研究課題/領域番号 |
21K12629
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90110:生体医工学関連
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研究機関 | 北海道科学大学 |
研究代表者 |
菊池 明泰 北海道科学大学, 保健医療学部, 教授 (10736375)
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研究分担者 |
和田 直史 北海道科学大学, 工学部, 准教授 (90782475)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 局所散乱線補正法 / 深層学習 / 核医学画像 |
研究開始時の研究の概要 |
心臓核医学検査において、心臓以外に集積する放射性医薬品(心外集積)は心筋の画質を低下させる。その一つに散乱線がある。しかし、その散乱線の除去法は確立されておらず、特に画像の一部について補正する技術は確立されていない。そこで、我々は深層学習の技術で臓器を抽出し位置情報と放射能強度分布から散乱性の成分を予測し、画像改善に使用する補正法のシステム開発を目指す。その際、PC上で仮想上の人体を構築し様々な検査条件下を想定したうえで、実際に人体模擬モデルを用いてデータ収集しその比較を行いながら補正法の開発を目指し、最終的に臨床画像にて検証を行う。
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研究実績の概要 |
深層学習を用いた各種補正について、現状散乱補正に関するソフトウエアを構築し、基礎的な補正のための画像生成一定の成果を得ている。本研究で使用しているテクスチャーは、Cycle-GANを用い教師データは心筋ファントムデータにて学習を行っている。具体的なデータ区分は,Cycle-GANに散乱補正学習用データと,検証テスト用データ,補正されたデータを比較し評価するための未補正データ及び従来法であるTEW法で補正した比較用データに分け検討を行った。評価は、心筋内に設置した欠損の描出程度を心筋短軸画像によるcircumferential-curveを用いて実施した。評価に使用した画像は投影データから再構成を行い、短軸画像にて補正システムの学習状況の違いによる補正画像それぞれについて検討を行った。学習状況の違いは主に学習回数を変えたものとし、バッチ数を64に固定し,Epoch数を (ア)1,(イ)10,(ウ)30,(エ)50,(オ)70,(カ)100の6パターンとした。 結果について、下壁に設定した欠損部分のコントラストで比較を行っているが、TEW法補正画像で58.6%,Cycle-GAN補正画像で67.8%となり(深層学習のものは最も良い結果のもので検討)、本検討で開発しているシステムのほうがコントラストがよい値となった。現在より最適な学習環境を検討しており、具体的にはバッチ数のみなおし、学習回数の増加、教師データ数の増加や検証用データ種類の増加などを検討している。なお、今回の検討結果については、学習回数などの改善の余地があるなかでの結果であり、本検討についてはすでに一部ではあるが日本核医学技術学会北海道地方会にて発表している。今後日本放射線技術学会学術総会や秋季学術大会への発表も予定しており、臨床応用への可能性についても検討を進めていきたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本検討で進めている検討は模擬人体による心筋血流用ファントムを用いている。そのファントムの改良を進めているが、作成時に協力いただいている企業に依頼したファントムの修正した設計が遅れているため、検討項目として挙げている散乱線のバリエーションによる違いの検討ができていないことが、研究進捗の遅れの要因の一つとして挙げられる。対応策として、現在、再度協力企業との打ち合わせを行い、簡素化しても問題ない範囲で設計しなおすことで合意しており、再実験のスケジュールも進んでいる。新たな模擬人体を構築することで、より臨床に近い状態でのデータ収集が可能であり、臨床応用につながるシステムが構築できるのではと考えている。 また、研究進捗遅れの別要因として、現在補正システムのストラクチャーの最善化を進めているが、実際の作業として実施している最善化のための関数入力値の再検討による結果のばらつきが想定以上に大きく、そのデータの検証と改善策に時間を要しているため、想定よりも進捗が遅れている。こちらについては、関数の設定バリエーションを絞り検討することで、ばらつきく要因を絞り込み、最適値をみつけることで進捗の遅れを取り戻すことができると考えている。 上記2項目が、研究進捗遅れの要因であるが、この要因については現在解決できる見通しがついており、この内容で研究が進めば教師データの再構築もでき、精度の高い補正データを生成できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究内容は、本検討で設計した模擬心筋で収集した核医学データを用いて深層学習を人体に近い条件での補正システムの再構築を進めることである。具体的な内容として、心筋部下壁に設置した散乱発生部位の放射能容量を変更し散乱線の含有率を変更した収集データを取得する。そのデータを臨床で想定されるさまざまな条件下で画像再構成し、そのデータを教師データとして活用し現在構築しているシステムに再学習をさせる。その際、パラメータ設定についても検討を重ね最適値を導きだし、検証を行う。現行進めている検討内容は学習回数やバッチ数を限定しているが、学習回数をさらに増やす、もしくはバッチ数を見直すことでより補正しコントラストが向上した画像を提供できるか参照画像をもとに比較を進める予定である。 本研究の報告については、核医学に関連のある核医学技術学会・日本放射線技術学会への報告を予定している。また、論文化についても検討しており、基礎的検討として新規性を示しつつTEW法など従来法などと比較しての優位性やリミテーションについて考察を行う。本検討で使用する深層学習はCycle-GANと呼ばれる画像生成技術による手法であり、補正後の画像結果が正しいかどうかの判断が通常は難しいが、今回用いている画像データが模擬人体のデータであり、散乱線の含有量や画像への影響などを検討しやすい環境となっている。本検討を基礎データとして用いることで将来進めたいと考えている臨床データへの応用時の参考データとし、正解データを得ることができない臨床画像の補正データ検証の礎としたいと考えている。 今回の研究期間におけるデータをまとめ、最終目標である臨床データ補正システムの基盤アルゴリズムとして、本研究成果を発表していく予定である。
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