研究課題/領域番号 |
21K12555
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90010:デザイン学関連
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研究機関 | 神戸芸術工科大学 |
研究代表者 |
曽和 英子 神戸芸術工科大学, 附置研究所, 研究員 (80537134)
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研究分担者 |
ばんば まさえ 神戸芸術工科大学, 芸術工学部, 研究員 (00249202)
曽和 具之 神戸芸術工科大学, 芸術工学部, 准教授 (00341016)
安森 弘昌 神戸芸術工科大学, 芸術工学部, 准教授 (20341018)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 織帯 / 紋様 / 民族文化 / 技術 / 経浮織 / 織機 / アジア / 細幅帯 |
研究開始時の研究の概要 |
細幅の織帯は、古代において組紐などと結びの文化を共有しながら発達したが、6-10センチほどのものが多く、このような平面展開により多様な紋様表現を可能にした。日常的にも幅広く活用された他、その紋様に民族の信仰と祈りの文化を搭載しており、古代の経紋織りの技術を現代に伝える重要な役割を果たしている。 本研究は、諸民族の腰帯や飾り帯など、細幅織帯の紋様に視点を当て、その文化的意味と構成美を解明すると同時に、製織技術と織具がその紋様作りに果たした役割を明らかにすることにより、紋織り帯の文化を体系化する。なお、実践検証を通して、その持続的発展の指針を提示したいと考える。
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研究実績の概要 |
本研究は、諸民族の腰帯や飾り帯など、細幅織帯の紋様に視点を当て、その文化的意味と構成美を解明すると同時に、製織技術と織具がその紋様作りに果たした役割を明らかにすることを通して、紋織り帯の文化を体系化することを目的とする。 2022年度は、2021年度に次いで文献資料の閲覧、日本の織り手たちの現地旅行見聞に対する聞き取り調査を進めながら、日本の佐賀錦、博多織、ブータンの経浮織の現地調査を実施した。また、国立民族学博物館において、細幅織物の織機の実測調査を行い、織機の復元と実践検証を通した教材の試作を始めている。 1)織り文様についての調査:細幅の織物は古代から織り続けられた伝統を持っており、儀礼に使われることも多く、その紋様には民族のトテムや吉祥意味を持つものが多い。本研究では中国のシェー族の織り帯やブータンの経浮織の紋様を記録している。 2)織機の実測と復元:国立民族学博物館の収蔵品の中で、細幅織物の制作に使われていた簡易織機の実測調査を行った。グアテマラ、メキシコ、ブータン、台湾の織り機を図面に起こし、それぞれの仕組みを分析した。今後は一部の織機の復元、およびそれらの仕組みを利用した現代の家庭でも使いやすい簡易織機を提案したいと考えている。 3)ブータンの経浮織の仕組みの研究:前年度に投稿した研究論文「カード織の現代的継承の取り組み」を修正し掲載することができた。なお、2023年3月に他の研究調査の関係でブータンに行った際に、ブータンの経浮織を取材する機会があった。腰機を用いたブータン特有の整経方法、織り方を詳しく解説してもらうことができた。細幅織物ではないが、細幅織物に多く使われる経浮織である点から、本研究にも大変有益な調査となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)織りの技術について: 2022年度には沖縄の花織りの現地調査はできなかったが、佐賀錦と博多織の現地調査を通して、緯糸で紋様を織り出す技法と、経糸で紋様を織り出す技法による紋様作りの自由度、織り上がった織物の違いを実際に比較体験することができた。なお、ブータンの原始的な腰機を使った経浮織の体験に加えて、台湾のタイヤル族の経浮織物の資料調査を通して、それぞれの整経方法の違いや経糸の並べ方の違いなどを比較分析している。 2)細幅織物の紋様について: 細幅織物の紋様としては、主に経糸による浮織紋様を主として、ブータン、中国の少数民族(ミャオ族、ヤオ族、シェー族)、台湾タイヤル族の織紋様、日本の博多織の紋様の写真を集めているので、それを図面化しているところである。今後の細幅織物の教材を作る時に添付する予定である。 3)簡易織機の提案: ブータンのカード織技術の実践を通した簡易織機の開発に次いで、2022年度は国立民族学博物館収蔵の簡易織機についての実測を行うことができた。グアテマラ、メキシコ、ブータン、台湾の織り機については、図面化して復元に向けた準備が整ったので、今後それぞれの仕組みを検証しながら、現代の家庭で使える簡易織り機の開発を進めていくための準備が整ったと言える。
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今後の研究の推進方策 |
1)台湾タイヤル族の織り技術、織機について:台湾タイヤル族の腰機による経浮き織りは、数年前に現地で目にしたことがある。その整経具や織機は大変ユニークで印象に残っているが、具体的な使い方や整経方法、織り組織などは未解明のままだった。2023年度には現地調査または現地の人との連携調査を進め、その織り組織、技術、道具についての理解を深め、現代への継承の可能性を探索したいと考える。 2)異なる紋様組織の風合いの違いを定量化:これまでの調査によると、紋様組織には①ブータン、中国のミャオ族・シェー族の帯織り、②中国ヤオ族と日本沖縄のグーシー織、③台湾タイヤル族の経浮織の3種類が確認されている。これらの織り組織を再現し、その風合いの違いを定量化する。 3)簡易織機の開発・帯織りの教材の製作:中国ミャオ族とシェー族の織り機は復元して実際に織ってみた感想をまとめている。グアテマラ、メキシコ、ブータン、台湾の織り機はすでに図面化したので、中国ミャオ族とシェー族の織り機などを使って、それぞれの仕組みを再現しながら、簡易織り機を提案する。 また、細幅織物の紋様と織機の仕組みを分析し、小学生から織りの愛好者までの幅広い人に向けたわかりやすいガイドブックを制作する。これらの教材や道具については、研究メンバーによる実体験を重ねると同時に、対外的なワークショップを実施して、教材に対する理解度、織りの道具の使い心地を検証しながら、修正を重ねて教材を完成させる。 4)展示会・ワークショップ・セミナーの開催:3年間の研究成果をまとめ、細幅織物の文化、技術、道具についてまとめた展示会・ワークショップ・セミナーを同時開催し、研究メンバーそれぞれの研究成果の発表の場とする。この発表の場において多くの有意義な助言をいただき、帯文化の現代的継承についての探究について最後の報告をまとめたいと考えている。
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