研究課題/領域番号 |
21K11764
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分60010:情報学基礎論関連
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
河野 泰人 中部大学, 工学部, 教授 (40396180)
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研究分担者 |
小澤 正直 中部大学, AI数理データサイエンスセンター, 特任教授 (40126313)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 量子コンピュータ / 量子アルゴリズム / 量子超越性 / NISQ / 格子暗号 / Learning With Errors / 公開鍵暗号 / 量子アニーリングマシン / 機械学習 / 深層ニューラルネット / LWE / 次世代公開鍵暗号 / ポスト量子暗号 / 人工知能 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究計画は、研究代表者が実施した科研費基盤研究(C) 17K00027「格子問題を解く量子アルゴリズムの耐量子暗号と量子人工知能への応用」(研究代表者:河野泰人, 研究分担者:関川浩, 平成29 年度-令和元年度)で提案した量子古典ハイブリッドアルゴリズムを改良し、計算効率に関する理論的な解析と、量子コンピュータおよび古典コンピュータ上での実装を行った上で、耐量子暗号のチャレンジ問題への応用と深層ニューラルネットワークの機械学習への応用により、量子コンピュータが古典コンピュータを上回る性能を有すること(量子超越性)の実証を目指す。
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研究実績の概要 |
量子アニーリングマシンを用いてLWE(Learning With Errors)問題を解く量子古典ハイブリッドアルゴリズムに関する論文がNature Portfolio社発行の Scientific Reports 誌に採録された。Yasuhito Kawano, "A reduction from an LWE problem to maximum independent set problems", Scientific Reports (2023) 13:7130, https://doi.org/10.1038/s41598-023-34366-7(2023年4月採録で、期間外のため成果欄には記載しない。)LWE問題のベンチマークとして知られるLWEチャレンジの最小問題が約40000ノードの最大独立集合問題に帰着できることを示した論文で、本研究の重要なマイルストーンである。 今期は、この論文で提案した量子古典ハイブリッドアルゴリズムを改良し、帰着アルゴリズムの効率化と、量子ビットの削減方法を研究した。具体的には、上記論文で用いた量子アニーリングマシンを、エラー訂正機能を持つゲート型量子コンピュータ(FTQC)に置き換え、その上で動作する効率的な量子アルゴリズムを新たに開発した。FTQCは現在使用されているエラー訂正無し量子コンピュータ(NISQ)の次に登場する量子コンピュータで、量子コンピュータ研究の最先端に位置する。実現するにはまだ10年以上が必要とされているが、今後量子コンピュータ研究の主流となることは間違いない。開発は困難だが量子アルゴリズムの設計自由度が高いので、LWE問題を解きやすくなるメリットがある。FTQCの使用により、帰着アルゴリズムの効率化と、帰着された量子ビット数の削減に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Scientific Reportsに掲載した論文で提案した手法により、研究計画書に提示した第一の目標「LWEチャレンジの未解決問題を量子コンピュータまたは量子アニーリングマシンを用いて解く」に一歩近づいた。今期の研究により、問題を解くために必要な計算量と、量子ビット数が大幅に削減でき、目標達成に向かって大きく前進した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度開発した量子古典ハイブリッドアルゴリズムを、古典コンピュータと量子コンピュータに実装する。 古典コンピュータ上の実装には、大容量の計算サーバが必要となる。現在使用している計算サーバではメモリが不足するため、新たにマシンを購入する予定である。OSはUbuntu、プログラミング言語はWolfram Language(Mathematica)の予定で、LWE問題の帰着に必要な計算時間を実測する。時間がかかりすぎて計算不可能な問題については、計測された結果をもとに理論的な予測を行う。 量子コンピュータ上の実装は、クラウドで公開されたNISQマシン上で行う。現時点では、IBMの超電導量子コンピュータを用いる予定である。使用言語はQiskitになる可能性が高い。公開されているNISQマシンはエラーが大きいため、ごく小規模の問題しか解けない。そこで、並行して量子計算シミュレータを用いたシミュレーション実験を行う。シミュレーションを用いたとしても実験できる問題は低次元に限られるが、実用上の問題点を洗い出し、課題を探るには有用である。 残った時間でLWEチャレンジ問題に挑戦し、解読の可能性を判断する。
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