研究課題/領域番号 |
21K12058
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分61040:ソフトコンピューティング関連
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
鈴木 麗璽 名古屋大学, 情報学研究科, 准教授 (20362296)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
|
キーワード | 生成モデル / エージェントベース進化モデル / 鳥類の鳴き声 / ロボット聴覚技術 / 生態音響学 / 人工生命 / 生態音響 / 生成系モデル |
研究開始時の研究の概要 |
生成系機械学習モデルの豊かな表現力と構成論的進化モデルを融合した,生態音響エージェントベース進化モデルを構築し,フィールド調査とも連携して複雑な生態音響進化シナリオを探ることを目的とする.音声コミュニケーションの典型例として性選択による鳴き声の進化等を取り上げ,鳥類生態観測で収集した録音等から生物音声の音響構造を抽象化した潜在空間を作成する.これを進化モデルにおける遺伝子・表現型空間とし,実生態の複雑さを反映した形質進化を表現可能なモデルを構築する.仮想生態空間での空間的音響特性も盛り込む.進化実験で得られた音声を実フィールドでのプレイバック実験に適用することを通して,生態音響学に貢献する.
|
研究実績の概要 |
本年度は,前年度において予備的知見を得た,カリフォルニアに生息する野鳥であるホシワキアカトウヒチョウと,名大演習林のオオルリの鳴き声の生成モデルを洗練した上で,提案する生成鳴き声に基づく性選択モデルを構築して実験を行った.その結果,両鳴き声のモデルにおいて明瞭で複雑すぎない構造を持つ歌が選択されがちであることが示唆された. 次に,現地の野生個体に対する生成鳴き声のプレイバック実験を行った.ホシワキアカトウヒチョウに関しては,生成モデルにおいてオリジナルの音源がよく再現される潜在空間上の原点をはじめとして,次第に離れた位置にあるノイズが多く明瞭でない鳴き声を複数生成し利用した.その結果,生成鳴き声の明瞭さと野生個体のスピーカへの接近や鳴き返しの度合いに負の相関がありうることが判明した.特に,人間にとってはノイズに聞こえるほど明瞭でない音声であっても野生個体への弱い影響が示されたことは,生成モデルによる生成音が非明示的に自然生態に与える影響を示唆していると考えられる.オオルリについては,モデルで頻繁に選択された歌等を現地野生個体に再生し,HARKBirdによる二次元音源定位を用いて反応傾向を分析したところ,最も頻繁に選択された歌再生時に野生個体がスピーカから離れるなど,特徴的な反応を示す可能性が示唆されたが,より詳細な分析が必要である. また,ロボット聴覚技術に基づく鳥類観測に関する研究を進め,観測技術の向上を図った.本課題の核となるアイデアである生成モデルと進化モデルの融合の考え方を発展させ,大規模言語モデルと進化モデルの融合の応用の検討を進め,協力行動に関する性格特性の進化モデルを構築した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度までの知見を踏まえ,提案する生成進化モデルと実フィールド実験の融合の試みを,オオルリとホシワキアカトウヒチョウの2種に関して試行できたことが大きな進展であった.ホシワキアカトウヒチョウに関しては,特に生成音の明瞭さが野生個体に与える影響について知見を得ることができ,オオルリに関しては,進化実験で頻繁に選択された歌の影響を示唆する知見を得た.また,これらの枠組みと試みを国内研究会予稿においてまとめられたのも成果である.同時に,本課題の核である生成モデルと進化モデルの融合の考え方を発展させ,大規模言語モデルと進化モデルの融合の応用の検討も進められたことも大きな成果である.
|
今後の研究の推進方策 |
得られた知見は予備的段階であるため,これらを補強する実験や分析を進める.具体的には,各種を対象として生成鳴き声のより洗練された構築法を検討する.進化実験やその結果を反映させたプレイバック実験を適宜継続し,知見を深め,全体をまとめあげる.さらには生成モデルと進化モデルの融合の発展についても検討を進める.
|