研究課題/領域番号 |
21K12242
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分63020:放射線影響関連
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研究機関 | 大阪公立大学 (2022-2023) 大阪市立大学 (2021) |
研究代表者 |
吉田 佳世 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (30311921)
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研究分担者 |
森田 隆 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 客員教授 (70150349)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 宇宙放射線 / 染色体異常 / リスク評価 |
研究開始時の研究の概要 |
月面探査や火星探査など宇宙での長期有人活動が現実になりつつある現在、宇宙放射線の人体への影響は重要な課題である。我々は凍結したES細胞をISS内の冷凍庫に長期保管し、宇宙放射線の影響の解析を行い、DNA修復関連遺伝子を改変したES細胞で染色体異常が増加することを明らかにした。本研究では、宇宙サンプル並びに地上で粒子線を照射したES細胞の染色体異常を定量的に解析し、宇宙サンプルにつけた物理学的線量計(パドレス)の線量との関係を明らかにし、長期の宇宙滞在における線量計測定からの適正な生物影響への予測に役立てる。また、宇宙サンプルを培養し、染色体異常の修復を解析することによりリスク評価に役立てる。
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研究実績の概要 |
宇宙は放射線、微小重力、高真空など過酷な環境である。特に、長期滞在による人体への宇宙放射線の影響は人類の未来にとって重要な課題である。地上での放射線の被ばく線量は1年当たり約2.4 mSv、一方、国際宇宙ステーション(ISS: International Space Station)での被ばく線量は1日当たり0.5~1mSvで地上での約100倍に相当する(宇宙航空研究開発機構:JAXA)。さらに、火星への往復となると宇宙放射線の被ばくは、約660 mSvに達し、ヒトに重篤ではないが異常が現れる量となる。これまで、宇宙放射線の物理的線量が測定されてきたが、直接的な生物学的影響の測定は、低線量および低線量率の影響によって難しかった。宇宙放射線の生物学的影響を評価するために、ISSへ凍結マウス胚性幹(ES)細胞を打ち上げ、「きぼう」実験棟内の冷凍庫(MELFI)で最長1,584日間保管した。回収後、凍結細胞を解凍して培養し、それらの染色体異常を解析した結果、放射線に感受性の高いヒストンH2AXをヘテロ欠損したマウスES細胞では地上で保管された細胞と比較し、ISS内で保管した細胞の染色体異常の増加が検出できた。一方、細胞に取り付けられた受動積算型宇宙放射線線量計(PADLES)による放射線の線エネルギー分布から得られた宇宙放射線の線質係数は、本研究で得られた値に近いことが明らかとなった。この比較研究は、宇宙での人間の滞在の発がんや遺伝的影響などリスク評価の確実性を高めるに重要であると考えられる。今年度は、宇宙放射線の生物学的影響を経時的に解析するために、凍結マウスES細胞を培養し、培養時間により、染色体異常がどのように変化するか解析を行った。同時に、培養時間により、DNA修復関連遺伝子等の発現の変化についてRNA Sequencingにより解析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
国際宇宙ステーション(ISS)の「きぼう」実験棟内の冷蔵庫(MELFI)で、最長1584日保存したマウスES細胞の染色体異常と地上保存の細胞の染色体異常の定量的解析から、宇宙放射線による染色体異常の影響が陽子線の約1.54倍であることを明らかにし、物理学的測定とICRP60(国際放射線防護委員会勧告)で定めた線質係数からの計算による線質係数1.48とほぼ同じであることから、これまでの宇宙放射線の評価がほぼ正しいことを明らかにした。この研究は、Heliyon誌に掲載され、2022年のNASA Annual Highlights of Results in the International Space Stationに選出された。染色体異常の内容についてさらに比較すると、ISS内のMELFI冷凍庫で保存したH2AXヘテロ欠損マウスES細胞で検出された染色体異常について、約75%が不完全な染色体転移で、明らかな一か所の転移によるものが約25%であった。重粒子線などにより起こる特徴的な染色体の複雑な転移は見られなかった。これらの結果から宇宙放射線は低LETの陽子線照射に近い、すなわち線質係数が1に近いことと合致した。また、培養時間ごとの染色体標本を作製したが、サンプルを保管していた冷凍庫の故障のトラブルにより、再度、細胞を培養し染色体標本を作製しなおさなければならなかった。このことにより、FISH法を用いた経時的な染色体異常の解析に遅れが生じた。同時に、染色体異常に影響すると考えられるDNAの損傷を修復する遺伝子の経時的な発現変化についても解析するために、宇宙に1584日間MELFI冷凍庫で保存し宇宙放射線に被ばくした野生型ES細胞と地上で保存したES細胞について、地上で融解し培養後、経時的に遺伝子発現をRNA Sequencingにより遺伝子発現の解析を行った。
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今後の研究の推進方策 |
長期間宇宙空間に滞在する場合、宇宙放射線の被ばくによる染色体異常の計測、さらにはこの染色体異常がどのように回復するかを解明することはリスクの低減を予想する上で重要である。国際宇宙ステーション(ISS)の「きぼう」実験棟内の冷蔵庫(MELFI)で、最長1584日保存したマウスES細胞について、引き続き経時的に染色体異常の種類と頻度をFISH法を用いて解析することにより、宇宙放射線による被ばくの生物学的影響を検討する。このような染色体修復のメカニズムの解析は、低線量、低線量率で長期間放射線に被曝する慢性的被爆における生物学的影響の低減に寄与すると考えられるため、今後は、マウスES細胞を長期間培養し、経時的に染色体異常の種類と頻度についてFISH法を用いて解析することにより、宇宙放射線による被ばくの生物学的影響を具体的に検討する。
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