研究課題/領域番号 |
21K12237
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分63020:放射線影響関連
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
保田 隆子 日本女子大学, 理学部, 研究員 (40450431)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | ミクログリア / 放射線 / 脳内免疫細胞 / サイトカイン / 脳内炎症 / ApoE遺伝子 / Lplastin遺伝子 / マイクログリア / 免疫細胞 / 免疫暴走 / サイトカインストーム / メダカ胚 / 薬剤スクリーニング |
研究開始時の研究の概要 |
脳内免疫細胞であるミクログリアは、神経傷害性にも保護的にも働く諸刃の剣にたとえられる。神経傷害性に働くM1型ミクログリアはサイトカインを慢性的に放出する免疫暴走(サイトカインストーム)状態にあり、これを制御することが神経障害の治療の一助となることが明らかになっている。一方、神経保護的に働くM2型からM1型ミクログリアへ極性転換が起こるタイミングに関しては不明な点が多く、活性化したミクログリアの相反する2つの極性を選択的に制御することが主要な課題となっている。本研究ではライブイメージングが可能なメダカ胚をモデルに用いて、サイトカインストームを制御可能な薬剤、その投与時期に関する検証を行う。
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研究実績の概要 |
本研究では脳腫瘍放射線治療の副作用を軽減・回避する新規な治療法を提案するためのモデル生物として、脳のサイズが哺乳類と比較して大変小さく脳全体を俯瞰的に観察することが可能なメダカ胚を利用して検証を行った。脊椎動物に共通する基本的かつ普遍的なメカニズムを研究する上で、メダカはゼブラフィッシュと並ぶ有効な小型魚類モデルである。これまでの研究から、活性化したミクログリアが神経保護的に働くM2型から神経傷害性に働くM1型へ極性スイッチするタイムポイントは放射線照射 40 時間前後であろうと考えられ、本研究において活性化した神経保護的なM2型ミクログリアの役割を抑制することなく過剰かつ持続的な神経傷害性に働くM1型ミクログリアの活性化を制御可能な薬剤のスクリーニングを目指した。昨年度、活性化ミクログリアの減少は最大溶解濃度に相当するミノサイクリン濃度100uMでは薬効が全く認められなかったが、ミノサイクリン50uMではミクログリアの数には変化がなかったものの活性化ミクログリアの脳内に占める面積が非投与群と比較して有意に減少することが確認された。ミクログリアの定量化にはImageJを用いているが、精度に限界があるため新しい定量化の手法を開発中である。さらにミクログリアの活性化が脳内慢性炎症の要因であるかを検討するため、サイトカインIL1bをリアルタイムPCR法により定量化して検証した。その結果、Lplastin遺伝子の発現が上昇する照射24時間後にはIL1bの増加を確認したものの、ApoE遺伝子の発現が上昇する照射42時間後におけるIL1bの上昇は認められなかった。現在別のサイトカイン因子であるTNFaの定量解析をリアルタイムPCR法により行い、IL1bとの整合性を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では脳腫瘍放射線治療の副作用を軽減・回避する新規な治療法を提案するためのモデル生物として、脳のサイズが哺乳類と比較して大変小さく脳全体を俯瞰的に観察することが可能なメダカ胚を利用して検証を行った。脊椎動物に共通する基本的かつ普遍的なメカニズムを研究する上で、メダカはゼブラフィッシュと並ぶ有効な小型魚類モデルである。これまでの研究から、活性化したミクログリアが神経保護的に働くM2型から神経傷害性に働くM1型へ極性スイッチするタイムポイントは放射線照射 40 時間前後であろうと考えられ、本研究において活性化した神経保護的なM2型ミクログリアの役割を抑制することなく過剰かつ持続的な神経傷害性に働くM1型ミクログリアの活性化を制御可能な薬剤のスクリーニングを目指した。昨年度、活性化ミクログリアの減少は最大溶解濃度に相当するミノサイクリン濃度100uMでは薬効が全く認められなかったが、ミノサイクリン50uMではミクログリアの数には変化がなかったものの活性化ミクログリアの脳内に占める面積が非投与群と比較して有意に減少することが確認された。これら活性化したミクログリアの定量的な評価の精度を上げるため、in situハイブリダイゼーションにより確認されたミクログリアの画像をより正確に定量化する手法を民間会社との共同研究により現在構築中である。また脳内の炎症反応の指標となるサイトカインIL1bをリアルタイムPCR法により定量化してミクログリアの発現と照らし合わせたところ、Lplastin遺伝子の発現が上昇する照射24時間後にはIL1bの増加を確認したものの、ApoE遺伝子の発現が上昇する照射42時間後におけるIL1bの上昇を確認するには至らなかった。現在別のサイトカインTNFbの定量解析をリアルタイムPCR法により行い、IL1bとの整合性を検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
脳内の炎症反応の指標となるサイトカインIL1bの発現量をリアルタイムPCR法により定量化してミクログリアの発現と照らし合わせたところ、Lplastin遺伝子の発現が上昇する照射24時間後にはIL1bの増加を確認したものの、ApoE遺伝子の発現が上昇する照射42時間後におけるIL1bの上昇を確認するには至らなかった。ApoE遺伝子の発現が上昇する照射42時間後のミクログリアのWISHにより確認された形態は、膨潤して肥大した様相を示し明らかに活性化した状態であると考えられたものの、炎症反応は既に収束したフェーズである可能性が考えられた。もしそうであるならば、脳内炎症はApoE遺伝子の発現ではなく、Lplastin遺伝子の発現量で評価するべきである。これまで脳内炎症反応を抑制する薬剤の効果をApoE遺伝子の発現で評価してきたが、今後Lplastin遺伝子の発現で再評価をしたい。脳内炎症を示す別のサイトカイン因子であるTNFaの定量解析をリアルタイムPCR法により行い、IL1bとの整合性を確認したい。
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