研究課題/領域番号 |
21K12414
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80010:地域研究関連
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
原尻 英樹 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (70231537)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 無縁仏供養 / 江戸時代の民衆 / 華厳経的世界観 / アニミズム / 共同体の心性 / お堂 / 同年齢集団 / 段々畑 / 島原天草の乱 / 死者との対話 / 低生産地 / 船大工 / 職人 / 半農半漁 / 東シナ海域 / 共通文化 / 信仰 / 共同体 / 越境 |
研究開始時の研究の概要 |
2015年『東シナ海における朝鮮半島と日本列島:その基層文化と人々の生活』かんよう出版を出版した。本研究の目的は、東シナ海域という問題設定のもとに、そこにおける共通の基層文化とは何であり、また、各地域においてそれをもとにした個別文化がどのように形成されたのかを明らかにすることにある。具体的な調査地については、日本では瀬戸内、北部九州島嶼部、沖縄、韓国では多島海、済州島、中国では舟山群島、海南島、それに福建省の南平になる。これらのフィールドにおいて前記の著作で提出している方法論に基づいて、特に共同性形成の観点から分析を展開し、さらに、以上のことをマルチスピーシーズの観点からも分析する。
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研究実績の概要 |
本来は国際学術研究で、中国、韓国、日本の地域社会のフィールドワークをする予定であったが、コロナの結果、調査自体が不可能となり、試行錯誤の結果、東シナ海研究として天草がその対象としてふさわしいという結論にいたり、二年間に渡って、天草の五か所での地域フィールドワークを実施した。結果としてそれなりの成果があがり、これまでに報告されていない事実も明らかになった。 まず、研究のフォーカスとして無縁仏、無縁仏供養の内実が挙げられるが、天草においては昔日より、無縁仏供養が盛んであったことが明らかである。これには歴史的要因も関係しているが、それだけでなく、天草はもとより、生産性が高くはなかったことが関わり、結果としてここだけで生活するのが難しく、他所とのかかわりを持って生活せざるを得なかったと考えられ、他所にいくことが常態化していたので、必然的に無縁仏供養が盛んになったと考えられる。これに加え、地政学的な要因が加わり、他所からの人々も天草に来るようになっており、これらの人々の供養も重要になった経緯が加わる。 これらの背景があったところで、キリシタンを中心とした島原の乱が起こり、事実上関係者はすべて殺害されて終わったことになっているが、実は、天草の人々からすると、その後も年貢など税に関することが中心となり、何度も反対一揆が起こっており、事実上島原の乱以後、税制が改革されたので、一般大衆からするとこれは乱の結果、成果と認識され、この乱の後は、これを引き継ぐ形で一揆が形成されたと考えられる。つまり、乱の無縁仏供養は、その後の一揆と関り、自らの生活を守るための民衆の戦いを表象する信仰だと考えられる。つまり、ここにおける無縁仏信仰は民衆の自治精神、民衆の自立のあり方を物語っているといえる。 現在に至るまで無縁仏供養は続けられており、この内実についての概略は以上のようになる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画下通りに五か所でのフィールドワークを実施し、それなりの成果が得られた。天草は場所によって事情が異なっており、その場所での土地感覚をまず習得してからでないと、事情がつかめなくなっている。これまでの調査によって、島原の乱からその後の人々の生活のあり方が明らかになっており、場所の範囲を今後広げ、それによって、今まで明らかにされてこなかったことも含めて、上記の時代における人々の生活のあり方についての認識を深めていなければならないと考えられる。 今後は島原の乱に参加した人々がある程度いた本渡における千人塚等の無縁仏供養の対象の調査の実施と、これまで調査した場所がすべて海岸沿いであったので、内陸部の調査をする予定である。内陸部と海岸部では環境条件が異なり、よって、人々の意識に違いがある可能性もあり、島原の乱への参加のあり方とともに、その後の無縁仏供養のあり方について認識を深める必要があると考えられる。 以上の調査を通して、島原の乱及びその後の無縁仏供養のあり方の内実が客観的に判明すると考えられる。 コロナの関係で調査が大幅に遅れ、2024年度一年ではとても研究を達成できるとは考えられないので、2025年度以降の延長を考えている。今からカウントして、最低二年あれば、上記の目的を達成できると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は本渡、もし、延長が可能であれば、2025年度は志岐をフィールドワークの対象に考えており、島原の乱参加がある程度あった場所と内陸部の実態がこれにて判明すると考えられる。 また、以上に加えて、東シナ海域研究の一環でもあり、そのために韓国の済州島、沖縄の久高島、それに与論島での調査も加えなければならない。これによって、天草の東シナ海でのあり方が理解できるようになると考えられる。もともと、奄美・琉球とは天草は関係があり、牛草のハイヤ節の音楽は奄美の六調であり、昔からの行き来があったと考えられる。
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