、口腔内脂肪酸感受性の脂質摂取調節における役割とそのメカニズムについて解明を進める。また、各指標の性差や月経周期依存性変化から性ホルモンの影響についても検討を加えた論文を作成し、学術雑誌に投稿する。 (2)雌性ラットを用いた研究では、これまでの実験データを用いてさらに分析・解析を加えて、脂肪の口腔・消化管センシング機構、および口腔・胃への脂質刺激による消化管ペプチド分泌と脂肪摂食調節における役割について論文にまとめる。また、性ホルモン、特にエストロゲンの脂肪摂食における作用に関して、エストロゲンの作用部位(口腔あるいは消化管)、および脂肪酸受容体を介した消化管ペプチドの関与について明らかにし、論文にまとめる予定である。
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