研究課題/領域番号 |
21K12522
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80040:量子ビーム科学関連
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
花泉 修 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (80183911)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | ラジオフォトルミネセンス / リン酸塩ガラス / その場線量計測 / 重粒子線 / X線 / 物理線量分布 / ラジオフォトルミネッセンス / 線量計測 |
研究開始時の研究の概要 |
従来、積算型放射線被ばく線量計として用いられているラジオフォトルミネセンス(RPL)型線量計について、活性中心の複合多重化により、重粒子線がん治療場におけるその場評価型ビームプロファイリングと品質管理に必要な線量分布測定を同一材料で実現可能な簡便な発光材料の開発を目指す。銀活性リン酸塩ガラス内部に銀以外の活性中心種とし新たに確認された錫(Sn)、マンガン(Mn)、アルミニウム(Al)による白色蛍光中心を、RPL現象を示す銀(Ag)や銅(Cu)と共添加する技術を開発し、既存のガフクロマティックフィルムやイメージングプレートでは達成できない線量分布記録とその場ビーム測定を同時に実現させる。
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研究実績の概要 |
重粒子線がん治療において、「精密な線量分布記録」と「高精度な2次元ビームプロファイルのその場測定」の実現を目指すべく、簡便なリアルタイム放射線計測体系の実現を目的とした技術開発を進めている。先行研究において、積算型放射線被ばく線量計として知られているラジオフォトルミネセンス(RPL)型線量計を用いた粒子線の計測が検討されている。しかしながら、一般的に同材料にはビルドアップ効果などが認められており、特に局所的な線量付与が大きな粒子線の線量リアルタイム計測においては、制限が生じている。これに対して、我々は取り扱いが簡便なリン酸塩ガラスRPL線量計母材や添加材料を変更することで、目的とする簡便なリアルタイム線量評価を可能とするための技術開発を行う。リン酸塩ガラスを母材として、積算型線量計としての機能を賦活する銀活性中心に加えて、他の活性中心候補を探索し、銀と複合多重化させることで放射線のリアルタイムその場評価技術の実現を目指した。 本年度は、昨年度の研究において特に顕著な白色発光を示した、銀以外の活性中心種とし新たに確認された 錫(Sn),アルミニウム(Al)で形成される蛍光中心を用いた重粒子線のリアルタイム計測を試験しその結果について報告した。さらにSn/Alについて、リン酸塩ガラス中にRPL現象を示す銀(Ag)と共添加する技術を開発した。添加量や熱処理の最適条件を探索した。開発したガラス線量計について、群馬大学昭和キャンパス重粒子医学研究センターにおいて炭素線のその場計測を試験した。また、粒子線に加え医療診断用のX線についても同様のガラスでのリアルタイム計測を実現させた。粒子線のような治療用の放射線に加えて、医療画像診断分野への応用において、平均原子番号が小さな本材料は、計測対象領域での外乱となるような写り込みを抑制した形で放射線誘起発光が生じることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度までの研究内容において、研究計画で目的としたリアルタイム追跡性についてリン酸塩ガラス線量計での実現が達成されている。活性中心種とし新たに確認された 錫(Sn)やアルミニウム(Al)過剰添加で形成される白色発光は紫外線の励起波長がラジオフォトルミネセンスを生じさせる銀(Ag)活性中心と異なるため、共存が可能である。昨年度までに開発されたリン酸塩ガラス線量計においては、SnとAlを添加したリン酸塩ガラス材料を利用した。Sn, Alを添加したガラスでは、ラジオフォトルミネセンス(RPL)を示す銀活性中心と異なる励起波長帯域、特に深紫外領域において白色発光を示す。これは放射線照射時には、その高いエネルギー付与によってRPL中心よりも高効率にその蛍光を生じさせることが可能である。他方で、照射後の事後読み出しにおいては、RPLのみを365nm近傍の紫外線で励起可能であり、新たに添加した蛍光中心がRPLの読み出しを阻害しない。本材料を用いて開発したガラス線量計デバイスの実現により、炭素線やX線といった多様な放射線の計測も可能となっている。群馬大学重粒子医学研究センターにおいて炭素線のその場計測を試験した。目的としたシンクロトロン加速器からの出力パルスの可視化が可能となっている。また、粒子線に加え医療診断用のX線についても同様のガラスでのリアルタイム計測を実現させた。治療用の放射線において特に線エネルギー付与が高い領域では、その応答特性の非線型性が問題となるが、X線のように低い線エネルギー付与の放射線に対しては特段の問題とならない可能性が高いという点が実験的に確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究においては、これまでに実現させたリン酸塩ガラスを用いた放射線計測デバイスの実現が重要である。炭素線においては、的としたシンクロトロン加速器からの出力パルスの可視化が可能となっている。今後さらにデバイス化としての高度化、より具体的にはアプリケータ等の装置構造へ埋め込んだ形でのデバイス展開が望まれる。他方で医療画像診断分野への応用において、平均原子番号が小さな本材料は、計測対象領域での外乱となるような写り込みを抑制するなど、想定以上の利点を見出すことができた。このため、今後はこれ等の成果を活用して、当初の研究開発対象とした粒子線領域に加え、X線のような医療診断領域に技術展開ができる可能性も探究していく。
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