研究課題/領域番号 |
21K12040
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分61030:知能情報学関連
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
堀口 由貴男 関西大学, 総合情報学部, 教授 (50362455)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 睡眠計測 / 時系列解析 / 信号源分離 / 時空間データ解析 / パターン抽出 / 知的情報処理 / 意思決定支援 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,睡眠障害の手がかりが身体の大小さまざまな動きに含まれているとの仮説の下,高い空間分解能で睡眠中の身体の動きを捉えた高次元身体活動時系列から,睡眠障害を特徴づける時空間パターンを抽出する知的情報処理技術を開発する.まず,普段どおりの睡眠をとる中で睡眠の問題に関するデータ収集ができるように,装置類の身体装着が不要な非干渉型計測により取得した体圧分布時系列からのパターン抽出技術の開発に取り組む.次に,睡眠計測の非専門家によるデータ解釈を認知的に支援するために,障害の種類や症状の深刻度に応じた時空間パターンを明らかにする.
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研究実績の概要 |
本研究は,睡眠障害の手がかりが睡眠中の身体の大小さまざまな動きの中に含まれているとの仮説の下,非干渉型の計測装置で取得した高空間分解能の体圧分布時系列から,各種の睡眠障害を特徴づける時空間パターンを抽出するデータ解析技術を開発することを目的とする. R4 (2022) 年度は,体圧分布時系列の計測と同時並行で測定された呼吸インダクタンス・プレチスモグラフ(RIP)信号を対象として,呼吸努力波形から無呼吸や低呼吸が発生している時区間を推定するアルゴリズムの開発に取り組んだ.具体的には,変化点検出処理によりRIP信号から得られた部分呼吸曲線の集合の分類処理に関して,時系列間距離の計算方法が異なる時系列クラスタリング手法の比較調査を実施した.調査結果からは,部分呼吸曲線の分類処理においては,位相だけでなく周期の違いを許容する時系列間距離の評価が求められることと,スケール不変性は考慮しないほうがよいことが知見として得られた. また,研究調査を睡眠・覚醒リズム障害の分析に派生させ,非リズム成分を時系列から分離抽出する課題に取り組んだ.その結果として,アーチファクト(異常データ)をより短い時間長の部分時系列として特定できる可能性が示唆された. 自覚症状に乏しい睡眠の問題に対する調査や処置効果の継続的確認の方法として,在宅環境等で普段どおりの睡眠をとる中で症状に関する計測情報が自然と収集されることが理想である.体圧分布時系列における異常時区間の検出技術は,この課題に対する解決策として有望である.呼吸努力波形における異常時区間の検出技術は,目的とする開発技術の主要部分の一つである.異常発生時区間の検出が容易な時間パターンが強調されるように体圧分布時系列から呼吸努力波形を分離する技術を改良し,2つのアルゴリズムをうまく統合することが次の課題である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アルゴリズム開発については,睡眠ポリグラフ(PSG)検査のデータセットを活用することで計画にほぼ沿う形で進められている. これまでに,呼吸努力波形から異常発生時区間を抽出する処理のために,変化点検出手法の一種である特異スペクトル変換を応用して,呼吸努力波形を動態が異なる複数の部分呼吸曲線に分割するアルゴリズムを開発した.R4 (2022) 年度は,このアルゴリズムが出力した部分呼吸曲線の集合を,動態が類似する少数のグループにまとめる分類処理について調査した.具体的には,変化点検出処理によりRIP信号から得られた部分呼吸曲線の集合に対して,時系列間距離の計算方法が異なる4つの時系列クラスタリング手法を比較した.調査からは,k-means(Euclidean) やk-Shapeよりも,k-means(DTW)やk-means(Soft-DTW)を用いたほうが,呼吸異常に特有の時間パターンの検出を特定のクラスタが担うように分類モデルを学習させられることが確められた.すなわち,呼吸の正常と異常を区別する時系列的な特徴を抽出するには,位相だけでなく周期の違いを許容する時系列間距離の評価が求められることと,スケール不変性は考慮しないほうがよいことが明らかになった.この取り組みはRIP信号を対象としたものであるため,体圧分布時系列から信号分離技術によって抽出された呼吸努力波形へのアルゴリズム適用を試みることが次の課題である. 上述の取り組みから派生して,変化点検出を応用した睡眠・覚醒リズム障害の分析にも取り組んだ.睡眠・覚醒リズムの乱れは睡眠障害の原因の一つであるが,それは深部体温の時間変化の異常と密接に関係する.この取り組みからは,動態が異なる部分曲線への分割によって,睡眠・覚醒リズムに関係しない時系列要素をより短い時間長の部分時系列として分離抽出できる可能性が示唆された.
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今後の研究の推進方策 |
体圧分布時系列からの呼吸努力波形とその空間分布の分離抽出処理について,無呼吸や低呼吸などの特異な呼吸波形と正常な呼吸波形を適切に区別して抽出できるかを評価の観点としてアルゴリズムの開発に取り組む.そのために,PSG検査と並行して計測された体圧分布時系列のデータセットを利用し,処理結果のPSG検査データとの整合性をみながら,アルゴリズムの拡張を進める.その際,睡眠・覚醒リズム障害の分析から得られるアーチファクト検出法の知見を活用する. 次に,体圧分布時系列から得られた呼吸努力波形に対して異常発生時区間の抽出処理が適用できるように,二つのアルゴリズムの組合せ方法について検討する.呼吸努力波形の時系列特徴だけでは捉えることが難しい呼吸異常の特性を調査するために,呼吸努力波形の空間分布についても分析する.
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