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従属栄養的に硝化を行うことは微生物自身にとってどのような意義があるのか?

研究課題

研究課題/領域番号 21K12220
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分63010:環境動態解析関連
研究機関静岡大学

研究代表者

藤原 健智  静岡大学, 創造科学技術大学院, 教授 (80209121)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
キーワード従属栄養硝化 / POD / ピルビン酸オキシム酸素添加酵素
研究開始時の研究の概要

従属栄養微生物による環境中の硝化作用への寄与は、独立栄養性の硝化菌と同等、あるいはそれ以上に大きいと考えられている。独立栄養硝化がエネルギー産生と共役する異化的作用であるのに対し、従属栄養硝化のプロセスはエネルギーの消費しかもたらさない。従属栄養硝化を行うことが微生物自身にとってどのようなメリットがあるのか?、という根本的な問いに答え得る仮説を検証することで、従属栄養硝化に関する微生物生態学やその応用研究を発展させるために必要となる、明確な生化学的基盤を与える。さらにその仮説に基づいて農薬を用いない硝化抑制の可能性についても検討する。

研究実績の概要

① Alcaligenes faecalis由来のピルビン酸オキシム酸素添加酵素(AfPOD)、活性に必須であるN末端18アミノ酸残基を欠損させた変異AfPOD、およびBradyrhizobium sp. WSM3983由来のPODそれぞれの結晶構造解析についての学術論文を作成中である。
② アミノ酸配列に基づく分子系統解析、および機能分析の結果、PODはクラスⅡアルドラーゼ・スーパーファミリーに属する他の酵素タンパク質とは明確に区別される単系統群を構成することを示した。またPOD遺伝子は、芳香族化合物の代謝や輸送に関与すると考えられる遺伝子と同一の転写単位を構成していることから、PODが、従属栄養硝化とともに何らかの、おそらく芳香族化合物の代謝にも関与する‘ダブルファンクション’酵素である可能性を提起した。この仮説に関する学術論文がオランダ微生物学会の発行するAntonie van Leeuwenhoek誌に掲載された。
③ 前年度のA. faecalisのPOD遺伝子変異株の作成に引きつづいて、PODのホモログであるPOD2の遺伝子変異株、さらにPODとPOD2の二重変異株を作成した。これによって、比較メタボロム解析によるPODの「真」の生理的機能の解明に向けた準備が整った。
④ 従属栄養硝化能を持たない放線菌Streptomyces rubrolavendulaeのPOD遺伝子破壊を行い、得られた変異株が「気菌糸形成の促進」という特異な表現型を示すことを見出した(2021年学会発表)。この結果は、②で述べた、PODが従属栄養硝化への関与だけでなく、何らかの別の機能を併せ持っている可能性を支持する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

活性型である二価鉄結合状態のAfPODの結晶構造が高分解能で得られ、活性中心の構造を明らかにすることはできたものの、基質(ピルビン酸オキシム)あるいは阻害剤(ピコリン酸)の結合状態の構造がまだ得られていないため、強い根拠に基づいて反応機構を詳細に議論することは現状では難しい。また、2022年度に行ったPOD遺伝子破壊とメタボロム解析に引き続き、2023年度(最終年度)はPOD2遺伝子変異株とPOD・POD2二重変異株を作成し、親株と合わせ4種の株間での比較メタボロム解析によってPODの「真」の機能を解明する準備を整えた。しかし分析条件の最適化等に手間取り、メタボロム解析に着手できなかったため、必要経費の繰越しを申請することとなった。以上を総合し、最終年度の進捗状況は「おおむね順調」とした。

今後の研究の推進方策

研究実績の概要として挙げた①~④のうち、最終年度に論文発表に至らなかった①、準備までは整えたが分析に至らなかった③、および④に関連した研究を今後進めて行く。まずPODの結晶構造に関する論文を作成し投稿する(①)。新たに採択された科学研究費(令和6~8年度基盤研究(C):24K15258、「従属栄養硝化の真の生理的意義の解明とその展開」)でオープンジャーナルへの投稿費用を賄う。またPODが関与する代謝経路の分析のため最終年度に作成した3種の変異株を用いてメタボロム解析を行う(②)。その費用として最終年度からの繰り越し予算を用いる。また、放線菌におけるPODの機能解明(④)を新たに採択された科学研究費を用いて進める。すでに作成済みのS. rubrolavendulaeのPOD変異株のオミックス解析を計画している。親株との比較オミックス解析によって、POD遺伝子変異がどのようなメカニズムで気菌糸形成の促進をもたらすかを明らかにする。

報告書

(3件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 2021 実施状況報告書
  • 研究成果

    (8件)

すべて 2023 2022 2021

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Phylogenetic diversity, distribution, and gene structure of the pyruvic oxime dioxygenase involved in heterotrophic nitrification2023

    • 著者名/発表者名
      Tsujino Shuhei、Masuda Ryota、Shimizu Yoshiyuki、Azuma Yuichi、Kanada Yutaro、Fujiwara Taketomo
    • 雑誌名

      Antonie van Leeuwenhoek

      巻: 116 号: 10 ページ: 1037-1055

    • DOI

      10.1007/s10482-023-01862-9

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Gene expression analysis of Alcaligenes faecalis during induction of heterotrophic nitrification.2021

    • 著者名/発表者名
      Shuhei Tsujino, Hideo Dohra, Taketomo Fujiwara
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 11 号: 1 ページ: 23105-23105

    • DOI

      10.1038/s41598-021-02579-3

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Nitrate-responsive suppression of DMSO respiration in a facultative anaerobic haloarchaeon Haloferax volcanii2021

    • 著者名/発表者名
      Koyanagi Isamu、Dohra Hideo、Fujiwara Taketomo
    • 雑誌名

      Journal of Bacteriology

      巻: 203 号: 12 ページ: 1-12

    • DOI

      10.1128/jb.00655-20

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] カロテノイドを産生するBrevundimonas属細菌のハマサンゴからの分離2023

    • 著者名/発表者名
      石井翠海、道羅英夫、豊田圭太、ベアトリス・カサレト、鈴木款、藤原健智
    • 学会等名
      日本サンゴ礁学会第26回大会(令和5年11月23日~26日、仙台市)
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Transcriptome analysis of Alcaligenes faecalis during heterotrophic nitrification.2022

    • 著者名/発表者名
      Tsujino S, Dohra H, Fujiwara T
    • 学会等名
      International Union of Microbiological Societies Congress 2022 (online)
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] Characterization of carotenoid-producing Brevundimonas sp. isolated from Porites coral2022

    • 著者名/発表者名
      Fujiwara T
    • 学会等名
      Coral Reefs in a Warming Ocean (CRWO2022), Japan/Mauritius-joint workshop
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Analysis of Molecular Mechanism from heterotrophic nitrification in Alcaligenes faecalis.2021

    • 著者名/発表者名
      Tsujino S, Yamada Y, Dohra H, Fujiwara T.
    • 学会等名
      World Microbe Forum 2021
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] Response of N2O production by oceanic nitrifying bacteria to acidification.2021

    • 著者名/発表者名
      S. Toyoda, T. Matsui, T. Hirane, T. Fujiwara, N. Yoshida
    • 学会等名
      7th International Conference on Nitrification and Related Processes (ICoN7)
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 国際学会

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公開日: 2021-04-28   更新日: 2024-12-25  

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