研究課題/領域番号 |
21K12337
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分64050:循環型社会システム関連
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
中久保 豊彦 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (70648766)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 下水道区域の縮小 / 窒素除去型浄化槽 / 汚泥処理機能統合 / 物質収支解析 / 温室効果ガス排出量評価 / 事業コスト評価 / 環境配慮型浄化槽 / 温室効果ガス排出量 / 生活排水処理インフラ / 費用関数 / 経済性評価 |
研究開始時の研究の概要 |
我が国が直面する急激な人口減少への対応に向け,生活排水処理インフラの更新にあたり下水道処理区域の縮小が検討課題となる.本研究では下水道処理区域の縮小に向けた関連計画を対象として,経済性,環境性の視点から縮小が優位となる基準を導くための支援モデルを開発する.関連計画の一方策として市町村設置型の共同浄化槽を対象とし,下水道区域を既設下水管渠の一部活用と共同浄化槽の整備による共同浄化槽区域へと移行させ,最終的には個別浄化槽へと完全移行させる段階的移行モデルの提案とその有効性を分析する.今後の汚水処理適正化に向け,地域特性等を踏まえ下水道処理区域縮小の判断基準を明らかにすることを目指す.
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研究実績の概要 |
モデル地域(2015年度の人口70,050人、うち下水道区域人口40,539人)を対象に、設計した生活排水処理インフラ再編計画に対するシナリオ解析を行った。2015~2030年度にかけて、排水処理系では汚水未処理人口の合併処理浄化槽人口への転換、下水処理場における標準活性汚泥法の硝化促進・脱窒運転への改修を対象とし、汚泥処理系では下水処理場でのし尿・浄化槽汚泥の受入と嫌気性消化・バイオガス発電の導入を適用した。2030~2050年度にかけて、排水処理系に対して下水道既整備区域の低密エリアにおける浄化槽人口への転換、浄化槽人口全体に対する合併処理浄化槽の汎用品から窒素除去型(循環、流量調整機能を保有)への更新を適用した。高度処理(窒素除去)を水質総量規制ではなくCH4/N2O排出削減の視点で捉え、プロセスからの排出に加え、処理後排水の自然界分解に伴うN2O排出もバウンダリーに含めた。温室効果ガス(GHG)排出削減の視点では、脱炭素化の進行により系統電力のCO2排出係数が低下していくことを与件として、電力消費量が増加してもN2O排出の削減を優先することの有用性を検証した。評価の結果、GHG排出量は2015年度の5,892 t-CO2eq/yに対して、2030年度(人口55,545人)には4,067 t-CO2eq/yまで低下する。2050年度(人口37,327人)には1,427 t-CO2eq/yとなり、排出削減の道筋を示した。 これまで総量規制で論じられてきた窒素除去策を、より上位の排水処理系における更新計画と組み合わせることで、生活排水処理インフラ全体のGHG排出削減に大きく寄与することを明らかにした。共同浄化槽含め、人口減少に伴い排水処理系に占める浄化槽の比率が高まる中、浄化槽でのCH4/N2O排出削減を促進するアプローチの有用性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度(2年目)の研究計画でコンセプトとして掲げた、生活排水処理インフラ再編とGHG排出削減の複合計画について、シナリオ解析により具体化した。 人口減少の進行に伴い、排水処理系の設備が有する処理能力余剰は高まるが、下水処理場における標準活性汚泥法の硝化促進・脱窒運転への改修、ならびに合併処理浄化槽(共同浄化槽含む)における窒素除去型(循環、流量調整機能を保有)の比率向上を通して、反応槽の余剰性をCH4/N2O排出削減に寄与させる形で活用することができる。2050年度に向け系統電力のCO2排出係数が低下していく条件を2ケース(傾向延長、野心的目標)設定し、GHG排出量に占めるCO2(電力)とCH4/N2Oの排出割合を時間軸上で検証した。一般的に、排水処理設備での電力消費とCH4/N2O排出はトレードオフの関係にあり、GHG総排出量で排出削減を図るにあたり、その優先性を検証する必要がある。本研究では、CH4/N2O排出削減を優先した設備改修を進めることの有用性を示した。 人口減少に伴い進行する下水道既整備区域の低密化に対して、共同浄化槽設置事業を通した浄化槽人口への転換について、計画論を具体化した。GHG排出量を指標とした場合、低密化エリアにおいても下水道人口として排水処理を継続する方が排出量は小さくなる評価結果となったが、事業コストの観点からは浄化槽人口への転換が求められる。低密化が著しく進行する下水道既整備区域の撤退判定について、その判定基準を具体化し、下水道と浄化槽の分担のあり方を検証した。
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今後の研究の推進方策 |
全国スケールで下水道既整備区域の撤退エリアを判定し、2050年に向けた汚水処理方式別人口(下水道人口と浄化槽人口の分担構造)を予測する。下水道区域も含めて人口減少が進行していくことに対応するため、下水処理場と浄化槽の双方に対して、適切なダウンサイジングとCH4/N2O排出抑制の両立を図る更新計画を具体化し、シナリオ解析を行う。GHG排出削減の視点では、系統電力のCO2排出係数の低下を踏まえて、CO2(電力)とCH4/N2O排出の最適化を図る排水処理設備の更新・維持管理シナリオを設計する。 下水道既整備区域の撤退と浄化槽人口への転換に向けた諸施策については、事業コストの観点から、諸条件・要素に対する感度解析を行い、地域特性を踏まえた合理的な判定基準を提案する。
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