研究課題/領域番号 |
21K12614
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90030:認知科学関連
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研究機関 | 帝京平成大学 |
研究代表者 |
川島 尊之 帝京平成大学, 健康メディカル学部, 教授 (50401203)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | auditory processing / emotion / anisotropy / sound localization / expectancy / 感情処理 / 聴覚情景分析 / 空間 / 適応 / 音源定位 |
研究開始時の研究の概要 |
同じ音が後方にあるときと、前方にあるときでは、音が与える感情的な印象が異なるという報告がある。本研究では、人間の音の感じかたに音の方位による違い(異方性)があるかどうかを音楽を用いて新しく検証するとともに、もし異方性がある場合には、それが聴覚以外の感覚と、聞く人の身体の姿勢によりどのように影響を受けるかについて新たに調べる。成果はより人間の感情に働きかける効果音などの開発につながる可能性がある。
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研究実績の概要 |
感情はおそらく人間、生物が進化の過程で獲得してきた環境への適応であると同時に現在、人間の生活に大きく関わっている。そして感情が人間の適応を支えてきた要因の一つは、感情が前方だけでなく、主に聴覚を介して後方を含む全方位の対象に対して喚起される点にある。本研究の目的は、人間が全方位の対象を、感情の点でどのように処理しているかについて特に異方性の観点から理解を進めることであり、具体的には、第一に感情に関わる認知処理過程の前方、後方間の異方性を確認、再現し(目的1)、第二に異方性における感覚間統合の役割を明らかにし(目的2)、第三に異方性に主に関わる身体座標系について研究することである(目的3)。 2023年度は主に目的1に関わる実験について日本認知科学会で発表し、目的2に関する実験環境の検討を進めることができた。前年度までに明らかになった異方性の存在の確認とその性質についての知見に加え、2023年度は具体的には(1) 覚醒度を中心とした感情処理過程の前後の異方性(後方でより覚醒度が高くなる)について、本研究と測定方法が類似している研究で用いられてきたベイズ推定とMCMC法を利用した一般化線形モデルによるデータの分析により、あらためてその存在と新たに音と異方性の間の交互作用を明らかにし、(2)触覚刺激用のデバイスが発する音が交絡変数となることを避けられないこと、このため感覚間統合の研究において触覚を利用することが現状で難しいことを確認し、(3) 感覚間統合を主に視覚を介して研究するための環境(装置)準備を終了した。つまり全方位にわたる感情処理過程の異方性の観点からの理解に有益な情報を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
計画の遂行が遅れている理由は、2022年度以前の理由については昨年度の報告書に記したとおりであり、加えて2023年度に新しい遅延要因が生じたためである。2023年度では異方性における感覚間統合の役割の研究のため振動刺激を生じさせる触覚デバイスを利用する計画であったが、触覚デバイスが発するノイズが実験の交絡変数となることを避けるための手続き、方法等を実現、考案することができない期間が生じ、試行錯誤を行い、その間、実験を開始できなかった。このため2023年度までの研究計画を1年間延期した。
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今後の研究の推進方策 |
音が喚起する感情についての後方と前方での違いについて、感覚間統合と身体座標系の役割に関する2つの実験を行い、結果をまとめることで、現象の背景や知見の応用可能性の理解などについて一定の成果を得ることができると考えている。2024年の7月末までに感覚間統合に関する実験(目的2)を終了し、2024年の12月中に異方性に関わる身体座標系の役割に関する実験(目的3)を終了する。前者については2024年9月の日本音響学会で発表を予定する。
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