研究課題/領域番号 |
21K12054
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分61040:ソフトコンピューティング関連
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研究機関 | 沖縄工業高等専門学校 |
研究代表者 |
佐藤 尚 沖縄工業高等専門学校, メディア情報工学科, 准教授 (70426576)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2021年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
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キーワード | 思春期特性 / 成人期特性 / 協力状態の平等性の向上 / 役割間葛藤 / 役割間葛藤ゲーム / 発達型強化学習エージェント / Recurrent-Q学習 / マルチエージェント・シミュレーション / Recurrent Q学習 / 時系列学習・予測能力 / 強化学習 / Q学習 / 思春期 / 成人期 / 平等な協調状態の創発 / 思春期から成人期までの発達過程 / 内部報酬系を持つRecurrent-Q学習 / 自己影響結合付き単純再帰型ネットワーク |
研究開始時の研究の概要 |
複数の集団から同時多発的に役割要求されることによって生じる衝突を役割間葛藤と呼ぶ。この役割間葛藤は、思春期から成人期の様々な年代において生じる。 そのため、思春期から成人期への発達過程の中での役割間葛藤への対処法の創発や変容プロセスを解明するためには、その動態の構造的・力学的な理解が不可欠である。 そこで本研究では、役割間葛藤状況を表すゲームを提案する。そして思春期特性を有する発達型強化学習エージェント集団が徐々に成人期主体へと発達する中で、それらの集団に前述のゲームを継続的にプレイさせ、思春期と成人期で創発する役割間葛藤への対処法の違いや発達過程を通した対処法創発・変容プロセスの動態を解明する。
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研究実績の概要 |
「役割間葛藤」の問題は成人期以降だけでなく、それ以前の思春期でも日常的に生じる。しかし、思春期を対象とする役割間葛藤の研究は皆無に等しい。そこで本研究では、役割間葛藤状況を表すゲーム論的枠組みとして「役割間葛藤ゲーム(Interrole Conflict Game; ICG)」を提案し、思春期特性を有する発達型強化学習エージェントの集団が徐々に成人期主体へと発達していく中で、それらの集団にICGを継続的にプレイさせ、思春期と成人期での役割間葛藤への対処法の違いや発達過程を通した対処法創発・変容プロセスの動態を解明することを目的とする。 2021年度の研究では、思春期・成人期特性を個別に表すQ学習エージェントを用いてシミュレーション実験を行い、思春期特性の要因と考えられる高い学習率と低い割引率が、役割間葛藤状況で主体同士の対等な協調の創発に重要な役割を担うことが示唆された。 2022年度の研究では、Recurrent-Q学習エージェントを用いたシミュレーション実験によって、各主体が有する時系列学習・予測能力が、役割間葛藤状況における主体間での平等な協力関係の創発のみならず、その平等性の向上に重要な役割を果たすことが分かった。 2023年度では、発達型強化学習エージェントを用いて、思春期に獲得した役割間葛藤への対処法が徐々に発達と学習を進める中でどのように変容するのか、例えば、成人期への発達過程で各主体が利己的になっていくのか、それとも思春期に獲得した平等で利他的な関係を維持できるのか、ということを調べる予定であった。しかし、所属機関において不測の事態が生じ、校務負荷が数倍になったため、研究を遂行することができなかった。補助事業期間の延長を承認して頂いたので、2023年度に予定していた研究は2024年度に実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初、1年目に役割間葛藤状況下において思春期特性が主体の行動にどのような影響を及ぼすのかを明らかにするため、この特性から徐々に成人期特性へと変化させる「発達機能」を使用せず、すなわち、思春期特性を変化させずに固定したままの強化学習エージェントを用いて調べ、2年目には逆に最初から成人期特性を初期状態として設定してこれを固定したままの強化学習エージェントを用いて調べ、そして3年目に上述の「発達機能」を働かせて思春期特性を徐々に成人期特性へと変化させる過程で思春期と成人期のそれぞれで創発した役割間葛藤への対処法の違いや発達過程を通した対処法創発・変容プロセスの動態を解明するという研究計画を立てていた。 しかしながら、実際の研究では、1年目に思春期、および成人期特性を個別に表現したQ学習エージェントを用いてマルチエージェント・シミュレーション(MAS)を実施し、そして2年目には更にそれらの特性に加えて、時系列学習・予測能力を持つRecurrent-Q学習エージェントを採用したMASによって、それらの能力が平等な協調状態の創発に与える影響を調べた。 よって、見方を変えるならば、1年目と2年目に実施する研究計画の内容を組み替えて当初予定していた研究を実施したと言って差し支えない。また、これら2年間の研究成果は、2021、および2022年度にそれぞれ査読付きジャーナル論文として出版することができた。 しかしながら、2023年度は、所属機関において不測の事態が生じ、校務負荷が数倍になったため、研究を遂行することができなかった。補助事業期間の延長を承認して頂いたので、2023年度に予定していた研究は2024年度に実施する。 以上のことから、研究の進捗状況は「遅れている」と評価せざるを得ない。最終年度となる今年度は更なる業務効率化を図り、しっかり計画通りのエフォートを確保できるようにしたい。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度に行う研究では、「思春期・成人期の各特性を表現するのに用いられる強化学習アルゴリズムの各種パラメータの調整機構(例えば、思春期特性を引き出す高い学習率と低い割引率をそれぞれ徐々に下げる(上げる)、など)」を組み込んだ発達型強化学習エージェントモデルを用いて、思春期に獲得した役割間葛藤への対処法が徐々に発達と学習を進める中でどのように変容するのか、例えば、成人期への発達過程で各主体が利己的になっていくのか、それとも思春期に獲得した平等で利他的な関係を維持できるのか、ということを調べる。 また、これらの研究成果については、年度末までに査読付きジャーナル論文の投稿・アクセプトを目指す。
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