研究課題/領域番号 |
21K12640
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90110:生体医工学関連
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
入部 玄太郎 旭川医科大学, 医学部, 教授 (90284885)
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研究分担者 |
山口 陽平 旭川医科大学, 医学部, 助教 (40831912)
貝原 恵子 岡山大学, 医学部, 技術専門職員 (60638641)
金子 智之 旭川医科大学, 医学部, 助教 (80638643)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 機械感受性 / 活性酸素 / ミトコンドリア膜電位 / 機械的負荷 |
研究開始時の研究の概要 |
心臓において、過剰な活性酸素(ROS)は心不全の原因となるが、少量のROSは重要な生理活性物質でもある。心臓におけるROSの生理的な役割はよくわかっていないが、我々は生理的なROSは心臓が一時的な力学負荷に対して適切に反応するための情報伝達を担っていると考えており、これを検証することによってそれ以外の有害なROSのみを抑制する心不全治療法の可能性を探る。
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研究実績の概要 |
本年度はまず、昨年度までに明らかになった、伸展誘発性ROS産生増加が筋小胞体カルシウムハンドリング及び心筋メカニクスへおよぼす影響に関する研究成果を論文として発表した。本研究成果はイギリスの科学雑誌「The Journal of Physiology」に掲載された。 研究代表者のこれまでの研究成果により、伸展誘発性ROSの上流には伸展誘発性の電子伝達系の活性化とそれによるミトコンドリア膜電位の過分極があることがわかっている。本年度はこれらの機械感受性現象の詳細な分子シグナリングを検討した。その結果、機械刺激によってATPを細胞外へ放出するパネキシンヘミチャネルの阻害により伸展誘発性ミトコンドリア過分極と伸展誘発性ROS産生の両方が阻害されたのに対し、ATPにより活性化されるプリン受容体(P2Y受容体)およびそれによって活性化されるTRPC3チャネルの阻害は伸展誘発性ROS産生のみ阻害し伸展誘発性ミトコンドリア過分極に影響を与えなかった。この結果よりパネキシンヘミチャネルからの伸展誘発性のATP放出によりミトコンドリアが過分極し、さらに流出ATPにより活性化されるP2Y受容体によるTRPC3活性化とそれに引き続き起こるNOX2活性化が伸展誘発性ROS産生のメカニズムであると結論付けた。TRPC3の関与に関してはさらにTRPC3欠損マウスでの伸展誘発性ROS産生増加現象の消失を確認したが、他の実験とは系統が異なるマウス(129/Sv)であるため、現在C57BL/6に戻し交配した系統で再確認実験を行う準備をしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝子改変マウス(TRPC3ノックアウトマウス)の準備の都合で順番を入れ替えた内容をすべて完了することができた。予定より早く結果が出たため、さらに背景系統をそろえた遺伝子改変マウスの準備を進めることができ、本年度はさらに精度の高いデータを得る準備が整った。また、一昨年度の成果を論文として発表することができた。以上のことからおおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、これまでに明らかになった生理的な伸展誘発性ROS産生シグナリングと心不全における病的な酸化ストレスの関係を明らかにしていく。前年度の続きであるC57BL/6背景のTRPC3欠損マウスでの伸展誘発性ROS産生増加現象を確認する実験を引き続き行いながら、心肥大・心不全モデルマウス(TAC: 大動脈縮窄術により作成)のリモデリング心筋において生理的ROSシグナリングがどのように変化していくかを検討する。具体的には不全心から単離した心筋細胞の伸展誘発性ROS産生の変化の有無をTAC後の時系列で確認し、それと併せてROSのもう一つの産生源であるミトコンドリア由来のROSの変化を確認する。両者の動きから生理的な伸展誘発性ROS産生が病的な酸化ストレスへと変化する過程を検討し、それに伴う伸展誘発性ROS産生シグナリングの構成分子の発現変化を確認することでそのメカニズムを明らかにする。
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