研究課題/領域番号 |
21K12257
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分63030:化学物質影響関連
|
研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
蒋池 勇太 東京女子医科大学, 医学部, 准教授 (70386556)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
|
キーワード | アクリルアミド / ゼブラフィッシュ / 食の安全 / 食事による曝露 |
研究開始時の研究の概要 |
アクリルアミドは、さまざまな毒性が懸念されている一方で、工業原料や環境保全資材に広く用いられているのみならず、食品中で高温加熱調理中に生成されることが知られている。そこで、本研究では、身近な食品に含まれる程度の微量なアクリルアミドを、食を介して日常的に長期間摂取することにより、どのような健康影響が生じるのかについて、適切な濃度と曝露方法で解析し明らかにすることを目的に、モデル動物としてゼブラフィッシュを用い、神経行動、器官毒性、次世代影響に絞って検討する。本研究には、アクリルアミドという身近にある健康リスクの正確な評価を可能にし、対策を講じるための礎となる成果が期待される。
|
研究実績の概要 |
アクリルアミドは、さまざまな毒性が懸念されている一方で、工業原料や環境保全資材に広く用いられているのみならず、炭水化物を多く含む食品の加熱調理中に生成されることが知られている。しかし、食品に含まれる程度の低濃度での毒性についての実験的研究は、フライドポテト中のアクリルアミド含量として過去に報告のあった量に相当する低濃度のアクリルアミドを含む餌を約1か月間ゼブラフィッシュの成魚に与えることにより、種々の毒性が脾臓で発現するという、申請者らによる報告のみである。そこで、本研究では、人々にとって最も主要なアクリルアミドの曝露源と考えられる身近な食品に含まれる程度の微量なアクリルアミドを、食を介して日常的に長期間摂取することによりどのような健康影響が生じるのかについて、モデル動物としてゼブラフィッシュを用い、検討に値する適切な濃度と曝露方法で解析し明らかにすることを目的として、①神経行動に影響はあるか、②脾臓以外の器官毒性はあるか、③次世代影響はあるか、に絞って検討する計画を立案した。 本研究計画の2年目にあたる本年度では、ゼブラフィッシュへのアクリルアミドの給餌曝露を開始した。受精後6か月の成魚に対して、これまでに食品中のアクリルアミド含量として報告されている最大量(185 mg/kgフライドポテト、ドイツからの報告)に相当するアクリルアミドを含むアルテミア幼生を平日1日1回与えている。給餌曝露期間は6か月間を予定しており、現在その終盤にかかっている。曝露と並行して、当初曝露終了後に行う予定であった明視下での全般的な行動解析について、あくまで予備実験的に水槽全体を記録・観察する形で行っている。それにより、定量化はしていないものの行動に差異が生じ始めている可能性を示唆する徴候が観察された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年春に現在の校舎に移転後、同11月より新しい飼育施設でゼブラフィッシュの飼育・繁殖を開始したが、飼育設備の運転が安定するまでに予想をはるかに上回る時間を要した。その間、施設・設備の不安定性に起因して、計画的な継代の失敗などの問題が多数発生し、繁殖と飼育個体数を増加させることに難航した。そのため初年度は研究の進捗にやや遅れが生じた。その後、状況はやや好転したものの、期待通りとは言い難い状況が続いており、初年度に生じた遅れの影響を本年度内に回復できるまでには至らなかった。現状、曝露実験に用いるための個体数を潤沢に確保するのは困難であること、また、本研究の端緒となった先行研究において本研究に還元できる知見が得られたことから、実験計画の部分的な見直しを行ったうえで進めている(下記)。現時点で給餌曝露の終盤に差し掛かっており、総じてやや遅れているの範疇に収まると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の実験計画では、通常の給餌条件下で受精卵から飼育したゼブラフィッシュに対して、受精後3か月以降順次、6か月、9か月、11か月からアクリルアミド含有アルテミア幼生を与え、給餌曝露期間の異なる群を作成し、受精後12か月が経過した時点で各群に対して行動解析を行う予定であった。しかし、先述の通り、曝露期間の異なる複数の群について実験を複数回繰り返し行うための個体数を確保するのが困難な状況であることから、受精後6か月から給餌曝露を開始し、6か月間曝露する条件に絞って以降の研究を進めることとする。曝露終了後、まずは通常のビデオカメラを用いてチャンバー内での摂餌積極性と摂餌成功率の記録を行う。また、明暗視ビデオカメラを用いて水槽全体を複数回録画し、行動を記録する。録画された映像から行動全般の解析および神経行動学的研究で標準化された各種パラメーターについて解析を行い、各種行動に影響が生じるか検討する。その後、曝露群の半数は器官毒性の組織学的・分子生物学的解析に用い、残りの半数を用いて繁殖を行い、次世代影響について検討する。
|