研究課題/領域番号 |
21K12677
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90110:生体医工学関連
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研究機関 | 茨城工業高等専門学校 |
研究代表者 |
澤畑 博人 茨城工業高等専門学校, 国際創造工学科, 准教授 (40571774)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 人工視覚 / 網膜刺激 / 光電効果 / 多孔質カーボン / 電気二重層 |
研究開始時の研究の概要 |
網膜色素変性症などで盲目となった患者のQOL向上のために、網膜を電気的に刺激することによって視覚像を知覚させる人工視覚システムの開発が期待されている。従来の回路では、網膜の細胞の活動を誘発するために十分な電流を発生させるために電力源を必要としていたが、化学電池の液漏れや給電システムからの漏電など、安全面において懸念があった。そこで本研究では、半導体フォトダイオードの光起電力と独自の充放電回路を用いたバッテリーを要しない新しい網膜刺激技術を提案する。この技術を用いた人工視覚システムを、半導体デバイスの集積化技術と独自の神経電極技術を組み合わせて試作し、実験動物を用いた実験で有効性の検証を行う。
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研究実績の概要 |
網膜刺激型人工視覚への応用に向けて、フォトダイオード(PD)の微弱な光起電力とシンプルな充放電回路のみで駆動する刺激電流パルス発生回路の研究を行っている。当初提案していた回路構成にはコンデンサが用いられており微細化・高密度多点化の妨げとなっていた。これを打破するために、多孔質カーボン電極の電気二重層キャパシタンスを利用した新しい仕組みの充放電回路を考案し、これを主眼として3つの取り組みを行った。1つは、多孔質カーボン電極の製法・構造の最適化である。実験ではヤシガラ活性炭の粉末をプリント基板上の金属配線に付着させる電極製法として、接着のために導電性エポキシを用いて電気的接続を取る方法と、絶縁性エポキシを用いる代わりに圧力を掛けて活性炭粉末が金属配線も直接接触するように接着する方法を試みた。電気的特性を比較すると、両者とも同等に大きなキャパシタンス値が得られるが、後者の製法で製作した電極の方が抵抗成分が小さく充放電に適していることが分かった。2つめに、充放電回路の設計最適化である。従来、回路に搭載するPDは充電用とトランジスタスイッチング制御用の2つを搭載する構成となっていたが、これら2つの役割を1つのPDで行えるよう改善した。これによって受光部面積を2分の1に削減することができた。また、前述の手法で製作した多孔質カーボン電極も組み合わせて回路を実装し、出力電流の計測を行ったところ、網膜刺激に要する0.1 mAを上回る0.114 mAの電流パルスが確認できた。3つめとして、提案回路の網膜への刺激効果を確かめるための動物実験系の構築を行った。対象動物種としてメダカを導入し、in vivoでの刺激実験を行った結果、試作回路を用いて筋細胞への刺激効果が確認された。従って、網膜に対する刺激効果も期待でき、その実証のための実験環境を整えることができたといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度、多孔質カーボン電極の製法・構造の検討、回路設計の改善による小型化と高出力化、性能評価のための動物実験系の構築の3つの項目について進展している。多孔質カーボン電極の製法・構造の検討については、今後、高密度多点化を目指すために平面状の基板に電極を精緻に配列することを考慮した手法を取っており、電気特性も十分なものが得られ、刺激回路に用いるために有効であると思われる。この成果は、国内学会(第71回応用物理学会春季学術講演会、 2024年3月)で報告した。回路設計の改善については、回路構成を大幅に見直したことで素子数が減り、進展として大きい。ただし、年度当初に予定していた高密度多点化に向けた実装方法の検討は次年度に持ち越すこととした。また、刺激効果実証のための動物実験について、メダカを導入して開始し、対象を筋細胞とした場合の刺激効果を実証することまでできた。実験系の構築と評価手法を確立できたことで、今後の網膜刺激を行える態勢を整えることができた。以上のように、年度当初とは異なる部分もあるが、総合して概ね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
実際に網膜への刺激効果を確かめるために、メダカの網膜を対象とした刺激実験を行う。実験では、網膜組織をシャーレに取り出して行うin vitro系を用い、網膜からのElectroretinogram (ERP)信号が刺激に対して誘発されるか否かを指標として効果を確かめる。もしメダカ網膜を用いた実験・データ取得が困難な場合、外部機関の協力を得てマウス網膜を対象とした実験についても検討する。また、回路の高密度多点化についても検討する。具体的には、チップレットデバイス製造に用いられるベアチップ実装技術を用いる方法を導入する予定である。
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