研究課題/領域番号 |
21K12595
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90020:図書館情報学および人文社会情報学関連
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研究機関 | 長野大学 |
研究代表者 |
田中 法博 長野大学, 企業情報学部, 教授 (90387415)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 文化財復元 / 3DCG再現 / 視覚的質感 / 光反射モデル / デジタルアーカイブ / 光反射計測 / 画像計測 / 分光 / 光輝材 / 粒状物体の質感 / 化粧品 / 文化財 / 材質 / 質感 |
研究開始時の研究の概要 |
高度な技能を持つ職人が創り出した実際の有形文化財の複雑な視覚的質感を定量的に記録し,3DCG再現する手法を開発する.視覚的質感情報は,光反射モデルという数学モデルで記述し,職人の加工によって創り出された材料の状態の変化を光反射モデルのモデルパラメータとして数値化して記録する.そして提案手法を用いて,実際の有形文化財の視覚的質感をデジタル化して忠実に3DCG再現する. 視覚的質感情報のデジタルアーカイブは,デジタル映像の展示に活用できるだけでなく,文化財修復のためにこれまで分からなかった情報を提供することが可能とすることでデジタルアーカイブの活用方法を文化財修復のために活用できるようにする.
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研究実績の概要 |
本研究では,文化財の材質の質感のデジタルアーカイブを行うために,物体の視覚的質感は物体表面の光反射特性として定量的に扱う.具体的な方法は,光反射特性に基づいて,物体表面の色彩,光沢,陰影などの状態を数学モデル(分光的な光反射モデル)で記述して,そのモデルパラメータで個々の物体の材質の特性を定量的に表現する.そして,独自に開発した光反射計測システムを用いて,対象物体の光反射特性を計測し,その計測データから対象のモデルパラメータを推定する.そして,同じ光反射モデルを用いて,対象物体を3DCGで再現する. 本年度は,昨年度に引き続き粗さのある物体を対象として,その視覚的質感の推定を行った.光反射モデルで定量化した視覚的質感情報を実際の文化財の材料の物理情報に対応させて精密にモデルパラメータが計測できているかを調べた.本年度は画像計測を主に行い,ソフトウェアによる質感再現アルゴリズムの開発を行なった.これは材質の視覚的質感を表現するために,どういった加工がなされ,含まれる原料の含有量がどのくらいなのかといった文化財の材質の分析に必要となる物理情報とモデルとの対比を行なった.本年度は,昨年度から対象としている細かく砕いたパール材や貝殻で作られた光輝材の視覚的質感の3DCG再現を行った.本年度は,光輝材の表面構造を幾何的にモデル化したが,構造色の再現も含めてモデルの再現精度が向上したので,質感の再現精度が向上した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度までの研究において,視覚的質感の計測のための光反射計測システムの改良,光反射モデルの構築,実際の文化財を想定した材質の視覚的質感推定においてほぼ予定通りの進捗をしている. 光反射特性に基づいて,物体表面の色彩,光沢,陰影などの状態を数学モデル(分光的な光反射モデル)で記述して,そのモデルパラメータで個々の物体の材質の特性を定量的に表現する.そして,独自に開発した光反射計測システムを用いて,対象物体の光反射特性を計測し,その計測データから対象のモデルパラメータを推定するという作業はそれぞれ順調である.また,独自のレンダリングシステムの開発が行えたので,従来よりも実物を精緻に3DCG再現ができるようになった. このことから,概ね対象となる材質のデジタルアーカイブができることがわかった.しかも,当初の予定では再現が難しかった構造色を持つような複雑な光輝材の質感も再現できることがわかってきた.そのため,当初の予定よりも対象となる材質を増やしていくことを検討している.この点からは,当初の予定よりも研究が進んでいると言えるが,新しい研究成果の検証を進めていることから,作業量が膨大になってきている.そのため,今後の研究計画については,少し整理して進めていく必要がある.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度であるので,本研究のまとめに入りたい.視覚的質感をデジタルアーカイブするための理論構築だけでなく,実際にデジタルアーカイブをするためのハードウェア,ソフトウェア両面は,ほぼ完成してきた.しかし,当初の予定のものに加えて,新しい研究成果の検証を進めていることから,膨大な計測データなどの整理が必要となってきている. 次に,開発したレンダリングシステムの実装が大きな課題となっている.特に最終年度なので研究成果を多く公表していきたい.当初予定していたGPUよりも高速なシステムを用意したり,高品質なディスプレイでの色再現技術なども併せて開発して,実用的に文化財を3DCG再現する必要がでてきているので,本年度は研究成果の公表に向けた実用面での開発を行っていく. その上で,それらの本研究の集大成としての学術論文を執筆していく予定である.
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