研究課題/領域番号 |
21K12014
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分61030:知能情報学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
折本 裕一 九州大学, 総合理工学研究院, 学術研究員 (00398108)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 軌道相互作用解析 / 機械学習 / 分子機能設計 / ニューラルネットワーク / 電子状態 |
研究開始時の研究の概要 |
物質の構造と特性は電子状態で結ばれ、電子状態はさらに複雑な軌道相互作用の結果として与えられる。高度な物性制御には究極的には軌道相互作用の把握が必要になる。本課題では、軌道相互作用解析法Through-Space/Bond解析法から得られる相互作用データを機械学習の中間記述子として利用することで構造―特性関係を理解し、物質の高精度機能設計を可能とするよう開発する。さらに、巨大系高速演算法Elongation法との結合によりポリマー・バイオ系まで対応可能とし、単純~複雑相互作用系を解析可能な高汎用手法として、産業・創薬等に貢献可能な量子化学レベルの高精度機能設計ツールとして確立させる。
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研究実績の概要 |
物質特性の高度制御には対象系の電子状態を知る必要があり、本質的にはさらにその電子状態を作り出している軌道間相互作用の把握に帰結する。本課題では、基底関数を人為的に軌道収縮させて個々の軌道間相互作用をカットし定量評価するThrough-Space/Bond(TS/TB)軌道相互作用解析法を基盤として、分子構造、軌道相互作用、電子状態、分子特性等を機械学習(ニューラルネットワーク(NN))によって階層的に結びつける。“中間記述子”として軌道相互作用を利用することで、機械学習の精度を高めるとともに、ブラックボックスとなりがちなNNを「軌道相互作用」の言葉で理解可能となるよう開発を進め、従来アプローチを超えた高度な材料設計・創薬支援量子化学手法を目指している。 昨年度までに、TS/TB解析法と機械学習の結合、また、π共役系分子に対して分子構造-軌道相互作用-分子特性を結ぶ多段階NN構築の試験を行った。予測精度が十分といえなかったものの、重要相互作用検出、逆解析による重要構造因子検出などの可能性を見出した。 令和5年度は、昨年度と同様のモデルを用い、NNへの情報の与え方とネットワーク構築法を工夫することで、多段階NNの予測精度を向上させた。さらにアンサンブル的NN利用によって、予測・逆解析を安定化させた。ドナー・アクセプター置換π共役系分子において、系のフロンティア軌道を制御している軌道相互作用の経路を特定し、また逆解析によって系のHOMO/LUMOギャップを効果的に変化させうる化学修飾法について軌道相互作用の観点から知見を得ることに成功した。実用化に向けてさらに様々な系や事例に対する検証が必要であるが、本手法の有効性を示す重要な前進となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本課題では、軌道間相互作用を定量評価できるThrough-Space/Bond(TS/TB)解析法を基盤に、分子構造―軌道相互作用―分子特性を機械学習によって階層的に結びつけることにより高度材料設計・創薬支援手法の構築を目指している。 初年度(令和3年度)は、基盤技術であるTS/TB法の整備と課題解決を行った。並行して、巨大系のための高速電子状態計算法Elongation(ELG)法によって得た核酸分子と種々のリガンド分子間の結合エネルギーについて機械学習を適用した。令和4年度は、TS/TB解析法と機械学習の結合を行い、種々のドナー・アクセプター置換π共役系分子に対して軌道相互作用を中間記述子とした分子構造-軌道相互作用-分子特性を結びつける多段階ニューラルネットワーク(NN)を構築した。これとは別に、ELG法により得たDNAの連続塩基配列の電子状態への影響について機械学習を実施し、パターン抽出に成功した。令和5年度は、令和4年度に行った多段階NNの予測精度を高めるため、学習に用いるデータの与え方やネットワーク構築の方法を様々に検討し、精度向上に成功した。さらにアンサンブル的NN利用によって、予測・逆解析を安定化させた。これにより系のフロンティア軌道を制御している軌道相互作用の経路を特定し、加えて逆解析によって軌道相互作用の観点からHOMO/LUMOギャップを効果的に変化させうる化学修飾法について知見を得た。 軌道相互作用を中間記述子とした多段階機械学習の方法論はおおよそ完成しその有効性も示せたが、実用化に向けてはさらに様々な系や事例に対する検証が必要であり、「やや遅れている」という自己評価を行った。
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今後の研究の推進方策 |
Through-Space/Bond(TS/TB)解析法を基盤とする軌道相互作用解析-機械学習連携手法の実用化に向け、次年度(令和6年度)は「分子構造-軌道相互作用-分子特性の多段階ニューラルネットワーク(NN)手法」を多様な系や事象に対して適用し、その汎用性を検証しつつ、多段階NNの逆解析結果に基づいた分子機能設計も試みる。また、巨大系に向けて高速・高精度電子状態計算法Elongation法と組み合わせて核酸分子等に適用可能となるよう開発し、高精度分子機能設計ツールとして完成を目指す。研究推進においては、研究課題の意義・目標について十分留意し、計画見直しがあった際には、優先順位を明らかにしつつ着実な計画遂行を心がける。
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