研究課題/領域番号 |
21K12225
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分63010:環境動態解析関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
太田 俊二 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (10288045)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 地球温暖化 / 感染症媒介蚊 / 降水量変化 / 個体群動態モデル / 将来予測 / 生態系影響評価 / 感染症 / 個体群動態 |
研究開始時の研究の概要 |
気候変化は感染症を媒介する生物の活動期間や分布域を変えるので、いままで感染症の流行が少なかった温帯域でもその拡大が懸念される。ゆえに、従来からの熱帯域を対象とした疫学的研究だけでなく、温帯域の生物種の特性を踏まえた生態学的研究が必要である。また、有効な感染症対策のためには、媒介生物の国・地域単位などの広域分布に加えて、都市域内の不均一な微気象環境を反映させた局地的分布を明らかにしなければならない。そこで、人口が集中する都市域内の土地利用形態ごとの微気象観測とともに、申請者がこれまで開発してきた感染症媒介蚊の時空間的分布の変化を表現可能な個体群動態モデルを応用していく。
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研究実績の概要 |
地球温暖化の進行にともって蚊媒介性感染症の広がりが変化する可能性がある。とくに熱帯域ばかりでなく温帯域においても感染が新興、拡大する恐れがあり、温帯性蚊の個体群動態を将来予測することが求められる。一般に将来の気候変化は気温上昇に着目されることが多いが、幼生段階の蚊が水環境で生息することを考慮すると降水パターン変化の影響は無視できない。本研究では気候値から蚊の個体群動態を出力するモデルを用いて、降水パターンの変化が水生幼虫の個体群動態にどのような影響を与えるか、また将来気候下でそれがどのように変化するかをシミュレーションした。水生個体が多く生息する夏季において、降水量が増加する場合と、降水の継続日数が延長する場合を想定して感度実験を行なった。この結果、降水が強化されるシナリオほど蚊個体の減少が引き起こされており、この影響力は降水量の増加よりも降水期間の延長においてより大きいことが示された。個体群動態の将来予測のために、RCP2.6とRCP8.5シナリオを想定したGCMの将来気候データを用いた。これらの値は、観測値よりも偏りの小さい降水が多頻度に発生しており、バイアス補正をすると、極端な降水が稀に発生するようになった。このことを反映して補正前のGCMデータを使うと、個体数が少なく、終息時期が早く見積もられることがわかった。また、バイアス補正後のデータで個体群動態の将来予測値を求めたところ、いずれのシナリオでも個体数は減少し、RCP2.6よりもRCP8.5の方が減少率は大きくなった。幼生蚊が生息する水環境には降水をはじめとするさまざまな気象要素が関わっており、それらが蚊の個体群動態に影響を及ぼすことを前提としたうえ、降水発生日数や極端降水の増減などの今後の降水パターンの傾向をどのように想定するかが個体群予測に重要であることが本研究から示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの蔓延による人流抑制は、2022年度も続いて自粛がスタンダードとなり、公園等に観測場所を得ること は事実上不可能であった。そのため、2022年度の初め、研究計画の大幅な見直しをはかり、コロナ禍であっても着実に進められる内容(手法の変更)に変更した。工程の組み直しにも時間を要したためである。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度の報告にも記したように、コロナ禍であっても着実に進められる内容に絞って進めるものの、当初の目標は変更せず、手法を変更している。具体的には、これまで本研究代表者が作成してきたモデルの修正に焦点を当て、将来気候下での動態予測の精度を上げるため、降水量変化時の感染症媒介蚊の動態に着目し、温度以外の気象要因の重要性を定量的に示すことを行なっている。この2022年度の方針を今後も継続し、当初計画の確実な遂行を目指す。
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