研究課題/領域番号 |
21K12359
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分64060:環境政策および環境配慮型社会関連
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
堀 靖人 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 研究専門員 (80353845)
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研究分担者 |
大塚 生美 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 研究専門員 (00470112)
高橋 卓也 滋賀県立大学, 環境科学部, 教授 (20336720)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 生態系サービス / 森林に対する自然保護契約 / 森林施業 / PES / Northwest Forest Plan / 樹木一兆本法 / 森林環境税 / 森林 / 林業経営 / 環境サービスに対する支払い |
研究開始時の研究の概要 |
持続的な森林経営を確実にするため、森林から提供される環境保全サービスを評価しその対価を支払うことが必要である。だが、その貨幣評価はむずかしい。環境に配慮したことで掛かり増しになった費用に対する支払い金額と得られた環境保全効果との間にはギャップが存在する。そこで、環境支払いの国内外の実施例の分析からこのギャップをどのように認識しているのか、ギャップを埋めるためにどのようなことがなされているのか、資金の支援者に対する説明責任をどう果たしているのかを明らかにする。それらにより森林に対する環境支払いの制度化のための要件を明らかにし、この制度の実施主体と想定される日本の市町村に対して提言を行う。
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研究実績の概要 |
ドイツ各州政府のwebサイトで森林に対する自然保護契約制度について調べた結果、明確に実施している州がバイエルン州、ニーダーザクセン州、ヘッセン州であることが分かった。この助成制度の財源は、基金化と一般財源からの支出の2タイプに分けられた。助成対象は私有林であることは共通しており、助成メニューには各州で特色があるものの類似点も見られた。 国内で同様の制度の導入を検討していた町役場から聞き取り調査した。その結果、町役場内部の異論から実施には至らず、その理由として、森林に何ら施業を行わないこと(何もしないこと)に対して助成することはむずかしいという考えからであった。 日本におけるPESまたは類似制度への森林所有者および基礎自治体の取り組み状況についてのアンケート調査結果を入手し、その統計的分析を行った。所有者の年齢、所有目的や基礎自治体の私有林人工林面積、農林業の比重が取り組みの積極度合いと相関していることが分かった。さらに、アメリカのPES事例のデータベースを入手し、作成者と連絡を取り、分析にあたっての協力を依頼した。 マダラフクロウの保護を巡り,アメリカ連邦有林の伐採制限に至ったNorthwest Forest Plan(以下、プラン)が開始され四半世紀となる。生態系サービスの観点からみたプランの評価について文献等既往資料により整理した。プランでは伐採収入や所得税の減収に対して林業生産者や自治体への損失補償がなされる。連邦政府による追跡結果、マダラフクロウの生息数回復には成功したこと、プラン対象エリアでは人口減少と高齢化が進んだこと、他方、レクリェーションの利用人口の増加による連邦有林の収入の助けとなったことが報告されている。既往研究では、林業生産者の伐採行動は短伐期化にインセンティブを持つことが明らかにされている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナ感染症の影響によりドイツでの実態調査を計画していたところ、調査先からの受け入れ可能との回答が得られず、現地での実態調査は延期せざるをえなかった。また、最新の情報収集が途上であり、データ分析まで至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
ドイツの森林政策の研究を実施しているフォン・チューネン研究所、自然契約制度を実施している各州の政策担当者、助成を受けている森林所有者から聞き取り調査を行い、本制度の生態系サービスの維持に果たす意義を明らかにする。同時に助成の対象となる森林および森林施業、助成額の根拠についても明らかにする。国内研究では市町村が実施している森林環境税の取り組みと森林生態系サービスの維持に対する可能性を評価する。 アメリカのPES事例のデータベースの統計分析を進める。その結果から、森林生態系サービスに関わる費用と便益がどのように支払額と関連しているか考察する。国内の統計分析についてもそうした視点から再度見直し、再分析を進める。世界的なデータベースについても探索を行う。 最新情報やデータの入手によって、Northwest Forest Planの損失補償を視点をあてて分析を深める。
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