研究課題/領域番号 |
21K12674
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90110:生体医工学関連
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研究機関 | 名古屋学芸大学 |
研究代表者 |
早戸 亮太郎 名古屋学芸大学, 管理栄養学部, 准教授 (60440822)
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研究分担者 |
日暮 陽子 名古屋学芸大学, 管理栄養学部, 准教授 (30325633)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
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キーワード | 褐色脂肪細胞 / 熱産生 / カルシウム / 機械刺激 / 肥満 |
研究開始時の研究の概要 |
褐色脂肪細胞は熱産生器官である。生体は寒冷暴露により交感神経活動を亢進し、神経終末からのノルアドレナリン(NA)を放出する。褐色脂肪細胞はこのNAを受容する事で熱産生を引き起こす。その際、褐色脂肪細胞内では持続的なCa濃度上昇を引き起こす。このCa濃度上昇が熱産生をさらに促進することがわかっている。 これまで褐色脂肪細胞の熱産生機構についてはNAによるエネルギーバランス調節の機序を中心に研究が行われてきた。対して私たちは、圧機械刺激が褐色脂肪細胞内Ca濃度を上昇する事を見い出した。本研究では、機械刺激によるCa濃度上昇がどのようなメカニズムで生じ、どのように熱産生に寄与するのか、研究を行う。
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研究実績の概要 |
これまで褐色脂肪細胞の熱産生は、体温低下に伴う交感神経活動亢進より放出されるノルアドレナリン(NA)の受容により生じる非ふるえ熱産生が主体だと考えられている。しかし、褐色脂肪細胞の分布を調べると、ヒトやマウスにおいては肩甲骨間や腋窩に多く、筋のごく近傍に位置してる。私たちは、筋収縮による振動を褐色脂肪細胞が受容すること褐色脂肪細胞が活性化し熱産生を行うのではないか、つまりは、ふるえ熱産生に少なからず褐色脂肪細胞による熱産生が寄与しているのではないかと考え、褐色脂肪細胞への振動による機械刺激が熱産生を促進するか調べ、そのメカニズムを調べる事を目的とし研究を行っている。褐色脂肪細胞は熱産生の際、細胞内カルシウム濃度を上昇することがこれまでにわかっている。つまり細胞内カルシウム濃度は熱産生の指標となる。そこで私たちは、マウス褐色脂肪細胞を初代培養し、カルシウム蛍光指示薬であるFura-2を負荷し、カルシウムイメージング法を適用し、機械刺激による褐色脂肪細胞内カルシウム濃度変化を調べた。その結果、機械刺激が褐色脂肪細胞内カルシウム濃度を上昇させることを明らかにした。つまり、機械刺激が褐色脂肪細胞の熱産生を促進することを初めて示したのである。そこでさらに研究を進めた結果、このカルシウム濃度上昇は細胞外からカルシウムを流入させることで生じることがわかった。また、この細胞外からカルシウムを流入させるイオンチャネルがTRPチャネルであることを明らかにした。今回の研究で機械刺激が褐色脂肪細胞による熱産生を促進することが明らかとなった。これにより振動刺激やマッサージといった外部からの機械刺激が熱産生を促進し、肥満解消に効果が期待できることがわかった。一方で、TRPチャネルを薬や食物成分により選択的に活性化できれば、これが熱産生に繋がり、延いては新たな肥満解消法の解明に繋がることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究により、培養マウス褐色脂肪細胞への水圧機械刺激が一過性の大きな細胞内カルシウム濃度上昇を引き起こすことがわかっている。そしてこの機械刺激の受容体としてTRPC6チャネルが有力候補として考えられている。その後、私たちの1年間の研究により、このTRPC6チャネルが褐色脂肪細胞の機械刺激受容体として機能するたけでなく、細胞内小器官である滑面小胞体内のカルシウムが枯渇することで生じる容量性カルシウム流入を引き起こすチャネルとしても機能していることが明らかにした。滑面小胞体にカルシウムを取り込むポンプであるSERCAポンプを阻害するCyclopiazonic acidを投与すると、SERCAポンプが阻害され滑面小胞体内カルシウム濃度が枯渇する。これにより細胞外からカルシウムを流入することがわかった。この流入は細胞外カルシウム濃度を0 mMにすることで消失した。またTRPC6阻害剤である2-APB、GsMTx-4の投与により抑制することがわかった。しかし、TRPC3チャネル阻害剤であるPy3投与はカルシウム流入に影響を与えなかった。これらの事から、褐色脂肪細胞に発現するTRPC6チャネルは機械刺激受容体としてのみならず、容量性カルシウム流入チャネルとしても機能し、褐色脂肪細胞内におけるカルシウムのホメオスタシスに大きく寄与することが示唆された。これまでの結果をまとめ、Physiological Researchに投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で、褐色脂肪細胞には交感神経応答や機械刺激受容、容量性カルシウム流入といった様々なカルシウム濃度上昇機構が存在し、これらを使って熱産生を促進する働きは見つかってきているが、反対に熱産生を抑制する機構は知られていない。生体が飢餓状態に陥れば、熱産生を抑制することで消費エネルギー量を抑制する必要が出てくるが、その際に褐色脂肪細胞がどのようなメカニズムで熱産生を抑制するのかを調べていく予定である。
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