研究課題/領域番号 |
21K12602
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90030:認知科学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
森田 ひろみ 筑波大学, 図書館情報メディア系, 教授 (00359580)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | スクロール表示 / 読み / 視覚記憶 / 画像 / 記憶 / 眼球運動 / 理解 / スクロール / 画像記憶 / 再認 |
研究開始時の研究の概要 |
スクロール表示により文章を読んだり画像を観察することによる内容理解や記憶の低下の問題を明確化し,その原因に関する仮説「スクロールによる位置知覚の不安定化が画像記憶及び文章理解の低下の原因である」を段階的に検証し,解決策を探る. 本研究は,物体の記憶定着における位置の重要性をこれまでにない視点から検討するものであり,実用的にも理解しやすい文章や画像の表示方法の開発につながることが期待される.
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研究実績の概要 |
仕事でもプライベートでもモバイル端末を多用する現代の情報環境において,小さな画面でスクロールしながら文章を読んだり画像を観察したりすることは日常的に不可欠な認知活動である.しかし,スクロールしながら観察すると,文章や画像内の視対象の位置が不安定になるため,それが内容の理解や記憶の低下につながる可能性が考えられる.この可能性を検証することが本研究の最終目的である. 2023年度は,1)スクロール表示により観察したときの物体間の位置関係の知覚を調べる研究を行った.結果から,スクロール表示では2物体を同時に見ることができないため,方向関係の知覚が不正確になるが,もう一方の物体を表示するために画像を意識的に操作することにより,物体間の距離の知覚は正確になることが示唆された.2)文章のスクロール表示とページめくり表示の間で読み特性を比較する研究を行った.結果から,ページめくり読みでは段落を割るようにしてページ切り換えが入ることがあるのに対し,スクロール読みでは,区切りの良いところで自分で文章を進めることができるため,段落の内容順序の知覚がより正確であることが示唆された.3)電子端末の違いが若年層と中高年層における説明文の読みに与える影響を調べる研究を行った.結果から,若年層の特徴として,PCで文章を読む場合に比べ,スマートフォンでスクロールを多用しながら読む場合,読み時間が短くなる代わりに内容の記憶が不正確になることを示した. これらの研究は,画像のスクロール表示の視覚的性質を明らかにし,また文章読みにおいてページめくり読みよりもスクロール読みの方が有利な側面を示唆した点で意義がある.また,若年層のスマートフォン利用の問題点をデータにより示したことも意義があると言える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでの研究の流れにより,当初の計画とは異なる研究を行ったものの,十分な成果が得られたと言える.ただし,想定していたより研究成果が多岐にわたったこと,学会発表を優先して行ってきたことから,論文執筆がやや遅れており,現在スクロール観察による位置記憶に関する論文1本を国際学術誌に投稿中,スクロール観察による画像内物体記憶に関する論文1本を国際学術誌投稿を目指して執筆中,スクロール読みに関する論文1本を今後執筆の予定である.そのため,APCが発生する可能性があり,科研費の期間を1年間延長したところである.
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今後の研究の推進方策 |
1)スクロール表示による画像観察の2特徴(窓を通して時系列的に画像を観察すること,画像を移動しながら観察すること)が画像内物体の位置の記憶に与える影響に関する論文1本の査読を通す.2)スクロール表示による画像内物体の長期記憶保持成績と,符号化の際の画像走査軌跡の関係を分析した研究の論文執筆を完了し投稿する.3)文章表示方法(スクロール表示とページめくり表示)と読み特性の関係を調べた研究の論文執筆を行い投稿する.
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