研究課題/領域番号 |
21K12245
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分63020:放射線影響関連
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研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
逆井 良 金沢医科大学, 医学部, 講師 (10549950)
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研究分担者 |
西 良太郎 東京工科大学, 応用生物学部, 准教授 (80446525)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | DNA二本鎖切断 / 転写 / カンプトテシン / DNAトポイソメラーゼ / 転写ストレス |
研究開始時の研究の概要 |
抗がん剤であるカンプトテシン(CPT)は、DNAトポイソメラーゼI(Top1)の異常な反応中間体をDNA上に蓄積させる。CPTは癌細胞も殺すが、副作用として神経症状が知られており、Top1異常中間体による転写ストレスが関係していると考えられるが、詳細は不明である。我々は、転写ストレス時にDNAが切れることを報告したが、その切断機構および修復機構はわかっていない。本研究では、CPTによる転写ストレス時におけるDNAの切断・修復機構を明らかにし、転写ストレスに対する細胞応答の解明を目指す。
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研究実績の概要 |
カンプトテシン(CPT)はDNAトポイソメラーゼI(Top1)の阻害剤であり、Top1がDNAに共有結合したTop1-DNA cleavage complex(Top1cc)を蓄積させる。Top1ccは転写を強く抑制してストレス応答を引き起こすが、その際に転写と関連したDNA二本鎖切断(transcription-coupled DSB:tc-DSB)を生じることが分かっている。しかし、tc-DSBの発生および修復機序は不明である。我々はDNAヘリカーゼであるRecQL5がtc-DSBの発生を抑制することを見出しており、RecQL5に注目した解析から、tc-DSBの生成及び修復機構を解明することが本研究の目的である。tc-DSBは神経細胞のような増殖していない静止期の細胞でも生じるDNA損傷であり、本研究の成果は神経疾患の病態解明につながることも期待される。 これまでに、転写共役ヌクレオチド除去修復(TC-NER)およびRecQL5がtc-DSB生成に関わることを見出しており、DNAヘリカーゼで解かれるようなDNAの二次構造が発生し、その構造がtc-DSBの生成に関わると考えられる。TC-NERに関しては、CSBおよびCSAのノックアウト細胞を作成し、その関与を確認した。DNAの二次構造としては、DNA-RNA hybridを持つR-loopや、グアニンが多い領域で生じるグアニン4重鎖(G4)構造等を想定した。これまでのところ、R-loopに関しては、tc-DSBの発生に顕著な影響はみられていない。G4構造に関しては、G4検出系の条件検討が難航しており、具体的な影響については検証中である。tc-DSBの修復経路に関する研究としては、DSB修復因子LIG4の関与が示唆されたが限定的であったため、現在はLIG4以外の因子の特定を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでの解析で、CPT処理時に特徴的な53BP1のfoci形成が転写依存的に観察されることがわかっており、この53BP1 foci をtc-DSBの指標として解析を進めている。tc-DSBを引き起こす可能性のあるDNA二次構造については、RNaseHがDoxycyclinで発現誘導される細胞を作成し、53BP1 fociへの影響を検証したが、顕著な影響は見られず、R-loopの関与は現在までのところ観察できていない。G4構造については、特異的抗体を用いた免疫染色によって評価しようと、染色条件の検討を重ねているところであり、具体的なデータの取得には至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
tc-DSBを引き起こすDNA二次構造については、引き続きG4構造についての解析を進める。G4構造の検出系が出来上がり次第、RecQL5のG4構造への影響を検討する。また、G4構造を安定化するPyridostatinを用いて、CPTによるtc-DSB生成への影響について解析を行う。TC-NERのtc-DSB 発生への関与については、TC-NER経路のDNAヌクレアーゼであるXPGやXPFについて解析を行う予定である。 LIG4ノックアウト細胞の解析から、少なくともNHEJ経路がtc-DSBの修復に関わることが示唆されたが、その寄与は限定的であり、別の因子の関与も考えられる。そこで、別の修復経路にも解析範囲を広げて、修復経路の同定を試みる。さらに、tc-DSBは神経細胞のような分裂をしない細胞でも生じると考えられ、神経障害との関連も予想されることから、神経細胞を用いてtc-DSBとRecQL5の関連についての解析を行い、神経細胞運命への影響を検討する予定である。
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