研究課題/領域番号 |
21K12198
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分62040:エンタテインメントおよびゲーム情報学関連
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
松浦 昭洋 東京電機大学, 理工学部, 教授 (50366407)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | VR / MR / 複合現実 / マンガ物理学 / 圧力 / 視野拡張 / 反直感的 / 仮想性 / 空想的現象 / パラメータ化 / 磁気粘性流体 / 仮想現実 / 形状変化 / 仮想物理 / ミクストリアリティ / 漫画物理学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、従来主にテキストや視聴覚コンテンツにおいて表現されてきた非現実的な現象、特に、空間や身体の変形、実世界とは異なる物理パラメータの値による仮想物理的な現象、漫画やアニメーションにおいて「漫画物理学(Cartoon Physics)」の名で法則化されている空想的な現象を、実物体との接触等のインタラクションを通じプレイヤーに体感可能とする複合現実システムの開発、およびそれらのもたらす実在感やエンタテインメント性の評価・分析を行う。さらに、それらの開発に資する汎用的な要素技術・表現技術を創出する。
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研究実績の概要 |
本年度は主に以下の研究を行った。 1. マンガ・アニメ・映画等で現れる事象の体感に関して、物体が外力で弾かれる事象の一つである把持する銃が相手の銃弾で弾かれる事象を取り上げ、着弾の刺激提示部と弾かれる方向の変更が可能な空気噴射部を持つ銃型デバイスと仮想世界での決闘が可能なアプリケーションを開発した。また、物体を引き抜く行為の持つエンタテインメント性に着目し、引き抜く物体の形状、使用する粘性流体、振動の有無等による引き抜きやすさの計測実験を行った。これらの成果は、映像表現・芸術科学フォーラム2024で発表した。 2. 仮想的な食材の硬さを提示する包丁デバイスに関して、前年度製作した二本の刃を持つデバイスを三本の刃をもつものに拡張し、硬さの時系列変化として、一定の硬さ、交互に硬軟の現れるパターン、サイン波状のパターンを実現する圧力制御方法を実装し、それぞれ一定の近似で達成できることを実験により確認した。本成果は、EC2023で発表した。 3. 仮想空間および実空間における視野拡張を目的として、360度全天球画像を、等距離射影に基づき、円状およびその外側の円環状の画像の合成としてHMDに提示し、さらに空間内の物体の位置特定を支援する補助線の表示機能、通常ビューと提案ビューの切替機能等を有する視野拡張システムを開発した。本成果は、デジタルゲーム学会年次大会等で発表した。 4. 実世界において直感に反する、謂わば「仮想性(Virtuality)」を持つ物理現象として、等角速度で回転する円盤上を転がるボールの、円盤内に入る前と出た後の軌道が同一直線上にある物理現象を対象として、本現象を実現するデバイスの開発とその仮想性を視覚表現で強化するプロジェクション手法の実装を行った。本成果は、第71回EC研究会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究に一定の進展があった点として、研究実施計画で記した仮想物理的現象に関しては、仮想的な食材の硬さの時系列変化を再現する包丁デバイスの開発・評価を行い、EC2023で発表することができた。空想的現象に関しては、銃を弾かれるというマンガ・アニメ・映画等で取り上げられる事象の体感が可能なシステムを開発し、さらに、物体の引き抜きに関して、コンテンツ化の基礎となる基本立体の引き抜き時の荷重の計測実験を行い、いずれの成果も映像表現・芸術科学フォーラム2024で優秀発表賞を受賞した。 新たなテーマに関しては、仮想・実・複合世界のいずれにおいても適用可能な視野拡張手法を考案し、提案ビューを用いたシューティングゲームのプロトタイプを作成し、デジタルゲーム学会等で発表した。さらに、実世界における直感に反する物理現象として、回転する円盤上のボール運動を取り上げ、その仮想性強化のためのプロジェクション表現の実装を行い、EC研究会で発表した。 これらの進展の一方で、成果は主に本年度12月から3月にかけて得られたため、年度内に国際会議、論文誌等で発表することができなかった。 以上の開発・発表状況から総合的に、やや遅れている、と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、特に以下の課題に力点を置き、研究を進めていく予定である。 1. 食材の硬さを提示する包丁デバイスに関しては、前年来の成果をまとめて国際会議、学術誌等へ投稿する。 2. 銃型デバイスに関しては、弾かれる方向や強度のレンジを広げ改善したシステムを開発し、体感の評価を行う。物体の引き抜きに関しては、引き抜く物体の種類を前年の基本立体から増やし、引き抜く際の荷重の可変化等パラメータ化の手法の考案、実装を目指す。 3. 視野拡張に関しては、 考案した拡張手法を用いた物体の発見とそれに続く動作、という一連の行為の効率性を検証する実験を行い、さらに、拡張手法を実装したコンテンツの学会、展示発表等を行う。 4. 直感に反する物理現象の仮想性の表現強化に関しては、前年度に円盤上のボール運動に関して考案した手法を発展させ、新たな手法の考案も行う。さらに、前年度に研究を開始した物体の破砕と再生が可能なシステムについて、破砕と再生が可能な材料の検討、再生方法の考案・実装を行う。 得られた成果は、関連する学会(エンタテインメントコンピューティング、インタラクション、VR学会、映像表現・芸術科学フォーラム、SIGGRAPH等)や学術誌で発表する予定である。
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