研究課題/領域番号 |
21K11761
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分60010:情報学基礎論関連
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
玉木 久夫 明治大学, 研究・知財戦略機構(生田), 研究推進員(客員研究員) (20111354)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 木幅 / 木分解 / 上界 / 下界 / グラフ縮約 / 再帰 / マイナー / コントラクション / 発見的手法 / 最適化アルゴリズム |
研究開始時の研究の概要 |
木幅はグラフのパラメータとして最も重要なもののひとつであり、与えられたグラフの木幅を計算することがそのグラフに対して様々な問題を高速に解くための手がかりとなることが多い。本研究では、パス的な木幅の概念に基づいて木幅を計算するアルゴリムを開発する。このアルゴリズムは実用的な応用の対象となるグラフに対する計算速度の点で既存のアルゴリズムを大きく凌駕する見通しである。このアルゴリズムの実装を広く公開し、学術的および産業的な応用のための使用に供する。
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研究実績の概要 |
昨年度は、グラフ縮約に基づいた木幅下界を順次改良する方法において大きな進展があった。この下界アルゴリズムと上界アルゴリズムを組み合わせることにより、従来法では解くことのできなかった規模のグラフに対して厳密な木幅を計算することが可能になった、今年度は、グラフ縮約に基づいた再帰により木幅を計算する方法を発見することができた。この方法では下界の計算と上界の計算が一体化されている。その考え方を示す。 グラフGの木幅をtw(G)で表す。また、Gをその辺eによって縮約してできるグラフをG/eで表す。与えれらたグラフGが従来法で容易に解ける規模であれば、従来法で解く。そうでない場合、Gの辺eを選び、k = tw(G/e)を再帰的に計算する。kはtw(G)の下界隈であり、k+1はtw(G)の上界である。実際、G/eの幅kの木分解をGの木分解に自然に「翻訳」することにより、Gの幅k+1以下の木分解を容易に得ることができる。この翻訳法を工夫することにより、得られた木分解の幅がkである可能性を増すことができるというのが重要な発見である。ひとつの辺に対しての再帰結果からtw(G)を決定できない場合は、複数の辺に対して再帰を行うことにより、成功の可能性をさらに増加させることができる。 この方法の詳細を設計し、従来法および昨年度開発した上記のアルゴリズムをはるかに凌駕する性能の木幅アルゴリズムを得ることができた。この方法自体は、研究計画の時点の「パス的木分解に基づく」という構想からは大きく逸脱しているが、実用的に優れた性能の木幅アルゴリズムを開発するという目的は、期待以上に満足するものである。また、この再帰的アルゴリズムの一部で用いている上界改良アルゴリズムはパス的木分解のアイディアを一部使用しており、構想はそういう形で結果に寄与している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究の進展で大きな役割を果たしているグラフ縮約の利用は、研究計画の当初は想定していなかった。グラフ縮約の利用について昨年度と今年度に大きな発見があったことが、計画以上の進展をもたらしている。結果とした得られたアルゴリズムは、従来法では解くことのできなかった規模のグラフの多くに対して木幅を厳密に計算することが実装実験によって示されている。 また、木幅アルゴリズムの応用分野の開拓についても、計算機論理学の分野の研究者との交流を通じて見通しを広げることができた。一例として、モデル計数の専門家と同分野での木幅利用についての共同研究を開始している。
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今後の研究の推進方策 |
新しいアルゴリズムの実験的実装と評価は6月までに終了し、結果を9月に開催される国際会議に投稿する。同時に、実用に耐えうる本格的実装を開始する。また、木幅計算の応用分野の開拓も、昨年度に引き続き、国際会議のための渡航等の機会を利用して進めていく。
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