研究課題
基盤研究(C)
メタボローム解析では、内部標準物質に対する相対値を用いて評価することが多いものの、内部標準物質相対補正では、施設・機器の違いや分析間隔が空いた場合の影響が大きいという問題に直面している。そこで本研究では、メタボローム解析における分析誤差の原因を追究するとともに、その検証結果に基づいて、内部標準物質相対補正よりも性能がいい、新たな代謝物分析法を開発する。
令和5年度は、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)を用いた血漿中代謝物分析における施設間分析誤差における分析データのとりまとめを行い、学術論文にて公表した(Shin Nishiumi et al., Rapid Commun Mass Spectrom. 2024)。この研究により得られた結果から、GC/MS分析において、どのような血漿中代謝物が施設間で分析誤差がでやすいのか、また、そのような血漿中代謝物は施設内連続分析でも分析誤差が大きいのか、分析条件を変更することで分析誤差の改善が見られるのかなどを検討し、各血漿中代謝物の分析誤差の特徴を見出して、その特徴に基づいて、同じような分析誤差挙動を示す代謝物をグループ化するとともに、各グループに対する内部標準物質を決定した。さらに、血漿代謝物分析における変動要因についても明らかにしていき、その情報も内部標準物質の決定に反映させている。また、液体クロマトグラフ質量分析計(LC/MS)による血漿中代謝物分析においても、どのような血漿中代謝物が施設の違いにより分析誤差がでやすいのか、また、そのような血漿中代謝物は同施設内での連続分析でも分析誤差が大きくなるのかどうかなど、様々な血漿中代謝物の分析誤差についての特徴を見出した。現在、これらのLC/MSを用いた検討で得られたデータの解析を進めており、複数施設で分析したデータに基づいて、どのような内部標準物質を選択すればいいのかなどについて、GC/MS分析と同様な検証を進めている。また、GC/MSによる血漿中代謝物においては、定量分析系の構築を進めており、新たなデータ補正法の確立に向けて、実検体での適用性についての検証も進めている。
3: やや遅れている
令和4年度に所属機関が変更となり、現所属機関において、本研究で使用するガスクロマトグラフ質量分析計や液体クロマトグラフ質量分析計が設置されていなかったことから、データ解析はある程度進めることができたものの、実験の方の進捗が遅れてしまっており、その遅れが、令和5年度にも続いた。令和5年度には、ガスクロマトグラフ質量分析計や液体クロマトグラフ質量分析計が現所属機関に設置され、機器分析できる状況になったものの、その立ち上げに少し時間を要したことから、研究全体の進捗がやや遅れている。
令和5年度には、ガスクロマトグラフ質量分析計を用いた代謝物分析における施設間分析誤差の検証結果に基づいて、学術論文への投稿を行い、論文採択までこぎつけることができた。また、そのデータに基づいたデータ補正法についてもほぼ構築することができた。今後、そのデータ補正を用いて、実検体分析への適用の検証を中心に進めていく。また、液体クロマトグラフ質量分析計を用いた代謝物分析における検証も進んでおり、液体クロマトグラフ質量分析計による分析におけるデータ補正法の構築も、同時に進めていく。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件) 図書 (1件) 備考 (1件)
Rapid Communications in Mass Spectrometry
巻: 38(4) 号: 4
10.1002/rcm.9683
Disease Markers
巻: 2023 ページ: 1-8
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神戸女学院大学論集
巻: 70(1) ページ: 65-76
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Anticancer Res.
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巻: 12(2) 号: 2 ページ: 135-135
10.3390/metabo12020135
https://h.kobe-c.ac.jp/b/news/rapid-communications-mass-spectrometry