研究課題/領域番号 |
21K11977
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分61020:ヒューマンインタフェースおよびインタラクション関連
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
金子 寛彦 東京工業大学, 工学院, 教授 (60323804)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 瞳孔 / 注意 / インターフェース / 空間周波数 / 刺激運動 / 奥行き / 対光反射 / 視覚的注意 / 瞳孔反応 / 視線情報入力 / 眼球運動 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,まずヒトが注意を向けた対象の刺激特性と瞳孔応答の関係を定量的に明らかにする.視覚において重要な情報であり瞳孔反応と関連がある 3 つの刺激特性である,輝度,空間周波数成分,奥行き位置を制御して実験を行う.次に,その注意対象の刺激特性と瞳孔反応の関係に基づき,注意を向けた対象を同定する手法を確立する.最後に,その手法を利用して,視線を向けずとも注意を向けることで意図した情報を入力するインターフェースシステムを構築する.
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研究実績の概要 |
本研究の目的は,ヒトが注意を向けた対象の刺激特性と瞳孔応答の関係を定量的に明らかにし,その関係に基づいて注意を向けた対象を同定する手法を確立することである.そしてその手法を用いて,視線を向けなくとも,注意のみを向けることで意図した情報を入力するインターフェースシステムを構築する. 令和4年度においては,前年度から引き続き画像の空間周波数成分と注意対象の関係を明らかにする実験を進めた.異なる2種類の対象画像をフィルターで画像処理して高空周波数成分と低空間周波数成分を持つ画像をそれぞれ作成し,それらを重ね合わせた画像(ハイブリッド画像)を観察者に提示した.刺激提示の間,一つの対象の高空間周波数成分と低空間周波数成分が0.16から0.5Hzの範囲の頻度で入れ替わった.観察者は重なった二つの画像のいずれかに注意を向け,その間,瞳孔径が計測された.そして,注意を向けた対象画像の空間周波数成分と瞳孔応答の関係に基づいて注意を向けた対象を同定する手法を検討した.その結果,対象の周波数成分の変化に追従して瞳孔系が変化することが明らかになった.さらに,瞳孔径変動データから注意した対象を推定し,その精度を算出した.その結果,用いた刺激交代頻度に関わらず70%以上の推定精度が得られた. さらに,注意対象の推定精度を向上させるため,刺激に運動成分を加えた検討を行った.運動する対象に注意を向けることは静止対象に注意を向けることが容易なため,観察者が特定の対象に注意を向け易くなり瞳孔反応も増大することが予測され,それにより注意対象の推定が容易になることが期待された.その結果,画像の周波数成分と運動成分の間に相互作用がみられ,それらの組み合わせをうまく選択することにより,注意対象の推定精度が向上する可能性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は概ね順調に進んでいる. ただし,マウスやキーボードと同様のストレスのない情報入力システムの構築のためには,少なくとも,注意対象の推定精度を90%以上まで向上させたいと考えているため,そのゴールにはまだ届いていない.しかし,運動成分を加えることにより,注意精度向上が期待される結果が得られている.また,瞳孔反応に加えて眼球変位の利用も検討している.注意向上のために導入した運動刺激に伴って動く上下左右の眼球変位を瞳孔変動と合わせて利用することにより,注意対象の推定精度を向上させることが可能だと考えている.このアイディアを利用システムのための実験も開始し,その結果,精度向上の可能性が期待できる結果が得られている. このシステムの使用者として想定しているのは,筋力の低下により手や音声などによる通常のコミュニケーションができなくなる筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの患者である.そのため,そのような方々を対象とした実験を開始する予定であったが,近年の社会事情により実行できず,この点がやや遅れている.しかし,ALS協会の方とはコンタクトして,実験の準備は進めており,令和5年度からは,社会的な規制がほぼなくなることが予想されるので今後は実験を進めたい. 以上のように,健常者を用いた基礎的な実験,インターフェースに用いる提示画像の作成,注意対象の同定アルゴリズムの開発については,ほぼ予定通りに進んでいる.今後は,実際の使用対象者による実験を行い検討を進めていく予定である.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,瞳孔変動データに基づいた注意対象の推定の精度の向上を目指すとともに,システムの実際の使用者を対象とした実験を進める予定である. 前者については,注意対象の推定に用いる瞳孔変動データにおける,より効果的な指標を抽出することを検討する.次に,瞳孔変動と眼球変位との組み合わせによる手法の検討を進める.また,当初から予定している,対象の奥行き位置と瞳孔変動との関係から,注意対象を同定する手法についても検討をする.注意対象の奥行き位置と瞳孔反応に関する知見は現在のところほとんど報告されていないが,近距離対象を注視すると縮瞳することが知られているので,注意についても同様の瞳孔反応が起こると考えられる.しかし,実証されておらず,その反応量や時間的な特性に関しても明らかではない.いずれにしても,基礎的なデータを収集し,それらの関係に基づいた情報入力システムの検討を開始する. 以上3つの手法をそれぞれ検討し,次の段階としてはそれらの知見を組み合わせ,高い精度で視野内の注意対象を推定する手法を構築し検証実験を行う.そしてその手法に基づき,画面中のいくつかの選択肢から,注意を向けた対象を同定し情報入力をするインターフェースシステムを構築する. このシステムの使用者として想定しているのは,筋力の低下により手や音声などによる通常のコミュニケーションができなくなる筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの患者である.そのため,そのような人々に実際に実験参加者となっていただき,データを収集する予定である.その際,提示画像の選択肢,観察時間や姿勢の制約などに考慮してシステムの構築を進める,
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