研究課題/領域番号 |
21K11749
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分60010:情報学基礎論関連
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
鈴木 淳 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (70565332)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 量子状態推定 / 非線形最適実験計画法 / 量子情報幾何 / 最適な測定 / 量子Fisher計量 / 最適実験計画法 / 量子情報幾何学 / 量子推定理論 / 局所最適デザイン / ベイズ最適デザイン |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、観測者が統計データを得るための測定の自由度を導入し、各々の測定に対して、条件付き確率分布として統計モデルが1つ定まるという非線形実験計画法における情報幾何学の開拓を行う。目的の1つ目は、与えられた最適基準に対してモデルパラメータを推定するための最適なデザインを求めることである。特に、情報幾何学的なアプローチにより統計モデルの大域的な性質を明らかにすることを目標とする。本研究課題の目的の2つ目は、量子力学によって記述される数理モデルを扱う量子情報理論・量子統計理論における情報幾何学(量子情報幾何学)の開拓である。研究成果からは、数理工学・量子情報科学における基礎的な貢献が期待される。
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研究実績の概要 |
数理統計学における非線形実験計画法に対する情報幾何学の定式化と最適なデザインの導出を目標とし、研究課題を実行している。初年度に引き続き、ベクトル空間が対称錐となるような設定において、情報幾何学的な考察が可能かについて考察を進めてきた。二年目の主な研究成果としては以下の5つである。
(i) 量子系における最適な測定を導出するためのMatlabコードの実装、(ii) 有限サンプルに関する誤差限界と漸近的な誤差限界に関するギャップに関する性質の一般的な定理の証明、(iii) ノイズの影響下で最適な実験計画法の最適性を保存するための必要十分条件、(iv) 量子ニューラルネットワークを用いた教師ありラベル分類問題における、最適な実験計画法の効果、(v) ノイズ影響下での量子ガウス状態のユニタリシフト推定エラートレードオフに関する量子計量族を用いた解析。
成果(i)については、現在様々な問題に適用しており、本研究で提案するアルゴリズムの有効性を示されている。得られた結果をまとめ、論文執筆を行う予定である。成果(ii)については、量子情報理論における未解決問題(量子クラメール・ラオ限界の局所達成必要十分条件)への簡略化された証明を与えることも分かり、現在論文を投稿中である。成果(iv)については、当初予定していなかった研究課題であるが、提案する最適な実験計画を用いることで量子ニューラルネットワークを用いた分類精度が、先行研究に比べ大幅に改善することがわかった。これらを含む研究成果を国内研究会6件、国際会議4件として発表している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一部申請時の研究計画からは遅れている箇所もあるものの、予定されていた研究計画の方法とは異なる2つの研究テーマへの応用(研究成果(ii)および(iv)に関するテーマ)を発見し、最終度の研究につながることが分かった。研究課題全体として研究目標を達成するための研究の進捗状況としては、得られた成果の学会発表を行っていることから、「おおむね順調に進展している」との評価とした。
また、初年度に得られた研究成果の発表については学術誌へ3件を投稿しており、1件は採録済みである。また、残りの成果についても現在指導学生と執筆を進めており、順調に進んでいると言える。研究成果については予定より多くのテーマで結果が得られており、この点からも順調に研究課題が遂行できていると言える。
初年度に計画していた最適な実験計画法を求める最適化アルゴリズムについては、アルゴリズムの実装を終え、一般公開に向けて準備中である。本研究課題で計画していた一般の非線形実験計画法に対する情報幾何学の定式化については、一部うまく行っていないところがあるものの、量子情報理論における一般確率論として調べられてきた、モデルを応用することで、一定の成果につながることが予想される。最終年度に研究成果が出せるよう取り組む予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の最終年度に向けて、まずは予定していた一般の非線形実験計画法に関する情報幾何学的な定式化と双対接続構造の解析を優先して進める。現在進めている有限サンプルに関する誤差限界と漸近的な誤差限界に関するギャップに関する性質の解析については、予定はしていなかったものの、量子情報理論における未解決問題に関連していることから、こちらも同時に進める予定である。なお、この後者の課題は現在オーストラリア国立大学のグループとの共同研究として遂行している。
最適な実験計画を求める最適化アルゴリズムについては、予定通り実装が終わりコードの公開を行い、提案する最適化アルゴリズムの有効性について検証し、論文執筆を行う予定である。また、他のアルゴリズムとの比較も行い、より汎用的なコード作成を計画している。
一方、当初予定していた一般の非線形実験計画法における大域的な幾何構造についての解析については、時間の都合上、一般の場合を全て解くことは難しいことが予想されるので、まずは期間内で具体的はモデルや低次元のモデルについて調べることに留めて、一般論については可能であれば取り組む。
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