研究課題/領域番号 |
21K12631
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90110:生体医工学関連
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
伊藤 聰一郎 帝京大学, 付置研究所, 客員教授 (10242190)
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研究分担者 |
横堀 壽光 帝京大学, 公私立大学の部局等, 教授 (00124636)
尾関 郷 帝京大学, 公私立大学の部局等, 講師 (10781528)
山下 仁大 東京医科歯科大学, 歯学部, 非常勤講師 (70174670)
大見 敏仁 湘南工科大学, 工学部, 准教授 (90586489)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 仮骨延長 / 粘弾性特性 / 応力緩和 / Quasi-static試験 / 負荷変位速度 / 負荷荷重 / 牽引速度 / 非侵襲血管疾患診断装置TRY-1 / 血管壁の構造変化 / 血行動態 / 骨形成機能 / 応力誘起物質拡散解析システム / 有限要素応力解析プログラム / 骨化過程シミュレーション / 圧電気(Piezoelectricity) / 流動電位 / 有限要素法 / 応力誘起物質拡散方程式 |
研究開始時の研究の概要 |
骨の圧電効果を制御することにより生体内の骨欠損部位へ骨リモデリングを誘導するためには、生体内の骨化過程を物理・化学現象ととらえて数式化し、加える力学的負荷を規定することにより、骨を形成するコラーゲン表面で生じるハイドロキシアパタイト(HA)の沈着、すなわち骨形成部位と骨量を予測すればよい。 研究者らは仮骨延長モデルで有限要素法により仮骨部の応力解析を行い、多軸応力勾配を求めて応力誘起拡散解析プログラムに組み込み、引っ張り応力が仮骨形成に及ぼす影響を解明した。この応力誘起物質拡散解析システムを長管状骨剪断モデルと圧縮モデルに適用できるように改訂し、骨化過程をシミュレーションすることを目指す。
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研究実績の概要 |
仮骨が持つ粘弾性特性に着目し、粘弾性体を用いて応力緩和減少に及ぼす負荷変位速度の影響を調べ、延長仮骨における負荷変位速度の効果を検討した。 人工透析用セルロース膜を用い、Quasi-static 試験を行った。負荷速度は0.04mm/sec, 0.06mm/sec, 0.1mm/secnの条件で行った。1ステップの変位を1mm,保持時間を30sec, 60secとした。 試験の結果、負荷変位速度が高くなると負荷荷重は増加したが、保持過程での応力緩和が著しくなった。逆に負荷変位速度が低くなると負荷荷重は低いが負荷過程から荷重減少率が低下して、見掛け上長い応力保持過程が得られた。すなわち、負荷変位速度が高いと最大荷重付近の持続時間が短く、負荷変位速度が低いと最大荷重付近の持続時間が長いことが示唆された。次に、各引張変位速度において、1ステップ、5ステップでの最大負荷荷重値を比較した。負荷変位速度が0.06mm/secまでは変位速度の増加とともに負荷荷重は増加するが、0.06mm/sec以上ではその値は負荷変位速度に対してほぼ飽和した。 粘弾性的性質を有する材料は、一定負荷変位速度と休止時間を与える負荷条件下で応力緩和現象が発現する。この条件で高応力負荷状態を維持するには、①高応力が作用し、かつ②応力緩和が抑制されることが必要である。本実験結果から、①のためには一定負荷変位速度を増加させることが必要であり、②については逆に一定負荷変位速度を抑制することが必要であることが示唆された。また、一定負荷変位速度において、変位速度を増加させても最大荷重がほぼ変化しない飽和領域が存在することが判明した。以上より、一定負荷変位速度と休止時間を与える負荷条件において、応力緩和現象を抑制して高応力負荷状態を維持するには、一定負荷変位速度、すなわち牽引速度に最適値が存在することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の主題は応力誘起物質拡散解析システムを改訂し、骨化過程を予測することである。このために3次元まで含めた大規模な応力解析ができる有限要素応力解析ソフトウエアを購入し、シミュレーション・システムの改訂を行っている。これまでに仮骨延長モデルを用い、濃度勾配と応力勾配の影響を考慮して骨形成物質の拡散・凝集の解析を行った。連続延長では骨形成物質の凝集は顕著ではなく、静止過程の導入が必要であることが示された。仮骨は粘弾性的性質を持つことから、仮骨延長休止期間での一定変位保持において応力緩和を生じ、負荷応力が低減化すると考えられる。応力緩和現象を抑制して高応力負荷状態を維持するには、一定負荷変位速度、すなわち牽引速度に最適値が存在することを示した。この予測結果の妥当性実証実験を2023年度湘南工科大学で行う予定である。 このような研究を進めるうちに、研究分担者横堀らが開発した超音波血流計TRY-1を骨化予測に応用することを想起した。TRY-1は拍動下での血管壁挙動を定量評価して血管壁の弾性劣化(血管壁粘弾性発現度)を定量評価する超音波ドップラー血管壁計測システムである。さらに、高周波解析による血管壁拍動速度軌跡のアトラクタ解析を用いて、拍動乱れをより詳細に計測できる機能VISCOIRにアップデートした。本装置は大径動脈の血管壁カルシウム沈着による動脈硬化進行度や動脈瘤形成など血管壁の構造変化を評価出来る。併せて骨密度や骨代謝マーカーを計測し、循環器系疾患と骨形成機能低下の相関関係を解析すれば、血行動態と骨形成機能が相互に及ぼす影響を解明することができるのではないかという発想である。これが示されれば骨形成機能改善が循環器系の未病予防に寄与する可能性があり、国際医療福祉大学との共同研究を2022年度より開始した。このような新たな課題を研究に加えたため、当初の研究計画より進行が遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでは長管状骨仮骨延長モデルを用いて応力誘起物質拡散数値解析プログラムを作成してきた。これは多軸引張り応力が骨の長軸方向に加わり、両端方向へイオンが拡散することにより流動電位が発生することを仮定している。今年度から新たに長管状骨の圧縮解析モデルの解析を開始する。圧縮解析モデルでは両側の髄内にいずれも圧迫力が加わり、負電荷が生じる。この際、長軸方向のHavers管を中心にイオン拡散が起こると考えられる。これまでの応力誘起物質拡散数値解析プログラムを、長管状骨圧縮モデルにも適用できるように横堀らが中心となって改訂する予定である。荷重下で生ずるイオンの移動を応力誘起物質拡散方程式で数値解析して、骨形成部位と骨量を予測すること目指す。そして湘南工科大学で力学試験を行い、このシミュレーション・システムの妥当性を実証する予定である。 高周波解析による血管壁拍動速度軌跡のアトラクタ解析を用いて、拍動乱れをより詳細に計測できるVISCOIRを国際医療福祉大学・市川病院に設置した。本装置はこれまで検査対象だった頚動脈だけでなく、大径動脈の血管壁カルシウム沈着による動脈硬化進行度や動脈瘤形成など血管壁の構造変化を評価出来る。また、国際医療福祉大学では、骨のCT画像骨を有限要素法で構造解析し骨強度を予測評価するCT/FEM(Finite Element Method)を考案した。これは構造物に外力が作用した時の反応を算出し、その強度や力学特性を予測する構造解析法である。これらの新たな検査法に加え、従来の骨密度や骨代謝マーカーの計測を行い、循環器系疾患と骨形成機能低下の相関関係を解析することにより、血行動態と骨形成機能が相互に及ぼす影響を解明することを目指す。
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