研究課題/領域番号 |
21K11915
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分60090:高性能計算関連
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
向井 信彦 東京都市大学, 情報工学部, 教授 (20350233)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 物理シミュレーション / コンピュータグラフィックス / 可視化 / 医工学 / 粒子法 / Computer Simulation / Medical Application / Blood Flow / Pressure Change / Heart |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は機能不全となった大動脈弁の機能回復手術の中で、術後に血栓形成の可能性が低く、また薬の服用も必要としない大動脈弁形成術を対象とし、弁の形状や弁葉数の変化に伴って、左心室から大動脈まで血液がどのように流れ、左心室及び大動脈内における圧力がどのように変化するのかをトポロジー(幾何学的位相)の変化に頑強な粒子法を用いてシミュレーションする。特に、左心室の入口である僧帽弁と大動脈の入口である大動脈弁との連動動作、さらには左心室における等容性収縮及び弛緩を考慮して、僧帽弁から左心室及び大動脈弁を介して大動脈に流れる血流を可視化することで、左心室及び大動脈における圧力変化を調べて文献と比較する。
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研究実績の概要 |
本研究課題の目的は僧房弁と大動脈弁の開閉を連動させながら,しかも左心室における等容性収縮及び弛緩を考慮した粒子法によるシミュレーションを行い,左心室と大動脈内における圧力変化が文献値と等しいのかどうか調べることである. 初年度にCT画像を基に構築したモデルを用いて,2年目に行ったシミュレーションでは僧帽弁と大動脈弁の連動は考慮したが,左心室の等容性収縮及び弛緩を考慮していなかったため,昨年度は左心室の等容性収縮及び弛緩を考慮したシミュレーションを行った. 左心室の収縮及び弛緩には細胞というミクロな組織の収縮及び弛緩の力が働いているが,ミクロな力の測定値に関する文献はない.そこで,左心室の収縮及び弛緩に働く力を試行錯誤的に求め,シミュレーションの結果,左心室内の圧力変化が文献値に一致するかどうかで設定した力の大きさの妥当性を検証した.また,シミュレーションでは力が働く向きも設定する必要がある.これもミクロな細胞の変化に依存するが,シミュレーションでは左心室壁に対して垂直な方向に力が働くとし,収縮では左心室壁の内向き,弛緩では左心室壁の外向きとしてシミュレーションを行った.この結果,僧房弁から左心室に血液が流れた後,左心室の等容性収縮により左心室の圧力はさらに高くなり,左心室から大動脈へ充分な血液が流れる.その後,大動脈弁が閉鎖し,逆に僧房弁が開口して僧房弁から左心室に血液が流れる際には,左心室の等容性弛緩により左心室は拡張して左心室に充分な血液が流れる. さらに,大動脈から抹消血管への血流により大動脈内の圧力が低下するため,抹消血管からの反射を考慮した血液制御を行うことにより,大動脈内の圧力をほぼ一定に保つことができ,シミュレーション結果と文献値はほぼ一致した.また,大動脈弁にかかる応力を可視化することで,大動脈弁形成術において大動脈弁にかかる負荷の状態を調べることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題の目的は,左心室から大動脈への血流と左心室及び大動脈内での圧力変化シミュレーションにおいて,僧房弁と大動脈弁の連動を行うと共に,左心室の等容性収縮及び弛緩を取り入れることである.2023年度は本研究課題の目的を達成した上で,大動脈内の圧力低下を防ぐために,抹消血管からの反射を考慮した血液制御機構を実現すると共に,大動脈弁にかかる応力の可視化を行うことで大動脈弁の負荷状態をも調べることができた.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の当初の目的は達成したが,本シミュレーションでは1心拍における左心室と大動脈内における圧力変化しかシミュレーションできていない.複数の心拍におけるシミュレーションでは多大な計算時間を要すると共に,1心拍後の状態はシミュレーション前の初期状態と異なるため,2心拍目におけるシミュレーションが1心拍目におけるシミュレーション結果と同一になるとは限らない.一方,人間の心臓は同じ圧力変化を繰り返しているため,実手術における圧力変化や弁にかかる応力を調べるためには,複数回実行可能なシミュレーションを行う必要がある. また,本シミュレーションでは平均的な患者の大動脈弁を対象としたシミュレーションを行ってきたが,患者ごとに大動脈弁の大きさや弁の数は異なる.このため,今後は様々な形状の大動脈弁を対象とし,しかも複数回繰り返し可能なシミュレーションを実現する予定である.
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