研究課題/領域番号 |
21K11891
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分60070:情報セキュリティ関連
|
研究機関 | 広島市立大学 |
研究代表者 |
上土井 陽子 広島市立大学, 情報科学研究科, 准教授 (80264935)
|
研究分担者 |
若林 真一 広島市立大学, 情報科学研究科, 学長 (50210860)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
|
キーワード | ブロックチェーン / ファンジビリティ / 暗号通貨 / 自己防衛方式 / 無断悪用 / 暗号資産 / セキュリティ / Bitcoin / Ethreum |
研究開始時の研究の概要 |
ブロックチェーンはFintechの一部に留まらず、次世代の情報基盤技術の1つとみなされている。取引履歴を分散台帳として公開しているため、ブロックチェーンでは通貨価値の等価交換性を意味するファンジビリティの維持が最重要であるが、反面、マネーロンダリング等の犯罪に関連した資金の流入も指摘されている。本研究では準備的研究において指摘したブロックチェーンの公開情報の悪用による利用者の犯罪への巻き込みや見知らぬ貸付の可能性を排除するため、利用者が公開情報の無断悪用を選択的に排除できる自己防衛のセキュリティ方式を新たに提案し、提案方式を既存のブロックチェーンに導入し、提案方式を標準化することを目的とする。
|
研究実績の概要 |
ブロックチェーンは次世代の情報基盤技術の1つとみなされている。ブロックチェーンでは通貨価格の等価交換性を意味するファンジビリティの維持が重要であるが、犯罪に関連した資金の流入も指摘されている。本研究ではブロックチェーンの公開情報の悪用による利用者の犯罪への巻き込みや見知らぬ貸付の可能性を排除するため、(1)ファンジビリティを維持したままで、利用者が公開情報の無断悪用を選択的に排除できる自己防衛のセキュリティ方式を新たに提案し、(2)提案方式を既存のブロックチェーンに導入し、(3)提案方式を標準化することを目的とする。 本研究では、[課題1] 受領者のための選択的自己防衛方式の提案とBitcoin Coreへの組込みの実現と安全性と計算処理コストの性能解析、[課題2] 提案方式のGoEthereumへの組込みの実現と性能解析、[課題3] 標準化プロセスへの提案と実用化に向けた調整、に分けて実施する。 本年度は主に[課題3]について取り組み、[課題2]のまとめを行なった。具体的には、まず、課題3として、課題1の取組みにて提案したBitcoinブロックチェーン向け方式の実用化に向けデータ量のオーバヘッドに関する解決すべき課題に取り組んだ。一方、課題3のEthereumブロックチェーンへの取組みとして、課題2の取組みにて提案したEthereumブロックチェーン向けの方式で利用しているスマートコントラクトと呼ばれるプログラムを搭載可能なアカウントの安全性について考察した。 また、課題2のまとめとして、Ethereumの安全性に関する関連研究を調査し、Ethereumブロックチェーン向け提案方式との関係を精査し、論文として研究成果を公表するため投稿する準備を完了し、研究に関する論文投稿を行なった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は主に[課題3]について取り組み、[課題2]のまとめを行なった。 具体的には、まず、課題3として、課題1の取組みにて提案したBitcoinブロックチェーン向け方式の実用化に向けデータ量のオーバヘッドに関する解決すべき課題に取り組んだ。課題1の実用化に向け、他の取引やブロックへの影響を調査した結果、提案方式のアドレス型の利用により、取引のデータ量が増加し、1ブロックに格納可能な取引数が従来アドレス型と比較して40%以上減少することがわかった。この問題を解決するため、Bitcoinで開発されたSegwitと呼ばれるアドレス型の概念を提案アドレスに導入することで、課題1で提案したアドレス型を新しいアドレス型に拡張した。この拡張により、1ブロックに格納可能な取引の数をSegwitの概念導入前の2倍以上にまで増加させることができ、オーバヘッドを改善できることを確認した。 一方、課題3のEthereumブロックチェーンへの取組みとして、課題2にて提案したEthereumブロックチェーン向けの方式で利用しているスマートコントラクトと呼ばれるプログラムを搭載可能なアカウントの安全性について考察した。スマートコントラクトはブロックチェーンの分散台帳に記録されるため、一般の計算機上のプログラムと異なり事後修正ができない。そのため、従来のプログラム以上に実用化の前に注意深くスマートコントラクトの安全性を検証する必要がある。提案方式のスマートコントラクトの安全性を検証するため、既存のコントラクト安全性検証ツールを利用する準備を行なった。 また、課題2のまとめとして、Ethereumの安全性に関する関連研究を調査し、Ethereumブロックチェーン向け提案方式との関係を精査し、論文として公表するため研究成果を投稿した。 以上より、当初の計画通り、研究は概ね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
一昨年度、昨年度、今年度の研究により、代表的なブロックチェーンであるBitcoinブロックチェーンとEthereumブロックチェーンそれぞれに導入することを想定した選択的自己防衛方式のプロトタイプを実現し、方式を利用した場合の取引にかかるオーバヘッドが実用的な範囲内であることを確認した。さらに、標準化プロセスへの提案に向けて、オーバヘッドの低減、安全性の検証方針の決定を行なった。来年度は研究成果をまとめ、論文として公表し、ブロックチェーンの標準化プロセスへ開発方式を提案する予定である。
|