研究課題
基盤研究(C)
深層学習を用いた医用画像におけるコンピュータ支援自動病変検出システムの開発においては、多量の正常画像および異常(特定の疾患)画像が学習のために必要になる。本研究の目的は、特定のモダリティ(胸部単純写真、頭部magnetic resonance angiographyなど)に対し、1) 架空の正常画像を多量生成することと、2) そこに人工の病変(肺野結節性病変、脳動脈瘤、など)を自動生成して埋め込むことである。それにより、多量の異常画像の準備とその正解入力(アノテーション)を行うことなく、高性能なコンピュータ支援自動病変検出システムを作成することを最終的な目標とする。
本研究では胸部単純写真の架空画像を生成し、さらに架空の結節病変を生成して自然に埋め込む手法を開発した。画像の補間技術により、さらに自然な埋め込みを達成した。このような架空画像を13万以上作成し、これを用いて実際の胸部単純写真から結節を検出するシステムを学習、確立した。結節の埋め込み前と埋め込み後の画像対をうまく利用できるような、新しい損失関数の項をあらたに提案し、その有用性を実験的に確立した。学習した結節検出システムの感度は必ずしも最新のstate-of-the-artの性能には及ばないものの、複数の最新の論文での性能にかなり近くなっており、このアプローチの有用性が示されたと考えている。
胸部単純写真を対象とした医用診断AIは多数が報告され、一部は実用もされているが、その性能は完ぺきではなく、性能のさらなる向上が求められている。本研究では、そのカギを握る「検出が難しい結節」を無限に自動生成できるアルゴリズムを作成することができ、実際にそれを用いてAIを学習することができた。このアプローチをほかの医用AIにも応用して行くことで、さまざまなAIの性能向上に資せる可能性があり、さらに医師を支えられるAIを開発して行けると信じている。
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