研究課題/領域番号 |
21K12739
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90130:医用システム関連
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研究機関 | 鈴鹿医療科学大学 |
研究代表者 |
三浦 英和 鈴鹿医療科学大学, 医用工学部, 准教授 (50451894)
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研究分担者 |
兼松 秀行 鈴鹿工業高等専門学校, 材料工学科, 特命教授 (10185952)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | バイオフィルム / 交流電磁場 / ラボラトリーバイオフィルムリアクター / インピーダンス法 / 交流電磁界 / インピーダンス / 感染症 / 電磁界 |
研究開始時の研究の概要 |
医用機器およびその材料上に形成されるバイオフィルムにより、感染が起こることが問題になっている。また家電製品や工業設備でもバイオフィルムが様々な問題を引き起こしている。本研究では、交流電磁場下でのシグナル伝達物質の共振による分極によって、バイオフィルムが抑制されるかという核心的な問いを明らかにし、交流電磁場を医用機器およびその材料上に適用することによりバイオフィルム抑制・感染制御を可能とする装置およびシステムの開発を最終目的とする。
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研究実績の概要 |
本研究では交流電磁界がバイオフィルムとその形成に及ぼす影響について明らかにすることが抑制メカニズムの解明につながると考え、バイオフィルムの電気的挙動を検討した。流れのある状態でのバイオフィルム形成は、材料表面のせん断応力の影響を受けることが指摘されている。このため、新たに開発したラボラトリーバイオフィルムリアクターを使用して、流れのある状態でインピーダンス計測を実施した。電界、電流による作用と磁界による作用があるが、前者について広い周波数範囲(40Hzから100kHz)におけるインピーダンスの経時変化を計測した。抵抗成分、リアクタンスそれぞれ時間とともに増加した。特にインピーダンスの位相特性に顕著な変化が認められた。このことは計測開始当初は電極と媒質の間に形成される電気二重層と媒質の抵抗が観測されるが、次第に電極表面にバイオフィルムが形成され、ポリマーに由来する容量成分と抵抗成分が直列に追加される形でインピーダンスが観測されたと考えられる。クリスタルバイオレット染色を行ったところ、より薄く均一なバイオフィルムが形成されており、静置系での培養におけるインピーダンス計測と比較すると、より明確に電気的特徴が現れたと考える。電磁界暴露によるバイオフィルム抑制については、研究分担者の兼松が中心となって策定したISO基準に準拠した評価方法で菌液と30mm角の試験片を50mm内径のカップに入れ培養する。このカップを覆う専用のコイルを作成し、磁場を印加しながら培養する実験系の構築を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
インピーダンス計測の自動化とバイオフィルム形成の自動撮影、AIの活用などの研究実施の効率化に勤めている。コロナ禍で限られた時間と行動制限の中で研究を迅速に遂行し、さらにはアフターコロナにおいても研究を加速するため対策が重要であることを実感している。特に多種の菌種について電磁界による抑制効果における周波数、磁界の強さの依存性の網羅的な実験を遂行することは難しいため、インピーダンス計測等による電磁界による挙動の変化や経時観測によるアプローチによりメカニズム解明を指向した研究手法が有効であると考えた。このような中でも兼松らはバイオフィルムの評価方法をISOの規格化を実現した。例えば試験片の大きさを30㎜角とする、清拭手技を規定するなど実験精度と確度の向上を実現した。このことは本研究においても電磁界のバイオフィルムの形成の影響をより明確に示すことことを可能にした。本規格に基づく実験系の構築を行い、これまでの実験で効果が認められた条件について検討を開始した。また小型水槽とエアレーションを用いた簡便なリアクターを考案し、バイオフィルムのインピーダンス法による検知の可能性を見出した。 本邦でも新型コロナ禍の影響からようやく脱したのかもしれないが大学入学時よりコロナ禍に見舞われた学生たちは、この間遠隔授業を中心に過ごしてきた。相変わらず実習系科目において到達度と認知力の低さが認められ各教員は補講やリメディアル教育などの対応に忙殺されている。すなわち自ら考え手を動かして実施する研究教育は究極のアクティブラーニングラーニングといえる。そのため学生を研究に参加させる研究の進展と教育の質向上を同時に図ることが重要である。
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今後の研究の推進方策 |
抑制効果における周波数、磁界の強さの依存性の網羅的な実験を遂行することは難しいため、菌種を表皮ブドウ球菌もしくはラボラトリーバイオフィルムリアクターを用いた環境常在菌の実験に絞る。表皮ブドウ球菌はバイオフィルム形成が安定しており、評価系も確立している。他の細菌では材料の違い等からバイオフィルム形成条件を見直す必要がある場合があるため、静置法における実験では扱いやすい表皮ブドウ球菌に対して集中して実験、計測を行う。 表皮ブドウ球菌を静置培養した実験とラボラトリーバイオフィルムリアクターを用い環境常在菌のバイオフィルムのインピーダンス変化が顕著なものであったためセンシングへの応用の可能性と形成抑制へ電界による影響が示唆された。そのため、コイル状の電極を配管内部などに設置し、外部コイルから交流電磁界により内部コイルに誘導起電力を生じさせ、内外のコイルの磁気的なカップリングによりバイオフィルムの形成をセンシングする方法、交流電界と電流によりバイオフィルム形成を抑制する方法を試みる。外部コイル及び駆動装置はこれまでに使用したものそのまま流用でき、内部コイルはインピーダンス計測に用いた櫛形電極と同様にフォトリソグラフィとエッチングにより作成する。バイオフィルムの評価については研究分担者の兼松が中心となって策定したISO基準に準拠した評価方法で菌液と30㎜角の試験片を50㎜内径のカップを用いて評価を行う。また、直接電極により交流電界を印加し場合と交流磁界、電磁誘導を用いた場合の抑制効果の差異を検証する
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