研究課題/領域番号 |
21K12215
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分63010:環境動態解析関連
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研究機関 | 国立極地研究所 |
研究代表者 |
中澤 文男 国立極地研究所, 先端研究推進系, 助教 (80432178)
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研究期間 (年度) |
2022-11-15 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 遺伝子解析 / 古代DNA / 1細胞 / PCR / ゲノム |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、古代に南極に飛来し、南極氷床に封じ込められている古代真菌のDNA分析を行う。試料はドームふじ基地で掘削されたアイスコアを利用する。先ず、アイスコアから古代真菌1細胞ずつを単離し、DNA分析する方法を開発する。次に古代真菌について包括的にDNA系統解析をおこなう。そして、アイスコア研究等で解明が進んでいる過去の地球環境情報と統合的に解析することで、長期の環境変動が各時代の真菌の数や種組成、起源、輸送経路に及ぼした影響を解析する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、1)ドームふじアイスコアに保存されている真菌を1細胞ずつ分離し、DNA分析する方法を開発すること、2)アイスコア中の古代真菌について包括的にDNA系統解析をおこなうこと、3)古環境変動データと組み合わせることで、環境変動が真菌の起源(発生源)や数、種組成に及ぼした影響を解析することにある。 ドームふじアイスコア中の細胞数濃度は低いと予想されるため、アイスコア中の真菌細胞を隈なく且つ迅速に採取する方法を検討してきた。現在は、誘電泳動法によって水試料中の細胞を捕集する装置(ELESTA, AFIテクノロジー社製)をもちいて、試料から細胞抽出を試みている。但し、本装置の試料導入量は数mlに限られるため、試料を予め濃縮する必要がある。DNA分析のために、最終的には数μLまで濃縮が必要である。そこで2023年度は遠心分離による濃縮を試みた。北極の氷河で採取した氷の融解水試料25mLを50mL遠沈管に入れ、遠心分離後(8,000g、20分)、上澄み液20mLを捨てることにより菌類細胞を集めた。そして5mLの残試料をELESTAに導入した。細胞は、スライドグラスの形をしたELESTAチップのマイクロ流路内に捕集され、顕微鏡で観察できる。菌類が捕集されていた場合、ELESTAチップから140μLの水と共に細胞を回収し、0.2mLのPCRチューブへ移し替えた。そしてドライブロックヒーター上で5μLまで濃縮した。以上の操作で試料の濃縮を簡単に行うことができ、DNA分析の準備が完了した。但し、細胞の顕微鏡観察では、細胞と不純物の見分けが難しい場合があった。ELESTAへの導入の前に細胞を染色する必要があると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2023年度で、氷河氷の融解水試料をDNA分析するための濃縮操作方法はほぼ完成したと考えている。しかしながら、ELESTAによる補足物の顕微鏡観察では、細胞と不純物の見分けが難しい場合が多々あった。当初は観察の習熟が進むにつれ解決できると考えたが、簡便な操作に繋がらないためあきらめることにした。また、この問題を残したままやみくもにDNA分析を行うのは時間・労力・試薬等(研究費)の無駄であると思われた。そこで、操作手順が増えることになるが、ELESTAへの導入前に細胞を染色する操作を加えることにした。DNAに特異的に染まる細胞染色液はDNA分析に悪影響を及ぼす可能性があるため、細胞壁を特異的に染色するものを採用することにした。既に染色液の選定も終了しており、2024年度はこの染色液による前処理をおこなったのち、ELESTAへ試料を導入する。そして、顕微鏡観察で真菌細胞が補足されていることが確認できた試料についてのみDNA分析を実施していく。
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今後の研究の推進方策 |
氷河氷融解水試料をDNA分析するための前処理方法については、ほぼ確立できたと考えている。2024年度は染色操作を追加し、有効であることが確認できれば、前処理方法の検討は完了とし、いよいよDNA分析に着手する。ここでは、研究代表者が以前開発した、古代花粉1粒子ずつのDNA分析法が転用できると考えており、大きく研究を前進させたい。この方法は、細胞内のDNAを抽出から増幅まで一つの反応容器内で進められる点に特徴がある。反応系に混入したDNA断片は予め化学的分解により除去されるため、細胞内のDNAのみが解析される。ここでの課題はDNA増幅に使用するプライマーの選定にある。古代花粉のDNA分析では、特異的なプライマーを使用したほうがPCRの成功率が向上した。本研究では菌類のPCRで一般的に使われるITS領域を先ずは試す予定である。ここで、DNAの増幅に成功すれば、次のステージへ研究を加速させることができる。一方、プライマーがマッチしない場合はプライマーの設計から取り組むことになるので、研究の遅延が懸念される。しかしながら、研究代表者は様々なプライマーを設計してきた経験があり、ITS領域のプライマーによる実験と並行して準備を進めていく。
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