研究課題/領域番号 |
21K11907
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分60080:データベース関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
末光 正昌 日本大学, 松戸歯学部, 講師 (10708770)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | オープンデータセット / 口腔細胞診 / Papanicolaou染色 / 細胞像 / 病理画像 / 上皮性異形成 / 扁平上皮癌 |
研究開始時の研究の概要 |
画像解析の研究に利用することが可能な多数の画像から構成されているオープンデータセットの調査を行い、画像オープンデータセットの現状を明らかにする。そして、それらの現状を踏まえ、病理検査画像のオープンデータセット構築を口腔細胞診の細胞像を主軸に行う。構築後はウェブ上で画像オープンデータセットを継続的に公開し、その利用状況について調査を行い利用実態を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究は、口腔細胞診のオープン画像データセットを構築・公開し、その利用状況を明らかにすることである。 口腔粘膜は重層扁平上皮によって被覆されているが、場所によりその特徴がことなる。そこで口腔がんの発生頻度が最も高い場所が舌であることに鑑み、舌の症例を対象に画像の準備を進めている。対象には、細胞判定でNegative for Intraepithelial Lesion or Malignancy(NILM)、Low-grade Squamous Intraepithelial Lesion or low-grade dysplasia(OLSIL)、High-grade Squamous Intraepithelial Lesion or high-grade dysplasia(OHSIL)、Squamous Cell Carcinoma(SCC)の範疇に入るものをそれぞれ20例(SILは15例)準備し、1例100枚を目安に対物レンズ40倍にて細胞像の撮影を行った。その後、撮影した細胞像はトリミングしパッチ化した。 ここまでの過程で2つのピットフォールがあることが明らかとなった。1点目は、前後方向のステージ微動によるモーションアーチファクト(被写体ブレ)である。顕微鏡での視野移動は、前後方向はステージの移動によって実現されている。撮影時に当初用いてたステージは購入から10年以上が経過しているものであったことから、グリスの粘度変化によるステージ維持力低下が微細なステージ移動に繋がったものと推察される。2点目はレンズ収差による色むらである。撮影した細胞像からトリミングしてパッチ化された細胞像を得たが、トリミングする位置によって背景に色むらが生じていた。 これらのピットフォールを回避するため、ステージは微動が生じないものを使用し、画像の中心部に核が位置するように再撮影している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初2022年度中には、舌領域の検体から作成された標本のデータセット完成と公開を目指していた。しかし、2つのピットフォールによって再撮影の必要性が生じたことが遅延の主たる原因である。 撮影画像をパッチ化処理し拡大観察していたところ、画像の異常を認めた。画像にはブラウン管画像の如く水平方向のノイズを認めた。その後、撮影環境を精査したところ、顕微鏡のステージが前後方向(前方)に微動していたことが明らかになった。これについては、原因は明らかになっていないが、経年変化によるグリス量減少や劣化等でグリスの粘性によって維持されていたステージ位置の保持機能が低下したことに起因する可能性が考えられる。2点目は色むらである。パッチ化された画像の確認過程で画像を拡大したところ、ブランク領域(細胞の存在していない領域)の明るさが画像によって均一でないことが明らかになった。これに関しては、パッチ化された画像を作成する際に、撮影画像におけるトリミング位置が統一されなかったことに起因するものと考えられる。通常レンズには収差が存在する。形態学的な収差に関しては、撮影対象が生体材料であるため認識することが困難であるが、画像の中心部と辺縁部での色の差といった色に関する収差がパッチ画像間の色ムラに関係していた可能性がある。従って、微動が生じないステージを用い、トリミングする位置を固定し1枚の画像から1枚のパッチ画像を作成することで、これらのピットフォールを回避することが可能である。NILMに関しては撮影が終了し、現在SILの細胞判定のものを再撮影中である。
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今後の研究の推進方策 |
理想的な病理画像オープンデータセット構築には、多数の画像を準備する必要がある。そして、基礎的な解析にも利用することを踏まえると、この画像はある程度の規格化された画像であることが望ましい。また、症例においては、細胞判定(NILM、LSIL、HSIL、SCC)に大きな偏りがないことも望まれる。一方、口腔粘膜組織は咀嚼粘膜、被覆粘膜、特殊粘膜と別れていることと、病理検査においては1つの検体1部位からしか採取しないことを考慮すると、データセットは部位ごとに分けて構築し公開することが理想的である。 2022年度は舌領域のデータセット作成におけるいくつかのピットフォール(2023年6月の臨床細胞学会にて発表予定)が問題となり構築に遅延が生じた。現在は、ステージ微動とレンズ収差の問題といったピットフォールに対して前記の対策を講じて再撮影中である。今後、データセットが準備でき次第、前年度に作成したウェブサイトでの公開を予定している。再撮影において、トリミングによるパッチ化と画像の拡大による確認を頻繁に行い、新たなピットフォールに遭遇した際の対応速度の向上に努めて研究の遅延を防止する。 データセット公開後は、ダウンロード状況や使用状況を定期的に調査し、学会や論文等で報告する予定している。 また、舌領域の症例のデータセットが構築でき次第、口腔扁平上皮癌の発生頻度の高い他の領域(歯肉等)のデータセットも構築予定である。舌の次は歯肉を対象に考えており、そちらの症例の選定も並行して進めている。
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