研究課題/領域番号 |
21K12490
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80020:観光学関連
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研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
畢 滔滔 立正大学, 経営学部, 教授 (70331585)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | DMO(観光地域づくり法人) / 中核観光資源・アトラクター / 2次観光資源・アトラクター / デスティネーション・ブランディング / 女性リーダー / 地ビール / クラフトビール / 観光地まちづくり / 起業家 / 飲み会 / 日本型近代家族 / 衰退地域の再活性化 / フードツーリズム |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、1990年代後半日本で創業した地ビールメーカーについて3つのことを明らかにする。(ⅰ)企業は誕生期と発展期にどのような経営上の問題に直面したか。(ⅱ)企業は競争で生き残るためにどのような戦略をとったか。(ⅲ)そうした戦略の結果、地域の活性化にどのような影響を及ぼしたか。 本研究は実態調査および理論研究を行う。実態調査の目的は、地ビールメーカーがとった戦略および、その結果として地域の活性化に及ぼした影響を把握することである。理論研究の目的は、米国の事例に基づく先行研究の結果が日本の事例に当てはまるかどうかを検討し、また、両者の類似点と相違点が生じた理由を検討することである。
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研究実績の概要 |
クラフトビールを活用する観光地域づくりが成果をあげるには、DMO(観光地域づくり法人)が果たす役割は大きい。日本において、地元のクラフトビール・メーカーを熟知し、クラフトビール・メーカーの醸造所やブリューパブ、クラフトビール・フェスティバルなどを観光プログラムに盛り込むDMOはまだ少ない。一方、クラフトビール先進国である米国において、クラフトビールを積極的に観光プログラムに盛り込む活動は、西海岸や東海岸の大都市圏だけではなく、ラストベルト地帯(さびついた工業地帯)と呼ばれる中西部のDMOも行っている。米国のDMOはどのようにクラフトビールを観光地域づくりに活用しているのか。2023年度は、この問題について、ラストベルト地区であるオハイオ州における異なる規模の都市のDMOについて調査を実施した。調査の結果は、次の4点にまとめることができる。 第1に、人口規模にかかわらず、オハイオ州の都市と周辺地域は、観光産業が大きな発展を遂げた。その重要な要因は、それぞれの地域のDMOはクラフトビールを含め、都市と周辺の農村地帯に存在する多様な観光資源を発掘し、また、これらの観光資源を観光プログラムに盛り込んだからである。 第2に、オハイオ州の多くのDMOは、つくった観光プログラムが集客効果を得られた重要な理由は、DMOが単に観光資源をリストアップするのではなく、むしろ観光客に観光テーマーやストーリーを提示し、また、地域の自然や、企業、製品などを観光テーマーやストーリーに盛り込んでいるからである。 第3に、調査したDMOすべては、新しい情報通信技術や、SNSなど新しいコミュニケーション・ツールを積極的に活用している。 最後に、米国のDMOが観光産品を発掘し、観光ストーリーをつくり、新しいコミュニケーション・ツールを積極的に活用できたのは、DMOの雇用制度と人事管理によるとことが大きい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
クラフトビールを活用する観光地域づくりにおいて、DMOが果たす役割は大きい。なぜならば、DMOが地元のクラフトビール・メーカーのブリューパブや製品などを観光プログラムに盛り込むことが重要だからである。こうした観光産品を発掘する能力および、観光産品を観光プログラムに盛り込む企画力を備えるDMOを組織することは、クラフトビールによる観光地域づくりの重要な課題である。本研究は、経済環境が必ずしも芳しくないラストベルト地帯のDMOを調査することで、このような地域においても企画力の高いDMOを組織することができることを明らかにし、また、DMOの組織的特徴を解明した。こうした理由により、本研究はおおむね順調に進展していると判断する。 本研究は、企画力の高い米国のDMOについて、次の3つことを明らかにした。(1)終身雇用でない米国のDMOは、多様な産業でマーケティング経験を蓄積した人材がDMOに転職しており、また、DMOスタッフの入れ替わりは頻繁である。(2)DMOスタッフに求められるのは、毎日定時出勤することではなく、むしろクラフトビール醸造所やブリューパブなどの現場に足を運び、顧客の目線から商品・サービスを評価し、自らの創造力を生かして商品や企業に関するストーリーをつくることである。(3)勤務時間が柔軟であるため、マーケティング経験が豊富な女性は数多くDMOに転職している。 日本において、2000年代以降クラフトビール産業において起業家が輩出し、クラフトビールの生産技術は大きく向上してきた。一方、日本においてクラフトビールが十分に観光地域づくりに活用されていない要因は、DMOの観光産品発掘力と観光プログラム企画力が必ずしも高くないからであると考えられる。米国の経験は、日本における企画力の高いDMOの育成に重要な示唆を与える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究では、(1)クラフトビール・メーカーの発展と企業戦略および、(2)クラフトビールを活用する観光地域づくりにおけるDMOの役割について調査を行ってきた。クラフトビール・メーカーとDMOに加えて、クラフトビール・フェスティバルは、観光地域づくりに大きく貢献する。2024年度は、クラフトビール・フェスティバルがクラフトビール産業の発展および観光地域づくりに及ぼす影響について調査を行う。また、研究の最終年度である2024年度は、2021年度から現在までの研究成果をまとめ、論文および研究書を執筆する。 クラフトビール・フェスティバルは、(A)クラフトビール・メーカーの起業と成長を促進し、また(B)クラフトビール愛好家に魅力的なイベントを開催することで、観光地域づくりに貢献する。これらの2つの役割を果たした代表的なクラフトビール・フェスティバルは、米国のグレート・アメリカン・ビア・フェスティバル(GABF)である。一方、日本において、ビアフェス東京などのフェスティバルは東京や横浜などの大都市で開催されているものの、規模が小さく、また、起業を促進するより、むしろ消費者にクラフトビールを紹介するという役割しか果たしていない。2024年度、GABFおよび日本のクラフトビール・フェスティバルについて史料調査および現地調査を行う。これらの作業を通じて、起業促進および消費者層拡大という2つの役割を果たすクラフトビール・フェスティバルの特徴およびその開催・促進の方法を明らかにする。 以上の作業に加えて、研究の最終年度である2024年度は、(ⅰ)クラフトビール・メーカーの発展と企業戦略、(ⅱ)クラフトビールによる観光地域づくりを取り組むDMO、および(ⅲ)クラフトビール・フェスティバルが観光地域まちづくりに及ぼす影響について、研究の結果をまとめ、論文および研究書を執筆する。
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