研究課題
基盤研究(C)
食は、疲労が原因で起こった学習意欲低下改善の鍵となるものである。食材のみでなく、食に関連する因子である、食品・調理・食習慣・食環境などの様々な側面から、食の抗疲労・疲労回復・学習意欲改善に関するメカニズムを明らかにし、抗疲労・疲労回復・学習意欲改善因子を同定することは、科学的にも社会的にも意義深いものと考えられる。そこで、本研究では、疲労と学習意欲の関係性、食と疲労・学習意欲の関係性を明らかにし、これらの試験から抽出された抗疲労・疲労回復・学習意欲改善効果が特に期待される食関連因子の有効性を科学的に検証するまでの一連の研究を実施する。
意欲を高める食品の開発や科学的検証は、医学的・社会的・経済的に重要である。本年度は、主に食と意欲の関係性を明らかにする研究を実施した。食と意欲との間には、密な関係があることは、これまでの研究から明らかになっている。しかしながら、質問紙のみで意欲を評価した研究がほとんどである。意欲は、多面的な性格を持ち、質問紙のみで評価されうるものではなく、多角的視点から検討されるべきものである。したがって、本研究では、食と意欲の関係性について、質問紙のみではなく、意欲の評価に有用な心電図検査やPC課題などの検査を実施し、食についても食品・栄養、調理、食環境、食習慣の視点から多角的に調査することによって、食と意欲の関係性を統合的に解明することを試みた。具体的な手順を以下に記載する。健常者28名を対象として、試験開始前に、食品・栄養、調理、食環境、食習慣についての調査結果を持参してもらった。その後、意欲検査(質問紙・心電図検査・PC課題)を対象者に実施した。その結果、PC課題遂行中のパフォーマンスにおいて、誤答率や反応時間の増加は認められなかった。PC課題遂行前後の意欲の変化は、誤答率の変化と負の相関を認めた。PC課題遂行中の自律神経活動では、交感神経活動の指標であるLF/HFは増加する一方、副交感神経活動の指標であるHFは変化しなかった。課題終了後の意欲は、LF/HF と相関を認めなかったが、HFと正の相関を認めた。辛い料理が好きな人ほど、間食が少ないほど、外食が多いほど、ながら食べが少ないほど、内発的学習意欲が高く、加えて辛い料理が好きな人ほどPC課題を遂行することで学習意欲が上昇することが明らかになった。以上より、本年度は意欲と食の関係性を明らかにすることができたと考えられる。
2: おおむね順調に進展している
本年度は食と意欲の関係性を明らかにすることを目的としていたが、食の有する多面的な側面から多角的に検討し、食と意欲の関係性について貴重な成果を得ることに成功したから。
令和6年度は食による抗疲労・疲労回復・学習意欲改善についての研究を実施する予定である。抗疲労・疲労回復・学習意欲改善候補素材を用いて、食における抗疲労・疲労回復・学習意欲改善素材を科学的に同定する実験的研究はすでに終了しているため、本年度はさらに進めて、食における抗疲労・疲労回復・学習意欲改善因子を食事調査法の手法を用いて科学的に同定する。健常者30名を対象者とする。試験開始前に、食事調査(食物摂取頻度)を行い、その後、疲労および意欲検査(質問紙・心電図検査・PC課題)を対象者に実施する。食物摂取頻度調査では、エネルギー、たんぱく質、脂質、脂肪酸、食物繊維総量、ビタミンA、B群、C、D、E、K、葉酸、食塩相当量、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄、亜鉛、銅、ヨウ素、セレン、クロムの1日摂取栄養量を評価することができ、これらが抗疲労・疲労回復・学習意欲改善因子となりうるかを検討する。
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