研究課題/領域番号 |
21K12445
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80010:地域研究関連
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
久保 公二 学習院大学, 国際社会科学部, 教授 (00450528)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2025年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2024年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 商品作物ブーム / 土地収奪 / ミャンマー / 作物ブーム / 輸出志向園芸作物 / フルーツ |
研究開始時の研究の概要 |
発展途上国の各地で、新しい商品作物の栽培が爆発的に増える作物ブームは、小規模農民から農地を奪う土地収奪を伴うことが多く、東南アジアの農村開発・地域研究の先行研究は、この二つがほぼ不可分であるとみなしている。しかし、ミャンマーにおける中国向けメロン輸出ブームでは、土地収奪が起きていない。本研究は、ミャンマーのメロン輸出ブームをささえる生産・流通の仕組みを観察し、土地収奪をともなわずにメロンの増産が進む原因を明らかにする。本研究は、作物ブームと土地収奪を不可分とみなしてきた先行研究に対して、これまでの知見に反する事例を提示して、作物ブーム研究のフロンティアを切りひらく。
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研究実績の概要 |
本研究は、ミャンマーの園芸作物輸出ブームにおける農地の利用と所有の変化を検証するものである。途上国の各地で商品作物ブームにより農地の収奪が起こっているのとは対照的に、ミャンマーの中国向けメロン輸出ブームでは、農地の収奪は顕著でなく、小農も包摂しながら生産を増やしてきた。輸出ブームのなかで、農地の利用と所有がどのように変化して、この新規の商品作物の増産に至ったのかを、本研究は明らかにする。 本研究の初年度は、過去の予備的調査をもとに中国向けメロン輸出の概要を記したKubo, Pritchard, and Phyo (2021)を公刊した。メロン栽培で農地の収奪が生じず、農地のレンタルが盛んな理由の一つとして、連作障害に弱い単年作物というメロンの作物特性が影響している可能性を示した。生産者は連作障害を避けるために農地レンタルによる輪作を活用していると考えられる。 本研究の2年目にあたる本年度は、単年作物であるメロンとの対比で、果樹作物の輸出ブームについてタイの事例を分析した。果樹作物の栽培は植樹から収穫まで歳月を要する投資であるため、農地の集積はレンタルではなく土地売買で進み、作物ブームの過程で農地の収奪がみられる。ただし、農地の集約のペースは、投資家の資金制約だけでなく、労働力の制約からも影響を受けていることを確認した。果樹作物は収穫に大量の労働力を必要とするが、農村部ではそうした労働力が調達できるとは限らない。国境地域などでは移民労働者の流入が増えると、この制約が緩和されて、結果的に果樹栽培の土地収奪が加速するという事例を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究では、中国向けメロン栽培が盛んなミャンマーの産地から農村を1つ選び、悉皆調査で家計データを収集し、生産者ごとの生産への参入および規模拡大プロセスと農地レンタルの慣行について分析を予定している。しかし、2020年3月からのCOVID-19による国境封鎖と2021年2月の軍事クーデタによる治安悪化の影響で、ミャンマーでの現地調査を延期してきた。日本外務省はミャンマーに対して危険レベル2(不要不急の渡航延期勧告)を継続しており、2022年度末時点でミャンマーでの現地調査の目途は立ってない。 他方、2022年度には、ミャンマーのメロン輸出ブームを相対的に評価するため、果樹作物の輸出ブームを他国の事例で分析した。ここでは、収穫期間が数十年にわたる果樹作物で、同じく中国向け輸出ブームにあるタイのリュウガンの事例を取り上げた。タイのリュウガン栽培の場合、生産者の規模の分散が大きく、土地収奪が顕著である。ただし、土地の集約のスピードは、輸出ブームで一挙に加速するのではなく、労働力を含む投入物の入手可能性の制約が影響を及ぼすことを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
軍事クーデタによる治安悪化の影響でミャンマーでの現地調査を実施する目途が立たないため、園芸作物輸出ブームで他国の事例の研究を2つの観点から分析してゆく。一つは、連作障害が起こりうる単年作物の輸出ブームについて他国での事例の文献調査である。ここでは連作障害がある場合に、ミャンマーのメロンと同様に農地レンタルが拡がるかどうかに着目する。 もう一つは、ミャンマー以外の国での現地調査にもとづいて輸出ブームと農地の利用・所有の変化を検証することで、ミャンマーのメロン輸出ブームを相対化するものである。調査地の候補には、研究代表者が過去に調査を実施したことがあり、比較的容易に調査体制を整えることができる、タイのリュウガンの生産地がある。ミャンマーでの調査の可否を見極めながら、タイでの調査の実施を検討する。
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