研究課題/領域番号 |
21K12321
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分64040:自然共生システム関連
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研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
駒井 克昭 北見工業大学, 工学部, 教授 (90314731)
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研究分担者 |
中山 恵介 神戸大学, 工学研究科, 教授 (60271649)
中下 慎也 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 助教 (90613034)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | ノンポイントソース / 環境動態解析 / 起源追跡 / 流域特性 / 流出モデル / 非特定汚染源 / マーカー物質 / 環境動態解析モデル / 多次元情報 / 森里川海 |
研究開始時の研究の概要 |
「森里川海」にわたる流域~沿岸生態系の保全は,高度経済成長期以降に低下した海域の生産性の改善の他,地域における気候変動緩和・適応策として期待される.このため,陸域からの栄養物質の流入負荷量の高度な管理が必要であるが,従来型の環境動態解析手法では様々な流域からの流入負荷の発生源を識別することが難しい.そこで,本研究では複数の溶存有機物と微量金属元素を発生源の識別に用いる物質とした多次元の物質起源情報を開発し,従来法では扱えなかった量の情報を最大限利用することで発生源の識別精度を向上させ,拡張性の高い予測モデルに組み込むことで,流域からの負荷量管理に活用可能な新しい環境動態解析手法を提案する.
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研究実績の概要 |
森里川海にわたる流域~沿岸生態系の保全は豊かな自然と持続可能な循環型社会の構築に寄与するものと考えられる.近年では,海域への過剰な流入負荷対策は進み,N,Pの環境基準の達成率は改善されたが,海底に蓄積された大量に栄養塩を含む有機泥は貧酸素水塊や栄養塩の溶出の原因となり,海域の生態系や物質循環過程は劣化していることから,きれいで豊かな海を取り戻すには順応的な流域の栄養塩管理も必要である.都市域からの表面流出,過疎化や高齢化による里地・里山の荒廃,農業の大規模化や耕作放棄,気候変動に伴う湿地の植生変化や湖沼の富栄養化等は,面源負荷の質と量に大きく影響を及ぼすと考えられることから,流域の面源負荷対策を評価・予測できる拡張性の高い環境動態解析モデルの構築は喫緊の課題である.本研究では,自然・人為由来の様々な物質の起源を表すマーカー情報(MDF)を開発し,森里川海をつなぎ海洋生態系の栄養物質になりうる物質の由来を追跡する環境動態解析手法を構築する.今年度においては,森林,湿地,畑地,牧草地,等の様々な土地利用が集水域に存在する小流域と流域全体での調査データを取得するとともに,栄養塩類,CDOM,REE,および金属元素の面源負荷量の応答特性から面源負荷発生モデルを定式化した.また,土粒子の界面化学特性の指標化のため,有機元素(CHNS)分析等の測定を行った.これらで構成したエンドメンバーの多次元情報を参考にして統計的に有意なマーカー物質を選定してMDFを構成した.OPDMに栄養塩類とMDFをインスタンス(モデル上の具体的な物質)として組み込んだ.なお,オブジェクト指向設計により取り扱う情報量の増大に対する開発コストを大幅に節約可能した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度においては,14の希土類元素を含む40種の金属元素,およびフルボ酸などのCDOMのEEMsについて定量したデータをMDFとしての統計的な有効性を確認する手法を確立した.さらに,過去の定量データと比較できる同時期の質の高い水質データセットを現地観測により取得した.それらの比較により,経年的な汚染物質の状況の変化についても検討できるようになった.特に流域全体では傾向が変化しないものの、下流域ほどMDFが変化することが明らかになった.一方,高精度化されたモデルにより水域でのマーカー物質の追跡について検討を行い,マーカー物質を用いた物質収支の検討手法の構築を試みた.起源が不明な場合においては機械学習が有効であることも明らかになったことから,本研究のアプローチの有用性が示唆された.流域での物質輸送モデル(OPDM)へのMDFの組み込みに向けてモデルの拡張に関する本格的検討を行った.面源負荷発生サブモデルに関しては,昨年度に釧路川本川及び支川における流域特性と流出特性についての考察を進め,流域特性に配慮する必要があることが確認できたが,今年度は追加的に融雪期に関する検討を進めることが出来た.融雪期におけるデータセットは,今後,長期的予測を行うための見当に活用する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに構築した面源負荷発生サブモデルをOPDMに組み込むことで,釧路川全域から河口域に流出する栄養塩類とMDFの負荷量についてシミュレーションを行い,起源追跡を行う.この際,これまでに収集したデータセットを利用する.また,既往の積分型の概念モデル(駒井ら,2018)による起源追跡の結果と比較することでモデルの検証と相互のモデルの適用範囲の検討を行う.さらに,MDFを用いた統計学的な起源追跡および機械学習によるモデルチューニングを想定したOPDMの栄養塩等の負荷量変化に対するマーカー物質の負荷量の感度解析も実施する.研究が順調に進行していることから,豊かな森里川海の水環境を保全するための栄養塩管理の社会実装に向けて,流域から沿岸域にわたる具体的な現地を対象として流域から沿岸域におけるMDFを組み込んだOPDMによる解析を進める.
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