研究課題/領域番号 |
21K12439
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80010:地域研究関連
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研究機関 | 津田塾大学 |
研究代表者 |
戸田 徹子 津田塾大学, 言語文化研究所, 研究員 (50183877)
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研究分担者 |
増田 直子 津田塾大学, 言語文化研究所, 研究員 (70964310)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | AFSC / 米国フレンズ奉仕団 / 国際支援 / 戦後復興支援 / ララ物資 / 日系アメリカ人 / 再定住支援活動 / 戦時転住局 / LARA / クエーカー / 占領期 / 戦後 / 戦後復興活動 / 国際支援活動 / フレンド派 |
研究開始時の研究の概要 |
20世紀前半、米国では多くのプロテスタント組織が国際援助と国際交流に取り組むようになったが、米国フレンズ奉仕団(the American Friends Service Committee)はその先駆をなした。本研究は、戦後(占領期と復興期)にAFSCが日本で実施した活動の全体像を把握し、その活動の意義を考察しようとするものである。AFSCがララ物資で重要な役割を果たしたことはよく知られている。だが同時に、AFSCは日本で積極的に地域活動や人材育成、平和運動を展開していた。AFSCにとって救済と改革は車の両輪であり、この点にクエーカーに由来するAFSCの活動の特徴があったことを明らかにする。
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研究実績の概要 |
日本および日系アメリカ人に関するAFSCの戦中と戦後の活動には明白な連続性があることから研究計画を見直し、2022年度からは米国における日系アメリカ人の強制収容と転住も研究対象に含めることとし、そのために研究分担者が加わった。2022年度もコロナ禍で海外渡航に制限があったため、研究代表者と分担者はAFSC本部資料室での資料調査を断念し、AFSCの定期刊行物や在米中の研究者を通して入手した資料、ならびにハヴァフォード大学クエーカー・コレクションから取り寄せた資料を集中的に解読した。
研究代表者は、アメリカのクエーカーたちと内村鑑三、新渡戸稲造との関係について、アメリカの学会で発表した。フィラデルフィア年会ミッション・ボードの議事録に戦時下おけるボードの活動を追いAFSCとの協働関係を確認、さらにAFSC議事録からAFSCが独自に日本復興支援プロジェクト案を用意していた事実を発見し、それぞれ「戦時下のミッション・ボード」、「米国フレンズ奉仕団とララ物資の始まり(1)」として研究会で発表した。その他、 AFSCの職員および協力者として日米両国で活動したエスター・ローズとハーバート・ニコルソンの英語インタビュー音声を入手、文字起し作業に取り組み、英語スクリプトを作成した。
研究分担者は、第二次世界大戦中にAFSCが従事した日系アメリカ人の再定住支援活動についてアメリカ文化研究会および移民研究会で発表した。AFSCが日系アメリカ人の収容所を管理していた政府組織「戦時転住局(WRA)」よりも先んじて日系人の再定住計画に着手し、WRAの意向に沿う形をとりながらAFSCの計画を進めていったことついて述べた。また、AFSCの日系人の東部への再定住支援活動についても焦点を当てた。当事者である日系人の日記も史料として活用し、AFSC、WRA、日系人それぞれの視点から再定住支援活動を考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度も予定していた資料調査は実施できなかったものの、ウェブ上で新たに入手した資料とハヴァフォード大学クエーカー・コレクションから取り寄せた資料を中心に分析が進んでいる。本研究の主要テーマである、戦後日本におけるAFSC活動の二面性(復興と改革)については、AFSCの当初の日本復興支援プログラム案とララ物資の相違を分析する作業を通して、国家と民間国際支援団体との間の緊張関係を探る糸口を得られる可能性が見えてきた。また2022年度から本研究に参加した研究分担者はすでにAFSCによる再定住支援活動の概要を研究会で発表できる段階に至っており、必要な資料の絞りこみを進めている。以上により、進捗状況はおおむね順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度はまずAFSC本部資料室において日本関係の資料調査を実施する。資料目録がないことによりAFSC資料の内容は不明であり、研究代表者が前科研でまとめたリストも不十分な内容だったことが判明している。しかしながらAFSC本部資料室とのやり取りを通して、資料構成が解明されつつある。これまで断片的に入手してきた書簡と議事録をより系統的に、より長期的な時間枠で収集できると思う。
戦後日本におけるAFSCの活動については、計画通り復興と改革の2側面において具体的な活動内容を検証する。2022年度の研究成果として、AFSCは当初、広範な活動を網羅する独自の復興支援計画を有していたことが明らかになった。ララ物資において指導的役割を果たしていたにもかかわらず、AFSCは物資支援だけに終始することに対し不全感を持っていた可能性を指摘できる。それゆえ戦後日本におけるAFSC活動の具体的な内容を明らかにすると同時に、より大きな課題として、AFSCとララ物資の関係を通して、第一次世界大戦後の復興活動時には比較的自由だった民間の国際支援が、第二次世界大戦後は米国政府ならびに軍部によって制限されていく過程を検証する必要があると考えている。
米国におけるAFSCの日系人再定住支援活動については、今後、AFSCと戦時転住局の資料等を用いて、フィラデルフィアを中心に、AFSCが戦時定住局支部といかなる協力関係を築き、どのような支援活動を展開したのかを解明する。また、再定住した日系アメリカ人自身がAFSCの再定住支援活動にどのようにかかわり、どんな役割を果たしたのかを明らかにする予定である。
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