研究課題/領域番号 |
21K12499
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80020:観光学関連
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研究機関 | 熊本学園大学 |
研究代表者 |
幸田 亮一 熊本学園大学, 商学部, 教授 (60153475)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 労働者ツーリズム / 労働者サイクリスト連盟 / 労働者ハイキング協会 / マスツーリズム / 歓喜力行団 / ワイマールドイツ / 自然友の会 / ツーリズム史 / 労働者の余暇活動 / KdF |
研究開始時の研究の概要 |
産業革命以来の工業化の進展にともない、一方では、技術革新による労働の強化と労働時間の短縮がもたらされ、他方では、鉄道や自転車、オートバイなどの新技術はツーリズムを大衆にも広げていく可能性を秘めていた。この動きが典型的に示され、19世期末より労働者文化が多様に展開したドイツに焦点をあて、1920年代から第二次大戦前にかけてのマスツーリズムの形成と展開の実態を解明することが本研究の課題である。
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研究実績の概要 |
対象とする時代区分「ワイマール・ナチス期ドイツ」のうち、ワイマール期研究のまとめとして、これまで多くの研究者が引用はしてきたものの、内容について紹介されず分析されることがなかった『ディーツ労働者旅行ハイキング案内』(1932年)をとりあげて詳細に検討を加えた。 その結果、2つの新しい知見を得ることができた。第一に、同書が、第一次大戦前からの社会民主党および同党傘下の旅行組織による労働者ツーリズム運動の集大成であることを明らかにすることができた。なかでも、労働者ハイキング協会や労働者サイクリスト連盟の役割が大きかったことを具体的活動の分析を通じて解明した。第二に、その成果をナチス政府が利用し、ドイツ労働戦線傘下の歓喜力行団のもとに取り込んだのではないかとの展望を得ることができた。この成果は論文の形でまとめることができた。 これにより、ワイマール期の研究にひとまず区切りをつけ、ナチス期の研究に移った。これまでも資料収集に努めてきたが、ナチス期についてまだ資料が不足していたため、令和5年9月にベルリンに滞在し、ベルリン国立図書館で同時代の学位論文や資料を収集して帰った。その後、持ち帰った資料を読みすすめ、とくにドイツ労働戦線による歓喜力行団旅行について集中的に研究を進めているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
4カ年の研究期間のうち、開始時の令和3年度は世界的な新型コロナウィルス感染症の蔓延期であったため、予定していたドイツでの調査と資料収集が遅れてしまった。 その後、令和4年度になり感染症が沈静化したため12月になってようやくドイツに行くことができ、資料を持ち帰り、検討を重ね、学会報告とともに最初の論文を発表した。 令和5年度も9月にドイツに行って資料を収集し、それらをもとに2本目の論文を発表することができた。だが、最初の遅れが響いて、予定よりやや遅れている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
まず、ナチス期について、歓喜力行団(Kraft durch Freude)の行ったマスツーリズムに関する先行研究を読み進め、これまでの研究史のなかで何がどこまで明らかになっているのかの整理を行う。 次に、当該期のツーリズムに関する数量的データを整理し、マスツーリズムの理念と実態の違いを明らかにする。あわせて、同時代人による旅行報告書などの内容を分析する。さらに、ナチス政権が力をいれてバルト海に建設を進めたものの、途中で破綻した巨大なリゾート施設であるProraについても、多角的な検討を行う予定である。 これらを組み合わせて研究することにより、ナチス政権が宣伝に努めたマスツーリズムの虚構と実態の乖離を解明していく予定である。
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