研究課題/領域番号 |
21K12491
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80020:観光学関連
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研究機関 | 富山国際大学 |
研究代表者 |
一井 崇 富山国際大学, 現代社会学部, 准教授 (00844599)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 五感を活用した観光 / UTを通じた新たな観光地形成 / UTの定義に対する批判的検討 / 五感の観光 / ユニバーサルツーリズムの再定義 / 五感を活用した新たな旅のスタイル / ユニバーサルツーリズム / 心のバリアフリー / 障害理解の醸成 / 合理的配慮 / 障害当事者の余暇保障 / 観光と福祉の連携 / 観光弱者の当事者性 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、ユニバーサルツーリズム(Universal Tourism:以下、UT)の普及啓発と環境整備のための統一規格の策定に向け、その基礎条件を導出することである。そのために、次の2つの研究課題に取り組む。1つは、「実用性の高いUT統一規格の策定に向けた実践的な課題整理を行うこと」である。2つは、「観光弱者の当事者性を保障する条件を明らかにすること」である。これら2つの研究課題に取り組むことでUT環境整備のための統一規格の基礎条件を明らかにし、UTの更なる進展とUT対象者の理解醸成、余暇保障の充実につなげる。
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研究実績の概要 |
【研究課題Ⅰ:「実践的な課題へのアプローチ」】については、昨年に引き続き、調査対象を視覚に障害のある当事者に絞った。その理由としては、視覚が認知情報の約8~9割を占めると言われ、観光分野においてUT対象者の中でもより多くの課題や困難性を伴うことが推察されるためである。また、視覚障害者の観光における困難性を把握し、課題解決の方策を導出する手がかりとして2023年度も「五感を活用した観光」をテーマにフィールドワークを実施した。「五感」を駆使することは、視覚障害者が視覚以外の感覚を用いてより主体的に旅を楽しむことができるだけでなく、障害の有無や年齢、文化的差異などを超えて多くの旅行者が旅の経験を共有することができ、それが誰もが楽しめるユニバーサル(Universal)な観光の実現に寄与することがこれまでの研究を通じて明らかになったからである。また、「五感」に着目した観光地形成により、従来の自然資源、文化資源をより多面的に活用することが可能となり、旅行者同士の新たな気づきや各観光地独自の新たな旅のスタイルの創造につながることが想定されるからである。 【研究課題Ⅱ:「概念的な課題へのアプローチ」】については、従来のUTがその対象とされるUT当事者の理解醸成に十分つながっていないことやUT対象者に対する社会認識が「支える側-支えられる側」という福祉的な視点から抜け切れていないという課題を前提にUTの定義を批判的に検討してきた。UTを通じ、観光弱者とされる障害者や高齢者などとの旅を通じた相互交流が新たな気づきや学びをもたらす契機になるという「社会的な弱さのもつ積極的な側面」に着目し、研究計画の最終年度である2024年度は学会発表や論文投稿、研究会やシンポジウムなどを通じてUTの定義の再定式化に取り組み、今後のUT研究の可能性と今後の展望を提示する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画に比べ、特に海外調査がやや遅れている。コロナ禍に伴う海外渡航時期の遅れが主な要因であるが、コロナ禍が収束したことから2023年度は国内調査①(北海道・浦河町)に加え、海外調査①(イタリア・ボローニャ)、②(デンマーク・コペンハーゲン)を実施した。海外調査については、当初、デンマーク、イタリア両調査を個別に実施する予定であったが、コロナ禍における現地事情の変化を鑑み、2023年度は予備調査という形でイタリア(ボローニャ)、デンマーク(コペンハーゲン)調査を同時に実施した。予備調査の結果を踏まえ、2024年度の本調査においてもイタリア、デンマーク両調査を同時期に実施する予定である。また、これまでの調査研究の過程から、2023年度の予備調査では全ての展示物に触ることができ、視覚障害の有無にかかわらず誰もが芸術の恩恵を享受できる実践に取り組むイタリア・アンコーナの国立オメロ触覚美術館を調査対象に加えた。さらに、予備調査では、ローマにおいて視覚障害の有無にかかわらず誰もが楽しめる「触る絵本」を通じた障害への理解醸成に取り組むイタリア全国視覚障害者支援施設連盟に対するインタビュー調査を行った。 学会発表については、2021年度より実施してきた富山県でのフィールドワークを踏まえ、ユニバーサルツーリズムの定義を批判的に検討し、その結果と考察について「ユニバーサルツーリズムの定義に対する批判的検討」と題し、日本観光研究学会(2023年12月8日~10日、於文教大学)において発表を行った。その他の活動として、これまでの実践と研究成果を踏まえ、静岡県長泉町にあるヴァンジ彫刻庭園美術館で開催された「ミュージアムとツーリズム」をテーマとするシンポジウム(2023年6月4日)にパネリストとして登壇し、同美術館の文化的価値についてユニバーサルツーリズムの視点から講演を行った。
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今後の研究の推進方策 |
現在の進捗状況を踏まえ、研究計画の最終年度に当たる2024年度は海外の本調査(デンマーク、イタリア)を中心に実施する予定である。【研究課題Ⅰ】については、3年目のテーマであるUTの実践と効果の検証に対し、これまでのフィールドワークの研究成果を踏まえ、視覚障害者を対象とするモニターツアーを年度内に実施し、参加者へのアンケート調査を通じ、当事者ニーズの把握とUTの統一規格策定に向けた知見を導出する。【研究課題Ⅱ】の海外調査①②については、コロナ禍における社会環境の変化を踏まえ、本研究期間終了後も継続的かつ中長期的な視野で調査を進めるための基礎研究と位置付け、調査対象の再設定も視野に入れ実施する予定である。論文投稿①②については、調査の内容や実践で得られた成果を踏まえ、4年目の2024年度中に所属学会への投稿を予定している。
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