研究課題/領域番号 |
21K12356
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分64060:環境政策および環境配慮型社会関連
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
竹濱 朝美 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (60202157)
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研究分担者 |
歌川 学 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (40356572)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 電力需給解析 / 石炭火力廃止 / IEA Net Zero / 風力発電 / 接続検討申込量 / 出力制御 / 原子力発電 / 再エネ電力60% / 太陽光発電 / 広域送電 / 地域間連系線 / デマンドレスポンス / 電力需給 / 石炭発電廃止 / 原子力発電停止 / 再生可能エネルギー / 需給解析 / 炭素税 / 電気自動車 |
研究開始時の研究の概要 |
(1)再生可能電源に関する長期シナリオを作成する.地域別ボトムアップによるデマンドレスポンス可能量,石炭火力削減を考慮し,再生可能電力比率で2030年50%,2040年80%の実現可能性を考察する.(2)火力発電機の起動停止‐経済負荷配分(UC-EDC)の簡易モデルにより,蓄電池,電気自動車充電とデマンドレスポンスを考慮して,需給を推計する.(3)地域間連系線を増強し,再生可能電力を優先的に広域送電する場合の需給を推計する.再エネ電力比率,燃料輸入費用,出力制御率,炭素税費用,容量市場追加費用を推計する.(4)再エネ電力と火力発電の発電量について,地域別・時間別の供給量推定を行う.
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研究実績の概要 |
①IEA Net-Zeroシナリオに準拠して,西日本の電力需給について,2030年に,石炭火力の廃止と再生可能電力比率(RE比率)60%の達成可能性を検討した。発電機起動停止-経済運用(UC-EDC)の簡易モデルを改良した。各送電管区の在来電源を22種に区分し,1時間単位の平均燃料費の最小化を目的関数として,Matlab optimization tool box線形計画法により,各電源の発電量と需給を解析した。 ②(a)西日本で,Highケース(PV65GW,風力31GW),TSO-Highケース(PV52GW,風力9GW)を比較した。Highケース導入量は,風力の接続検討申込量の50%を連系する。TSO-Highケース導入量は,系統ワーキング委員会における送電会社の「1.5倍ケース」である。(b)連系線運用容量は,2030年の長期運用容量から上積みして,九州-中国,中国-関西を5.5GW,四国-関西を2.8GWに拡張する。蓄電池は揚水発電定格出力*25%*4h*4日の容量とした。 ③(a)九州地域のHighケース(原子力無し)では,風力を11GW導入した結果,RE比率70%で目標を達成した。TSO-Highケース(原子力有り)では,RE比率51%で目標に届かず,出力制御率は25%となった。(b)中国地域でも,Highケース(原子力無し)では,RE比率73%で目標を達成した。TSO-High(原子力有り)ケースでは,RE比率48%で目標に達せず,需給ひっ迫状態になった。(c)西日本でHighケースの規模で風力発電を導入すれば,石炭火力を廃止しても,RE比率60%達成の可能性がある。原子力稼働は柔軟性不足になり,出力制御率を数%ポイント悪化させる。西日本ではPV出力に規定された残余需要になるため,朝夕の需要ピーク時に,需要削減(下げデマンドレスポンス)が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね,順調に進展している。コロナ対策の関係で,海外調査には行けなかったが,反面,国内の再エネ電源の導入事例について,ヒアリング調査が実施できた。 需給解析モデルの改良については,残余需要の時間カーブについて,電力管区別,季節別の偏差の分析が進んだため,電気自動車の充電とヒートポンプ加温を柔軟性に活用する場合の時間プログラムの改良が進んだ。2022年度は主に西日本について作業したことで,太陽光発電による残余需要の地域別,季節偏差の理解が進んだ。この結果,蓄電池の充放電やデマンドレスポンス(DR)の投入について,時間プログラムの改良ができた。 部門別(家庭,業務,産業製造業)の電力需要のサンプルデータと,都道府県別エネルギー消費統計を活用して,部門別(家庭,業務,産業製造業)の電力需要の年間値から,月間値,日間値を推定する作業を進めた。これは,残余需要の水準に応じて,上げデマンドレスポンス,下げデマンドレスポンスの部門別の時間プログラムの基礎作業になった。2023年度は,この作業に基づき,DRの必要量の算定作業を行う。 本モデルは,1時間単位の燃料費最適化計算であるため,1時間単位の電力量MWhのバランスについて,エネルギー制度の制度改革を反映したセクターカップリングの視点を組み込んだ需給解析を行う点に特徴がある。この点で,部門別のDRの必要量,可能量,時間別プログラムのによる投入量の推計は,重要な作業となる。2023年度に,重点的に作業を行う。
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今後の研究の推進方策 |
①西日本,東日本の広域エリアについて,前日段階での供給計画の概算を行うモデルの改良を行う。蓄電池容量とデマンドレスポンスについて,広域エリアでの必要量の概算,各電力管区への送電量の概算を行う。 ②風力発電について,各送電会社には,相当量の接続検討申し込み量が提出されている。これを考慮して,再生可能電源の接続検討申込量の50%が系統連系するものとして,広域エリアでのHighケースの導入目標量の見直しを行う。電気自動車(EV)の導入量を見直す。乗用車に加えて小型トラックについても,EV導入量を算定する。 ③部門別のデマンドレスポンスの時間プログラムを作成する。西日本,東日本エリアについて,Highケース,TSO-Highケースの再生可能電源導入量について,残余需要の時間別曲線を分析し,上げDR,下げDRの投入時間プログラムを作成する。 ④(a)産業(製造業,農林水産産鉱建設),(b)業務サービス,(c)家庭の部門別に,電力消費量MWhの年間値,月間値,日間値を推計する。さらに,家庭部門,および業務部門の時間別電力消費量サンプルデータに基づき,部門別に,時間別需要曲線のモデルケースを作成する。家庭,業務,産業の各部門のデマンドレスポンス(上げDR,下げDR)の時間プログラムの簡易モデルを作成し,デマンドレスポンスを投入する場合の需給バランス効果を概算する。蓄電池容量の一定割合について,上げDR,下げDRを投入する場合の柔軟性の効果を分析する。 ⑤石炭火力廃止,原子力発電停止の場合の2030年の電力需給について,西日本,東日本の広域エリアについて,再生可能電源比率60%の達成可能性,再生可能電力の出力制御率,発電量1kWhあたり平均燃料費と炭素税額,蓄電池とデマンドレスポンスの必要量を推計する。研究のまとめを行う。
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