研究課題/領域番号 |
21K11823
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分60050:ソフトウェア関連
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
佐伯 元司 南山大学, 理工学部, 教授 (80162254)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 要求獲得 / 要求進化 / 不吉な臭い / 曖昧性 / グラフデータベース / 版管理 / ユースケースモデル / 波及解析 / 要求工学 / メトリックス / ゴール指向要求分析法 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,ソフトウェアシステムの要求分析段階において,要求進化機構を明らかにするとともにそれらを分類し,再利用可能なパターンとして蓄積することによって,要求進化支援を行う手法および支援ツールを開発する。具体的には,要求進化を水平軸,垂直軸の2つの方向からなる2次元平面でモデル化し,進化のためのprimitive operationの適用列として蓄積する手法を開発し,要求の版管理システムを実現する。primitive operationの適用パターンを再利用可能な進化パターンとして抽出し,要求分析者をガイドする。さらに,進化度合いを表すメトリックスを開発し,進化の様を可視化することを試みる。
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研究実績の概要 |
本年度は,主に水平方向の進化(要求の詳細化)について以下のような研究を行った. 1)要求仕様書からの曖昧箇所の検出と修正: 要求仕様書において曖昧さを引き起こす単語に着目し,曖昧語リストを作成した.まず,被験者実験により25 の仕様書で 108 の曖昧語を検出し,さらに Word2Vec と cosine 類似度を用いて,108語と類似する単語を検出し,最終的に 436 の曖昧語とみられる単語をリスト化できた.被験者実験の結果,その中で218 単語が曖昧語としてみなされた.また,被験者による曖昧の判断には差があり,それらの差を数値化することにより単語の曖昧度を明確にする手法を開発した.自動化ツールによる評価の結果,仕様書中の深刻な曖昧語の検出が行え,曖昧でない語句への修正を支援することができた.文中の係り受け関係による曖昧性については,文の形態素解析により品詞の出現パターンによって語句間の係り受け関係が複数存在する文を抽出し, 係り元の単語と係り先の単語を特定する.両者の意味的類似度を同様に計算し,類似度の差が見られた場合は類似性の高い語句に係ると判断し曖昧性はないとする.逆に差がない場合はどちらに係るか判定不能とし曖昧性があると判定する.評価実験を行った結果,曖昧でない係り受けの適合率はよかったが,曖昧である係り受けの検出の適合率はそれほど高くはなかった.抽出した係り受け関係を提示することにより,修正の支援が行えることを確認した. 2) ゴール指向要求分析法iStarにおける不吉な臭いの検出:昨年度までの成果をもとに,さらに不吉な臭いの検出法の精度をあげるために,自然言語で記述されたゴール記述に生成AIの適用可能性を検討し,意味的な不吉な臭いの検出と修正を試行し,これまでのWord2Vecを使う手法よりも有望な見通しが得られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
水平軸方向の(要求の詳細化)については,不吉な臭いと曖昧性の検出・改善を取り上げ,自動化手法の開発と評価を行っていった.生成AIの活用についても,精度改善の上で有望な見通しが得られた.垂直軸(要求変更による改版)方向の進化については,昨年度まで自然言語文章の意味的類似度に基づく波及解析による進化支援を行うツールを開発し評価を行っており,両者を組み合わせるための技術開発についても進んでおり,全体としては順調に進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
生成AI技術を活用し,各支援ツールのさらなる自動化と高性能化をはかる.また,不吉な臭い改善の観点での進化操作のモデル化を進め,要求獲得プロセスからの進化とそれに伴う要求詳細化の事例分析と評価を進めていく.
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