研究課題/領域番号 |
21K11819
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分60040:計算機システム関連
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研究機関 | 小山工業高等専門学校 |
研究代表者 |
飯島 洋祐 小山工業高等専門学校, 電気電子創造工学科, 准教授 (90565441)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 高速ディジタル伝送 / 多値伝送方式 / 伝送歪み / 多値符号判定 / 統計的評価 / 2次元マッピング / Linear mixture model |
研究開始時の研究の概要 |
半導体素子の高性能化に伴い、大規模集積回路システム内の電気配線上での通信の高速化の要求が増している。これの要求に対して、通信の大容量化に向けた多値伝送方式の採用が進む一方で、雑音耐性の低下や符号間干渉の影響が複雑化してきている。本研究では、計算機システムにおける更なる通信の大容量化や低消費電力化などの要求に対応するためには、受信端でのシンボル分布推定に基づく多値符号判定を新提案し、その符号判定の有効性と回路実装方法を検討し、新概念での高速多値伝送に向けた要素技術の確立を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究では、大規模集積回路システム内の電気配線上での通信の高速化の要求に伴って採用されてきているPAM-4(Pulse amplitude modulation-4)伝送方式について、新概念での多値符号判定方式の構築を目指している。 令和3年度の成果では、多値伝送特有のシンボル遷移パターン毎の符号間干渉の影響を可視化するために、XY平面に受信信号をプロットする2次元マッピングによる新しい評価方法を提案した。2次元マッピングを用いた評価では、従来のEyeパターンでは完全にEyeが閉じて評価が難しい状況においても、受信信号に対する符号間干渉等の影響を可視化でき、伝送特性の評価が実現できる。 令和4年度の成果では、2次元マッピングにて2次元平面にプロットした受信信号の特徴をLinear mixture modelにてモデル化することでの定量的な評価方法を新提案し、実測に基づくシミュレーションにてその有効性を検証した。具体的には、2次元平面上でのシンボル分布を、シンボル毎の直線にて近似できる点に着目し、PAM-4伝送において2次元平面上のサンプリング信号の分布を4つの直線で評価することを提案した。さらに、受信信号のサンプリング値から統計的手法と組み合わせてLinear mixture modelを決定するアルゴリズムを提案し、検証した。 さらに、本年度では、Linear mixture modelにて受信信号の特徴をモデル化したことで、それを用いた新たな符号判定手法を開発し、その基礎的検証を実施した。送信シンボルが不明な受信信号のサンプリング値にてLinear mixture modelを構築し、それに基づく符号判定が実現できる事を明らかにした。提案した符号判定手法について、そのハードウェア実装方法の基礎検討を実施し、シンプルな回路構成による符号判定回路を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の成果として、以下の成果を得ており、その成果についてはIEEEの国際学会であるISMVL(多値論理国際シンポジウム)にて採択され、さらに国内のシンポジウムでも成果を発表し、概ね順調に進展している。
(1)令和3年度の成果である2次元マッピングを用いて、受信信号のサンプリング値を2次元平面上にプロットした結果に基づいて受信信号の分布を直線に近似できる点に着目し、Linear mixture modelに用いた新たな伝送評価手法を提案、検証した。実測に基づくシミュレーションにて、PAM-4伝送に対して、Linear mixture modelによる4つの直線での受信信号の定量的評価方法について、その有効性を検証できた。
(2)Linear mixture modelを用いて受信信号の特徴をモデル化した結果から、それを用いた新たな符号判定手法を提案した。提案手法にて、送信シンボルが未知の受信信号に対して、Linear mixture modelを用いた符号判定が実現できることをシミュレーションおよび簡易的なハードウェア実装を検証できた。さらに、Linear mixture modelの構築方法として、トレーニングデータを必要とせずに、受信信号のサンプリング値からパラメータを決定する手法を開発し、その有効性を示せた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、前年度までの成果に基づき、新提案の符号判定方式を採用した高速伝送システムの開発を進める。具体的には、以下の実施を進める。
(1)令和5年度では、前年度に提案したLinear mixture modelを用いた符号判定方式について、実際にFPGAを用いたハードウェア実装を進め、実機での検証を進める。特に、実際の伝送路を利用した様々な条件での実践的な環境での検証を実施し、提案した符号判定方式の有効性を明らかにする。
(2)提案の符号判定方式を前提とした高速伝送システムを検討し、評価する。具体的には、前年度までの成果に基づき、未知の伝送路に対してLinear mixture modelを決定し、それによる符号判定に基づく通信を確立するまでの一連の流れをシステム化し、実践的な環境にて、新概念での多値符号判定方式の有効性と課題を明らかにする。
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