研究課題/領域番号 |
21K12458
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80020:観光学関連
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
上浦 尚武 兵庫県立大学, 工学研究科, 教授 (80275312)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 観光資源価値評価システム / 観光振興 / 機械学習 / 中核都市 / 観光ルート生成システム |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では姫路市を対象とし,個人旅行における観光ルート作成システムの開発および訪日外国人の旅行分布に基づく観光資源価値評価システムの開発を主要テーマとする.前者においては巡回観光スポットの決定のための単語抽出およびスポット周遊ルート確定時,後者においては市内地区ごとの価値評価問題が帰着されるデータクラス分類問題に機械学習を適用する.また,各テーマの最終結果である周遊ルートおよび各国外国人に対する訪問推奨地区は,web地図上で視覚的に分かり易く表示する.
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研究実績の概要 |
本研究では姫路市を対象とし,(1) 個人旅行における観光ルート作成システムの開発,(2) 訪日外国人の旅行分布に基づく観光資源価値評価システムの開発,以上を主要研究テーマとする. (1)では,観光客個人の嗜好に合わせた観光スポットを列挙するとともに,それらに対する周遊ルートの作成・提供が可能なシステムを開発する.本システムでは,ユーザが興味のあるジャンルを入力する.令和3年度,ジャンルは,日本らしさ,写真映え,有名さ,安さ,アクセスの良さ,混雑具合とやや若年層向きの語句を採用していたが,令和4年度は歴史,風景,有名,芸術,お土産,家族と全世代的なものに変更している.また,令和3年度のシステムで列挙された観光スポットを更新した.これは,姫路市特有の観光資源とはいえないチェーン店や建築物をスポットとして選択していたためである. (2)では,評価対象である国以外の出身の外国人旅行者に対するデータを基に,市内各地区に対する観光価値定義システムを開発する.令和4年度も,姫路市国籍別旅行者分布データを用いた.分布データはエリアコードを有し,そのコードで特定される地区を訪れた外国人旅行者国別人数がデータの要素値とされる.まず調査対象国を定め,その国からの観光客が訪れている地区のコードを有するデータに正解クラス,訪れていないエリアに不正解クラスとラベルを与える.ラベル付与後,それらを印加し,サポートベクターマシン(SVM)学習によりデータ識別器を完成させる.そして,識別器に調査対象国の要素値が外されたテストデータを与え,それらのクラス分けを行う.姫路コンベンションビューローは,フランス,イギリス,ドイツ,スペイン,シンガポール,オーストラリア,アメリカを大きな観光出費を期待できる重点市場国と位置付けている.そこで,令和4年度は,データ要素としてこれら7カ国のみを採用した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
個人旅行用観光ルート作成システムでは,ユーザは最初にジャンルを入力する.ジャンルとしては,歴史,風景,有名,芸術,お土産,家族と,令和3年度のやや若年層向きの語句から,全世代的なものに変更している.また,訪れるべきと提示する観光スポットの数も令和3年度より増加させた.これにより,システムのユーザビリティは向上している. 訪日外国人用観光資源価値評価システムでは,姫路市内1km四方のメッシュについて観光価値再定義する.まず,購入データについて,季節とエリアコードで特定される1次元数列に再構成する.対象国数は45であるため,令和3年度では数列は45次元とした.数列の各次元値は出身国ごとのメッシュ訪問人数に等しい.次に,調査対象国を定め,各45次元数列に対し,調査対象国に該当する次元値が0ではないとき(または0のとき),その数列は正解クラス(または,不正解クラス)とする.その後,調査対象国をベクトルの要素から外す.これにより得た44次元データを学習に使用し,SVM識別器を完成させる.上記システムでは,調査対象国に対応する次元がない次数44のテストデータを正解,不正解の2クラスに分類する.あるテストデータが識別器により正解とされた場合,そのエリアコードによって指定される1km四方のメッシュを,調査対象国出身旅行者にも訪問価値があると判定する. 以上の識別器構成法では,評価指標となる再現率が0.80となる一方で,適合率が0.45,F値が0.58と低い値となる.これは国ごとの訪問者数について差が大き過ぎることに一因がある.そこで,令和4年は重点市場国とするフランス,イギリス,ドイツ,スペイン,シンガポール,オーストラリア,アメリカからの旅行者数のみからデータを生成した.その結果,再現率が0.85,適合率が0.61,F値が0.71と令和3年度より向上し,システム完成度が増している.
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今後の研究の推進方策 |
個人旅行用観光ルート作成システムでは,外国人観光客に対するユーザビリティを向上させる.路線バスは比較的中距離移動を可能にするが,外国人には利用しづらい交通機関である.逆に,ネット環境が整備された現状では,日本人観光客は路線バスについて,自分のモバイル端末で簡単にその運行情報を入手できるようになった.そこで,移動手段を従来の車,徒歩,路線バスから車,徒歩,姫ちゃり(公共レンタル自転車)からの選択とする.また,外国人観光客には信教などによる食事制限についても考慮すべき点が多い.このため,食事関連観光スポットとして,ハラルなどに注力しているレストラン,カフェの数を令和4年度より増加させる予定である. さらに,令和4年度までは,観光スポット滞在に関わる時間的制限をあまり考慮せず,各ユーザについて一律に4箇所程度を訪問推奨していた.これはスポット間の距離が遠い場合,現実的な観光ルート情報提供とは言えない.そこで,各スポットについて所要滞在時間,移動時間,スポット営業開始・終了時間などもパラメータとして採用し,訪問可能スポット数が現実的な数とさせる機能をシステムに付与させる. 訪日外国人用観光資源価値評価システムでは,実験条件を変更し,その有効性を検証する.具体的にはSVM分類器に学習データ集合,テストデータ集合の要素を組み換え,データ依存性を排除し,分類器の能力を評価する.令和4年度までは,2018年夏,秋のデータを学習時に使用し,2018年冬,2019年春のデータをテスト時に採用していた.令和5年度は,①2018年夏から2019年春までの1年間のデータを学習時に用い,2019年夏と秋のデータをテストに用いる場合,②2018年の夏と秋のデータを学習時に用い,2019年夏と秋のデータをテストに用いる場合,などのようにデータ数,季節性などを変更して実験し,システムの有用性を高めていく.
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