研究課題/領域番号 |
21K12734
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90130:医用システム関連
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研究機関 | 北海道科学大学 |
研究代表者 |
北間 正崇 北海道科学大学, 保健医療学部, 教授 (50285516)
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研究分担者 |
清水 孝一 北海道大学, 情報科学研究院, 名誉教授 (30125322)
加藤 祐次 北海道大学, 情報科学研究院, 助教 (50261582)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 光透視 / 光散乱 / シャントトラブル / 内シャント / 石灰化 / 血管透視 / 透析 / 医用画像 / 光イメージング / 拡散光 |
研究開始時の研究の概要 |
人工透析患者が体外循環を行う際、十分な血流量確保のために前腕部等に内シャントを造設する。しかし頻回の穿刺や乱流のストレスにより狭窄や閉塞などの血管異常が頻発することから、日常的管理による早期診断が重要となる。これには血管性状の経過観察が重要となることから、申請者らが確立してきた拡散光利用による血管構造のイメージング技術を推し進めることで、透析患者の狭窄原因として症例の多い血管壁の石灰化や脂質沈着を経皮的にイメージングする手法の確立を目指す。本研究の技術は透析患者に限らず動脈硬化による脳卒中や心筋梗塞などの早期診断にも応用可能と考えられる。
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研究実績の概要 |
慢性腎不全患者が人工透析を行う際に造設する内シャントの血管異常(狭窄,閉塞)を早期に診断・治療することは,患者QOLの点から重要である.透析患者の狭窄原因として症例の多い血管壁の石灰化状態を無侵襲で体外からイメージングできれば,早期診断の一助となる.本研究では,従前に研究・開発してきた非侵襲内シャント光イメージング技術を応用することで血管石灰化状態のイメージング手法の確立を目指す.今年度は,前年度に検討・評価を行った最適波長光源と検出系を用いてイメージングに焦点を絞り,以下の実験的検証を行った. 1.計測の定量性を評価するために,血管壁全体が均等に石灰化する狭窄状態を模擬した前腕部ファントムを作製した.前腕部ファントムの基本構造は従前の研究で確立しており,新たにリン酸カルシウムを基材とした石灰化狭窄部を組み込んだ.作製したファントムの構造評価にはX線透視装置を利用した. 2.前年度に構築した2次元分布計測システムを拡張し,波長810 nmと1,208 nmの複数光源での撮影を可能とするシステムを構築した.このシステムを用いて,前述の前腕部ファントムにおける模擬石灰化病変の描出を目指した.その結果,波長810 nmでは,血管壁部と血液部は鮮明に描出されるものの,石灰化部は透過性が高く描出されないことが示唆された.また,波長1,208 nmでは,石灰化部は高コントラストで描出されたものの,正常血管壁や血液部のコントラストが低いことが再確認された.これらの結果から,両波長での透視像を統合することにより,石灰化部,血液部の分離描出が可能となり,限定条件下ではあるが狭窄部外径が最大誤差率2.8%の精度で検出可能なことが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究実施計画に沿って,生体内拡散光を利用した血管性状イメージングの実現を目指して研究を進めている.先行研究で構築してきた内シャント光イメージングシステムを基本に,新たに血管壁部の石灰化描出を可能とする多波長計測システムを構築した.単一波長では石灰化部と血管部を独立して描出するに止まるが,多波長計測システムにより血管状態の診断に必要な狭窄内径の定量化が可能となる.新たに石灰化血管ファントムを作製し評価を行ったところ,石灰化部の外径,血管内径を1枚の透視像中に描出することができた.まだ患者毎に異なる狭窄進行状態への対応可能性は明らかにしていないものの,診断に有用な精度での石灰化病変部の分離抽出が可能との結果が得られた. 現時点では,当初計画に沿って概ね順調に進展しており,引き続き予定どおりに研究を遂行可能なものと考える.
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今後の研究の推進方策 |
上記のとおり,2年目の研究は計画に沿って概ね順調に進展している.多波長計測システムの構築を実現することで機能情報(石灰化病変)と形態情報(血管外径,内径)を合わせて描出できることが確認されたことから,今後は以下の項目を実施することで,研究計画で示した技術開発に向けて本研究課題を推進する. ・光源波長毎に吸光・散乱特性が異なることを考慮し,狭窄形成の主要因とされる脂質や石灰化病変部の分光・伝播特性から最適処理条件を設定する. ・描出画像から得られる病変部サイズの推定アルゴリズムに機械学習を導入し,精度の向上を図る. ・患者毎に異なる狭窄の進行状態を想定することで,臨床利用を考慮したシステムの最適化を図る. ・内シャント透視像を診断データとして活用できるよう,波長別解析結果を適切に管理するための手法を検討する.
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