研究課題/領域番号 |
21K12279
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分64010:環境負荷およびリスク評価管理関連
|
研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
鈴木 保任 金沢工業大学, バイオ・化学部, 教授 (20262644)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
|
キーワード | 簡易分析 / 環境分析 / 比色分析法 / 流れ分析法 / 簡易分析装置 / 高感度分析 / スマートフォン / スクリーニング / 固相抽出 |
研究開始時の研究の概要 |
環境汚染物質に限らず、様々な物質の濃度に関する情報を正確に得られる分析装置が必要とされている。高価で高性能な装置の開発は重要であるが、一方で安価で簡便な装置があれば、高性能な装置を使って費用の掛かる分析が必要かどうかを事前に判断することができる。本課題では、スマートフォンやタブレット端末といった情報機器を活用することで、このようなスクリーニングに利用できる安価でありながら優れた性能を有する分析装置の開発を目的としている。既存の色変化を利用する分析法への応用と、分析の目的とする物質の抽出や濃縮といった前処理と分析試薬との反応を自動化できる装置の開発を目指している。
|
研究実績の概要 |
本研究では、環境分析や化学教育の現場などで利用できる、簡易な分析法及び分析装置の開発を目的としている。 当初の計画では高感度なヒ素の定量法として、モリブデンブルー法で発色したモリブドヒ酸をメンブレンフィルターに捕集し、反射光の強度変化により測定することを検討していた。しかしながら、発色反応から捕集までの操作が煩雑であり、高い感度が得られるものの測定に時間が掛かり、また測定結果のばらつきが問題となった。そこで今年度は、流れ分析法による定量を試みた。流れ分析法は測定対象となる試料溶液や反応試薬溶液をポンプで送液し、それらを合流して反応させ、さらにそのまま検出までを行う方法である。モリブドヒ酸の吸光度を測定する赤外線LEDと、バックグラウンドの吸光度を測定する青色LEDで同時に測定し、吸光度を差し引くことで送液にともなうノイズを低減でき、フィルター捕集法と比べて簡便な操作を実現できた。一方でヒ素の環境基準値である0.010 mg/Lレベルの定量は困難であり、さらなる感度の向上が必要である。またヒ素を酸化・還元することで、ヒ素の3価と5価、ヒ素と同時に発色するリンを分別定量できる。この条件を検討したところ、ヒ素を3価に還元すること及び5価に酸化することができた。しかし、流れ分析法では酸化、還元に利用する試薬の影響で測定結果に誤差を生じることがわかった。 また昨年度試作した、白色LEDを光源に用いる小型、簡便な比色計については河川水試料中の亜硝酸及びリンの定量への応用を試みた。手のひらサイズでわずかな部品点数からなる装置であるが実用的な性能を有していた。複数台を製作し、高校生の体験入学での分析実験に用いたところ、機差もなく安定した測定が可能であった。また、流れ分析法の検出器として利用することも検討した。ポンプはヒ素の定量に用いたマイクロリングポンプを使用し、亜硝酸の定量に成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヒ素の高感度分析については流れ分析法により操作の簡便化は実現できたが、引き続き感度の向上と酸化、還元反応と組み合わせたときの妨害の影響の除去を解決しなければならない。これらの問題はいずれも流れ分析システムの安定性を向上することで解決できるが、ポンプの改良、検出器の改良など検討の必要な項目が多い。平行して他の分析対象への応用としてホウ素のアゾメチンHによる吸光定量法への応用を進めている。こちらもヒ素と同様に、装置の不安定性が感度に影響することがわかった。以前から応用している亜硝酸やアンモニアなどでは十分な性能が得られている。しかしヒ素やホウ素の定量では高濃度な酸や着色した試薬を用いていて、ポンプの送液のむらが測定した信号のノイズとなる。これを解決すべく、ポンプ及びバルブを制御できるシステムの試作を進めているが、完成に至っていない。 一方で簡便な比色計は、性能の確認と実際に高校生の実験に展開までできた。今後の課題としては流れ分析法との組み合わせにおいて、高価な部品であるポンプやバルブをより簡便なものに変更することと、現時点ではPCで測定データを取得しているが、本研究で目的としているスマートフォンでの取得を実現することがある。Pythonを用いたプログラムでの通信は実現できており、今後Androidへの移植を行う。
|
今後の研究の推進方策 |
研究期間を1年延長したので最終年度となる。ヒ素などの流れ分析法への応用については、昨年度に続きポンプとバルブの制御機能の追加を進める。ポンプを反応中に停止させることで、目的成分と試薬の反応時間を増加させて感度を上昇できる。測定の途中でポンプを止めることで、送液ノイズが原因となる感度の低下も軽減できる。流路中にソレノイドバルブを設けることで試料及び試薬溶液を測定の時のみ流すことができ、省試薬化を実現できる。機能を実装した後、ヒ素及びホウ素の定量に適用し、バルブの切り替えやポンプの停止時間等の最適条件を検討する。 カメラを利用した色彩計測法については、フィルター捕集法の実用化に手間取っていることから、溶液試料の測定を対象として進める。簡易な小型比色計の応用と同様に、環境教育や学生実験などに展開すること目指す。また比色計については流れ分析法への応用を引き続き検討する。亜硝酸窒素の定量には応用できることを確認できたが、リンやクロム(VI)など他の成分の分析に応用し、他の装置と分析性能を比較する。さらに、ソレノイドバルブをインジェクションバルブの代わりに用いれば、試料導入を半自動的に行えるようになるとともに、装置のコストをかなり低減できるようになるので、装置の改良を検討する。
|