研究課題/領域番号 |
21K12288
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分64020:環境負荷低減技術および保全修復技術関連
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
木村 成伸 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 教授 (90291608)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | シアノバクテリア / フラビン酵素 / 電子伝達 / バイオレメディエーション |
研究開始時の研究の概要 |
シアノバクテリアは光エネルギーを利用した持続可能なエネルギー生産や物質変換を担う生物資源として注目され,バイオ燃料生産やバイオレメディエーション(生物学的環境修復)への応用を目指した代謝工学的研究が進められている。このような研究においては,シアノバクテリアの光合成(光化学)系で生じる電子をいかに効率的に異種生物由来の代謝系に供給できるかが重要である。本研究ではシアノバクテリア特有の新奇ジフラビン結合ジスルフィド酸化還元酵素(DDOR)の電子伝達機構と生理的役割を解明し,異種生物由来の代謝系への細胞内電子供給体としての有用性を検証することにより,シアノバクテリア応用の可能性の拡大をねらう。
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研究実績の概要 |
1. 前年度に引き続きシアノバクテリア由来ジフラビン結合ジスルフィド酸化還元酵素(DDOR)分子中にある2つのFAD(FAD1,FAD2)の分子内電子伝達における役割とその制御機構を解明するために変異導入型DDORの作製を進めた。前年度までに構築済みの大腸菌を宿主とした遺伝子組換え型変異体遺伝子の高発現系を用いて,(i)電子伝達機能制御への関与が示唆されているDDORに特徴的なC末端ペプチドを欠失した変異体,および(ii)1電子還元型DDORの安定化と電子伝達機能への関与が示唆されている156位アスパラギン酸残基置換変異体を精製した。これらの変異体は2つのFADの特異的結合や分子内電子伝達における役割を探る上で有用と考えられる。 2. DDORの分子内電子伝達機構を解析する上で有用と考えられるFAD1のみが結合した1FAD-DDORの調製を,野生型apo-DDORに結合させるFADの量比の調整と,4か所のFAD2結合部位への系統的変異導入によって試みた。前者の方法では1FAD-DDORは得られず,2分子のFADが結合したholo-DDORのみが得られた。後者の方法でも1FAD-DDOR変異体は得られず,apo-DDORとholo-DDORしか得られていない。これらの結果から,野生型apo-DDORへの2つのFADの結合の共同性が高いことが明らかとなった。また,stopped-flow法による野生型アポDDORへのFADの結合過程の解析により,野生型アポDDORへのFADの結合が,速い相とそれに引き続く遅い相の2層からなることも明らかとなった。apo-DDORとholo-DDORとでは,2つのFADのイソアロキサジン環近傍のループ構造に差があることがX線結晶構造解析により明らかにされており,このループ部分が2つのFADの結合の高い共同性を引き起こすことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では,本課題最終年度の令和5(2023)年度内にDDOR変異体タンパクを精製して,電子伝達機能と立体構造の変化の解析行い,結果を取りまとめる予定であった。しかし,計画していた一部の変異体遺伝子の作製,確認と大量発現系の構築に手間取った。また,変異体の精製に用いる器材の誤作動や,電子伝達機能解析に用いる必要なStopped-flow装置の劣化した光源ランプの入手,交換に予想外に時間がかかったため研究課題の進捗が遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
本課題の1年間の期間延長承認が認められた令和6(2024)年度は,遅れていたDDOR変異体遺伝子の大量発現系の構築とDDOR変異体の精製,電子伝達機能解析を行うとともに,引き続き1分子FAD結合型DDORの作製と電子伝達機能解析を試みる。DDORに特徴的なC末端領域7残基を欠失した変異体およびFAD1の電子伝達中心近傍に位置するアミノ酸残基置換変異体,DDORに特徴的なFAD2結合部位アミノ酸残基置換変異体について,stopped-flow法などを用いて還元に伴う吸収スペクトル変化とその速度論的解析を行うとともに,電子スピン共鳴(ESR)を用いた2つのFADの1電子還元セミキノン状態の解析を試みる。これによりDDOR に特徴的なC末端領域や, 2つのFADの分子内電子伝達制御への関与とそれぞれの役割,FADの電子伝達中心近傍のアミノ酸残基の分子内電子伝達制御への関与と役割を明らかにする。また,酸化型および還元型を含めた各変異体の結晶化と立体構造解析も引き続き試みる。得られた結果を踏まえてDDORのシアノバクテリア細胞内での生理的役割等について考察し,結果を取りまとめる。
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